ツール・ド・フランス第10ステージ:スプリントステージのはずがまさかの総合勢大分裂!そしてゴールスプリントを制したのは元シクロ王者のファン・アールト!グランツール初出場初勝利!
勢いというのは恐ろしいものだ。今大会の開幕ステージを予想外の展開で制したジャンボ・ヴィズマが、その後もステージ勝利を重ねると、この第10ステージも元シクロ世界王者のワウト・ファン・アールト(ジャンボ・ヴィズマ)が残り250mのロングスパートを仕掛け、並み居るスプリンターたちを抑えてツール初出場初優勝を果たした。これでチームは10ステージで4勝目となった。そして総合勢は終盤にまさかの分断劇でいくつもの集団に分かれてのゴール、明暗が大きく分かれ、総合優勝争いにとっては大波乱の一日となった。
この日のステージは横風が大きなインパクトを与える結果となった。残り25km、集団はいくつにも分裂し、先頭集団にはマイヨ・ジョーヌのジュリアン・アラフィリップ(ドゥクーニンク・クイックステップ)やチームイネオスの面々に加え、ピーター・サガン(ボーラ・ハンスグロエ)ら各チームのエーススプリンターたちが顔をそろえた。そしてそれにい暮れてティボー・ピノー(グルーパマFDJ)、リッチー・ポート(トレック・セガフレド)、リゴベルト・ウラン(EFエデュケーションファースト・ドラパック)、ヤコブ・フグルサング(アスタナ)らの集団が続き、さらに遅れてギウリオ・チッコーネ(トレック・セガフレド)、ファビオ・アルー(UAEチームエミレーツ)、さらに遅れてマイケル・ウッズ(EFエデュケーションファースト・ドラパック)、ジョージ・ベネット(ジャンボ・ヴィズマ)らとなった。
最初は十数秒ずつの間隔だったものが、ぐんぐんと開いていくタイム差がついていく。先頭集団にイネオスが入ったことで総合勢を引き離しにかかるためにペースアップを図る。チームむの勢いのままにここまで総合4位につけているベネットはその中でも最も後ろのグループになってしまい、気が付けばあっという間に数分の遅れとなってしまう。総合3位のピノーも2番目のグループに取り残される。必死の追走を見えるが、先頭集団に比べれば人数が少ないことが大きなハンデとなり、一時は20秒弱まで縮まった差もその後どんどんと広がっていく。
先頭集団はそのままスプリント体制に入ると、ポイント賞ジャージリーダーのサガン、さらにはカレブ・イーワン(ロット・ソウダル)、マシューズらが一気にスプリントを仕掛ける。さらにはエリア・ヴィヴィアーニ(ドゥクーニンク・クイックステップ)も加速していくが、そのど真ん中をジャンボ・ヴィズマのジャージが切り裂いていく。エーススプリンターのディラン・グローネウェーゲンがすでに遅れている中で、なんとファン・アールトが馬力ある加速でライバルたちを引き離し加速する。唯一ヴィヴィアーニが真っ向勝負で僅差の勝負となるが、最後は写真判定の結果僅かな差でファン・アールトの勝利となった。ヴィヴィアーニやライバルたちは驚きの表情でファン・アールトを見上げる結果となった。イーワンが3位、盤石のアシストを受けたはずのマシューズは4位に沈んだ。
「信じられないよ。あれだけのスプリンターに勝ったんだよ!それが何よりもうれしいよ。ツール初出場で勝利なんて”ワオ”としか言えないよ。最後は神経質なスプリントになったね。でもうまくいいポジションを確保できたんだよ。前回のスプリントからも、早めに仕掛けた方が僕にはいいだろうと思ったんで、残り250mで仕掛けることにしたんだよ。ヴィヴィアーニとは僅差だったね、でも1㎝前でゴールすりゃ勝ちだからね。」元シクロ王者の勝利への嗅覚は抜群だった。
