世界選手権男子エリートロード:大雨でコース短縮、大荒れのサバイバルバトルを制したのは23才のペデルセン、有力勢続々脱落、コース水没、サポートカーと選手接触などハプニング続出
世界選手権を勝利すれば獲得できるアルカンシエル、その虹色のジャージの為に多くの選手が照準を合わせて挑んでくるのだが、今年はあまりの悪天候にジュリアン・アラフィリップ(フランス)でさえ「完走できただけで満足だよ。」と言わしめるほどにキツイレースとなった。多くの選手が雨で体が冷え切りまともにしゃべることもできないくらいに疲弊したそんなレースを制したのは、23歳のマッズ・ペデルセン(デンマーク)、荒れたサバイバルバトルで苦悶の表情を浮かべながらも、マッテオ・トレンティン(イタリア)を振り切って世界チャンピオンに輝いた。
あまりにも過酷過ぎた。レース開始前にコース変更が決定され、上り区間がカットされ、周回コース部分が代わりに7周から9周となったレースは気温が10度ほどしかない状況だった。その上大雨で体が濡れレインジャケットを着ていても体温低下などで次々と選手たちが脱落していく。さらには大雨でコースが水没までしている状況。実況でも「選手たちが湖を越えていく」と皮肉る水深20㎝程の水没地帯を走らねばならない状態だ。
さらにはこのコンディションの、オフィシャルカーやサポートカーもてこずることとなる、選手との接触も相次ぎ、選手が激怒するシーンも見られた。さらにはパンクやメカトラに加え落車も相次ぐこととなった。
そんなレースは序盤に、今年のジロ・デ・イタリア覇者のリチャード・カラパズ(エクアドル)、ブエルタ・ア・エスパーニャ覇者のプリモズ・ログリッチ(スロベニア)、さらにはナイロ・キンターナ(コロンビア)といった豪華メンバーが飛び出し、後続に4分ほどの差をつける。しかしこれだけの豪華メンバーもペースが上がり切らず、集団にじわじわとその差を詰められ、周回コースに入り吸収されてしまう。
すると残り5周で再びアタックがかかる。ローソン・クラドック(アメリカ)とステファン・キュング(スイス)がまず飛び出すと、そこにペデルセン、ジャンニ・モスコン(イタリア)、マイク・テウニッセン(オランダ)が合流を果たす。その後この5名に追いつくべく追走集団からアタックが繰り返されるが、なかなか追いつくことができない。
すると残り3周を切り、今シーズン第躍動をし優勝候補筆頭のマシュー・ファン・デル・ポエル(オランダ)が動く。これに唯一対応できたのはトレンティン、この二人が先頭争いに加わる。これで圧倒的に有利と思われたファン・デル・ポエルだったが、残り13kmでなんとファン・デル・ポエルが後れを取る。首を振りながら後退していくと、追走の集団も驚きの表情を見せながらファン・デル・ポエルを飲み込んでいく。
それにより先頭はイタリアのトレンティンとモスコン、さらにペデルセンとキュングに絞られる。有利に見えたのはいたりあ、モスコンが必死にトレンティンの為に仕事をする。しかしながらトレンティンを力でねじ伏せたのはペデルセンだった。力強くスプリントを開始すると、世界トップクラスのトレンティンを残り100mでかわし、そのままガッツポーズを決めた。ペデルセンは先週今シーズン初勝利を挙げた勢いのままに、サバイバルを制しアルカンシエルを手にして見せた。
「信じられない!勝てるなんて思ってもいなかったよ。アルカンシエルはすべての選手の憧れであり夢、それを僕が手に入れたんだよ!信じられないよ!予定では僕が先行して仕掛けてそこにベルギーとうちのエースフグルサングが合流する予定だったんだよ。でも結局ファン・デル・ポエルとトレンティンが動いて、それに誰もついてこれなかったんだ。もうそうなったらそこからは潰しあいだよね。あとはスプリントでベストを尽くして天命を待つだけだったんだよ。ゴールラインが見えたら全身の痛みが消えて最高のスプリントが出来ればなぁ、と思っていたんだよ。あの天候化で6時間半、皆限界だったね。あとは運が味方してくれたね。」デンマークに初めての世界チャンピオンジャージをもたらしたペデルセンは謙虚だった。
あまりの寒さに脱落、アルカンシエルを手放したアレハンドロ・バルベルデ(スペイン)は「芯から体が冷えたよ。もちろん完走したかったけど、でも無理だったよ。酷かった、寒いし、風が強いし、土砂降りだし、ほんと体が凍り付いたよ。ただずるずると走るよりは、勝てないと判断した時点でやめたんだよ。」とかたり、いかに過酷だったかを語った。
世界選手権2019 エリートロード男子
金メダル マッズ・ペデルセン(デンマーク) 6h27’28”
銀メダル マッテオ・トレンティン(イタリア)
銅メダル ステファン・キュング(スイス) +02”
4位 ジャンニ・モスコン(イタリア) +17”
5位 ピーター・サガン(スロバキア) +43”
6位 ミカエル・ヴァルグレン(デンマーク) +45”
7位 アレクサンダー・クリストフ(ノルウェイ) +1’10”
8位 グレッグ・ヴァン・アーヴェルマート(ベルギー)
9位 ゴルカ・イザギーレ(スペイン)
10位 ルイ・コスタ(ポルトガル)
H.Moulinette