ブエルタ・ア・エスパーニャ第17ステージ:総合山頂バトルでログリッチはタイムを失うも総合リーダージャージを25秒差でキープ、ステージ優勝のガウドゥは今大会2勝目で総合も8位にアップ
全18ステージで行われている今年のブエルタ・ア・エスパーニャ、実質的に最後の山岳直接対決となった総合争いは、勝負には負けたプリモズ・ログリッチ(ユンボ・ヴィズマ)が、ここまでのタイム差をアドバンテージを活かし総合首位の証、マイヨ・ロホを守りぬいた。仕掛けたリチャード・カラパズ(イネオス・グレナディアス)だったが、思うほどタイム差を広げることができずに、再逆転とはならなかった。
そんなステージを制したのはダビ・ガウドゥ(グルーパマFDJ)、今大会すでに勝利を挙げている24歳が、難関山岳ステージの頂上ゴールバトルを制し、さらにはこれで一気に総合でも順位を大きく上げ8位とした。
悪天候となり、またしても悪条件が選手たちを襲ったこのステージ、なんと34名の大所帯の逃げが決まる。そこには総合10位のダビ・デ・ラ・クルス(イネオス・グレナディアス)も入っており、それによりメイン集団はこの逃げを大きく逃がすことはなく、タイム差を3分台で推移させる。
残り60㎞、モビスターがペースを上げると、総合2位のリチャード・カラパズ(イネオス・グレナディアス)と4位のダニエル・マーティン(イスラエル・スタートアップネーション)が一時後れを取るが、何とか集団復帰を果たし事なきを得る。しかしこのアタックにより先頭集団との差は一気に縮まる。
最後の上りに入ると一気に先頭とのタイム差が縮まり、そしてマルク・ソレル(モビスター)が満を持して飛び出していく。そうなればメイン集団の主導権はユンボ・ヴィズマに移る。しかしメイン集団はこれで先頭の逃げきりを容認、ユンボ・ヴィズマも大きなタイムロスだけをしないような守りの走りに徹することとなる。
先頭集団はマーク・ドノヴァン(チームサンウェブ)、ヨン・イザギーレ(アスタナ)、ジーノ・マダー(NTTプロサイクリング)が残り18㎞の未舗装の上りで飛び出していく。イザギーレは何度となく揺さぶりをかけドノヴァンとマダーを振るい落とす。しかしその背後で、ガウドゥが着々とその差を詰めていた。そして先頭に追い付くと、そのまま残り4.3㎞で独走態勢へと持ちこむと、貫禄の今大会2勝目を挙げた。
そしてその背後では激しい総合バトルが始まる。総合3位のヒュー・カーシー(EFプロサイクリング)がまず積極的に仕掛けると、それに総合2位のカラパズとログリッチが反応する。そして何度もの攻防の末、残り3㎞でカラパズが鋭いアタックでようやく抜け出していく。一気にタイム差が広がるが、ここから伸びない。対してログリッチは、同じく総合順位を守りたいエンリック・マス(モビスター)と共闘、タイム差が20秒以上広がらない。するとカーシーがまたしてもアタック、ログリッチはこれについていくことができない。
しかしログリッチは冷静だった。マイペースで上り続け、ダメージを最小限にさえることに徹すると、見事に総合リーダーの座を守りきり、最終日マドリッドでのステージをマイヨ・ロホで迎え大会連覇が確実な状況となった。
「勝利するときは、どうして勝利できたかではなく、ただそれを喜べばいい。僕はスーパーハッピーだよ。チーム一丸となって全力を出し尽くし、うちのチームが最強で、僕が最強で、結果が伴って、それを誇りに思うよ。」ログリッチは笑顔を見せた。
「(マスらがログリッチを牽引したことに関して聞かれ)それぞれがそれぞれの目標がある、だからノーコメントだよ。今日起きたこともまたレース、僕は総合2位をキープしたんだ。総合2位だって立派な結果なんだよ。」カラパズはあと一歩届かなかった悔しさをにじませた。
「この総合表彰台は僕にとっては大きな転機になるかもしれない。」カーシーは今大会で一気にそのポテンシャルと価値を世に知らしめた。
これで残すは最終日のみ、新型コロナに翻弄された2020年シーズンのグランツールが幕を閉じる。
ブエルタ・ア・エスパーニャ第17ステージダイジェスト
ブエルタ・ア・エスパーニャ第17ステージ順位
1位 ダビ・ガウドゥ(グルーパマFDJ) 4h54’32”
2位 ジーノ・マダー(NTTプロサイクリング) +28”
3位 ヨン・イザギーレ(アスタナ) +1’05”
4位 ダビ・デ・ラ・クルス(イネオス・グレナディアス)
5位 マーク・ドノヴァン(チームサンウェブ) +1’53”
6位 ミカエル・ストーラー(チームサンウェブ)
7位 ギヨーム・マルタン(コフィディス)
8位 リチャード・カラパズ(イネオス・グレナディアス) +2’35”
9位 ヒュー・カーシー(EFプロサイクリング) +2’50”
10位 プリモズ・ログリッチ(ユンボ・ヴィズマ) +2’56”
ブエルタ・ア・エスパーニャ総合順位
1位 プリモズ・ログリッチ(ユンボ・ヴィズマ) 69h17’59”
2位 リチャード・カラパズ(イネオス・グレナディア +24”
3位 ヒュー・カーシー(EFプロサイクリング) +47”
4位 ダニエル・マーティン(イスラエル・スタートアップネーション) +2’43”
5位 エンリック・マス(ドゥクーニンク・クイックステップ) +3’36”
6位 ワウト・ポエルス(バーレーン・マクラーレン) +7’16”
7位 ダビ・デ・ラ・クルス(UAEチームエミレーツ) +7’35”
8位 ダビ・ガウドゥ(グルーパマFDJ) +7’45”
9位 フェリックス・グロスチャートナー(ボーラ・ハンスグロエ) +8’15”
10位 アレハンドロ・バルベルデ(モビスター) +9’34”
H.Moulinette