東京五輪男子MTB クロスカントリー:21歳イネオス・グレナディアスでロードを走るピドコックがMTBで完璧な勝利!今年はロードでクラシックを制し、さらにMTBで金メダル!
今年の五輪のMTBクロスカントリーのコースは、間違いなく世界でも屈指のテクニカルでハードなコース、そんなレースを制したのは、今シーズン(2020~2021)シクロクロスで頭角を現し勝利を挙げ、ロードレースでもクラシックのブラバンツ・ペイユで優勝、出場したそれ以外のすべてのクラシックレースでもアムステル・ゴールドレース2位、クールネ・ブリュッセル・クールネ3位、ストラーデ・ビアンケ5位、フレッシュ・ワロンヌ6位と結果を残してきた21歳のトーマス・ピドコック(イギリス)だった。5月末に鎖骨を骨折、手術をしてから復帰しての世界最高峰のオフロードレースで本職たちを抑えて金メダルを獲得して見せた。同じくシクロクロスとロードで結果を残しながらMTBでメダル候補だったマシュー・ファン・デル・ポエル(オランダ)が派手に落車をしリタイアする中、もう一人の男が予想を上回る結果の叩き出した。
男子MTBは今年のツール・ド・フランスで総合リーダーの証、マイヨ・ジョーヌを着用したファン・デル・ポエルがメダルを獲得できるのかが注目されていた。また長年MTB界をけん引し、8度世界の頂点に立っているトップ選手、ニノ・シュルター(スイス)も35歳となり、4大会連続の出場、4大会連続のメダル獲得にも注目が集まった。
そんな全長4.1㎞高低差150mの周回レースはオープニングラップでいきなりの波乱となった。さくらドロップと呼ばれる大岩から一気に飛び降りての下りセクションで、5位通過のファン・デル・ポエルがいきなり派手に着地を失敗しそのまま下りコースを転がり落ちたのだ。肩と腰を強打したファン・デル・ポエルはしばらく苦悶の表情で座り込み、その後走行を再開したが、もはや追いつくことは不可能だった。何とかレース中盤までは走行を続けたが、リタイアを選択した。
有力候補一人が脱落すると、レースはシュルターとマティアス・フルッキンガー(スイス)が中心となり、さらにそこにピドコックが加わり展開する。コースは抜きどころが少ないが、場所によってコースが二股となり追い抜きなどが可能となる設定で、何度となく激しく先頭は入れ替わる。
しかし中盤に差し掛かると、ピドコックとフルッキンガーが徐々に後続を引き離し始める。2019年に行われたプレ大会も制している最強の男シュルターもここで遅れ、3位集団を形成する。先頭のピドコックは快調に飛ばし続け、じわじわとフルッキンガーとの差を広げると、フルッキンガーは急勾配の上りセクションでミス、バイクを降り押して上ることとなった。これが致命的なタイム差となり、ピドコックは悠々とトップで母国イギリスの国旗を掲げてのゴール、金メダル獲得となった。シクロクロス、ロード、MTBと3足の草鞋を履く若人が、大きな仕事をやってのけた。
フルッキンガーはそのまま2位で銀メダルを獲得、熾烈な3位争いは、最終周回に後方から3位集団に追いついたダビ・セラノ(スペイン)がシュルターを力で振り切り銅メダルを獲得した。
「信じられないね。自分自身を落ち着かせるので精いっぱいだよ。出場という夢が、気が付けば金メダリストになっていたんだからね。誰もが欲しがっていたメダル、それを僕が手にしたんだよ。去年年末が僕的には初めてMTBの世界選手権出場だったし、MTBで頂点に立つという夢は見始めたばかりだったんだよね。トレーニングは徹底してやってきたけど、暑さもあるし自分は調子はいまいちだったんだ。でもいい順位で走れているのはわかっていたのと、あのコンディションの中では誰もが我慢の走りになっているのはわかっていたからね。あとはもう周回を積み重ねるのがルーティーンになったよ。淡々とこなして勝ったよ。」ピドコックは最後まで冷静だった。これでイネオス・グレナディアス所属の2選手が、それぞれロードとMTBで金メダルを獲得する形となった。
一方落車を喫したファン・デル・ポエルは、落車地点で練習中は木製のスロープがついていたことを指摘、レース本番では取り除かれることを知らなかったと主張したが、10位に入ったチームメイトはレース前試走終了後に、あれはレース本番では取り外される、プレ大会でもそうだったと指摘をしていたと語った。オリンピックという重圧とプレッシャーという魔物に、ファン・デル・ポエルは飲み込まれていたようだ。
東京五輪MTB男子クロスカントリー
金メダル トム・ピドコック(イギリス) 1h25’14”
銀メダル マティアス・フルッキンガー(スイス) +20”
銅メダル ダビ・セラノ(スペイン) +34”
4位 ニノ・シュルター(スイス) +42”
5位 ヴィクトル・コレッツキー(フランス) +46”
6位 アントン・クーパー(ニュージーランド)
7位 ブラッド・ダスカル(ルーマニア) +49”
8位 アラン・ハザリー(南アフリカ) +1’19”
9位 ヨルダン・サラウ(フランス) +1’36”
10位 ミラン・ヴェーダー(オランダ) +2’07”
H.Moulinette