多くの総合勢にとっては痛恨の一日となった。イネオス勢が安泰、アラフィリップと共に先頭集団でゴールしゲラント・トーマス(チームイネオス)とイーガン・ベルナル(チームイネオス)が総合2位と3位へとジャンプアップ、さらにはスティーブン・クライズワイク(ジャンボ・ヴィズマ)が総合4位、エマニュエル・ブッフマン(ボーラ・ハンスグロエ)が総合5位へとそれぞれジャンプアップを果たした。アラフィリップと共に先頭集団にいたエンリック・マス(ドゥクーニンク・クイックステップ)も総合6位となった。
対してピノーは大きくタイムを失い総合11位まで順位を下げ、昨日まで総合トップ10にウランとウッズの二人を送り込んでいたEFエデュケーションファースト・ドラパックはウランが総合13位、ウッズに至っては総合優勝絶望の総合43位まで順位を下げた。他にもフグルサング、ヴィンチェンツォ・ニーバリ(バーレーン・メリダ)らもタイムをを失った。モビスターもナイロ・キンターナ(モビスター)が総合8位と順位を上げたが、肝心のもう一人のエースミケル・ランダ(モビスター)は先頭集団に残っていたにもかかわらず、アラフィリップのホイールに接触して落車したワーレン・バルギル(アルケア・サムシック)に巻き込まれる不運もあり、総合21位と大きく順位を落としてしまった。
総合勢にとっては休息日前の大波乱、今後の戦略に大きく影響が出そうだ。
「これ以上の作戦はないでしょ。いい一日だったよ。クイックステップがいつも通り横風分断を狙っていたから、それにうまく便乗できたね。今日のように予測していないタイミングでのタイムロスはメンタルに来るから効果絶大なんだよね。ポジショニングを間違えただけで、分単位でタイムを失うこともあるんだよ。」
ゲラント・トーマス(チームイネオス) 総合2位
「何も言うことはないよ。カスみたいな一日だったというだけだよ。」
ティボー・ピノー(グルーパマFDJ)
「分断は残念だったね。タイムロスは本当に痛いよ。でもそれでもこれからも走り続けるしかないんだよ。チームはいい仕事をしていたしベストを尽くしたよ。でもこれがツールに潜む魔物だよ・・・まだ完全に脱落したわけじゃないから、良しとしないとね。」
リゴベルト・ウラン(EFエデュケーションファースト・ドラパック)
「予定通りだったよ。レースはトリッキーで神経質になると思っていたんだ。うちらのチームはこの総合リーダーの証マイヨ・ジョーヌを守りながら、ヴィヴィアーニのスプリントの為に動いていたんだ。分断が起きた後はもう必死だったよ。」
ジュリアン・アラフィリップ(ドゥクーニンク・クイックステップ 総合1位
ツール・ド・フランス第10ステージ
1位 ワウト・ファン・アールト(ジャンボ・ヴィズマ) 4h49’39”
2位 エリア・ヴィヴィアーニ(ドゥクーニンク・クイックステップ)
3位 カレブ・イーワン(ロット・ソウダル)
4位 マイケル・マシューズ(チームサンウェブ)
5位 ピーター・サガン(ボーラ・ハンスグロエ)
6位 ジャスパー・フィリップセン(UAEチームエミレーツ)
7位 ソニー・コルブレッリ(バーレーン・メリダ)
8位 マッテオ・トレンティン(ミッチェルトン・スコット)
9位 オリビエ・ナーセン(AG2R)
10位グレッグ・ヴァン・アーヴェルマート(CCC)
ツール・ド・フランス総合順位
1位 ジュリアン・アラフィリップ(ドゥクーニンク・クイックステップ) 43h27’15”
2位 ゲラント・トーマス(チームイネオス)) +1’12”
3位 イーガン・ベルナル(チームイネオス) +1’16”
4位 スティーブン・クライズワイク(ジャンボ・ヴィズマ) +1’27”
5位 エマニュエル・ブッフマン(ボーラ・ハンスグロエ) +1’45”
6位 エンリック・マス(ドゥクーニンク・クイックステップ) +1’46”
7位 アダム・イェーツ(ミッチェルトン・スコット) +1’47”
8位 ナイロ・キンターナ(モビスター) +2’04”
9位 ダニエル・マーティン(UAEチームエミレーツ) +2’09”
10位 ギウリオ・チッコーネ(トレック・セガフレド +2’32”
H.Moulinette