シクロクロスから来たもう一人の男、元シクロ世界王者ファン・アールトがクリテリウム・ド・ドーフィネで躍動、個人TTとスプリントでステージ2勝!ポイント賞獲得でツール出場も確定
今シーズン前半戦のクラシックで、紙面をにぎわせたのは現シクロ世界王者のマシュー・ファン・デル・ポエル(コレンドン・サーカス)だった。プロコンチネンタルであるために、ワイルドカードでの出場に限定されながらもクラシックで勝利するなど、圧倒的な才能を見せつけた。
そのファン・デル・ポエルとの最大ライバルでもあり、シクロ界の2大巨塔と呼ばれたワウト・ファン・アールト(ジャンボ・ヴィズマ)は、契約問題でもめるなどシーズンスタートをいい形で迎えることが出来ず、最大ライバルの活躍する背中を眺める日々が続いていた。
ファン・デル・ポエルがクラシックを終えるとMTBに参戦、こちらでも勝利を挙げさらにその評価を高める中で、ツール・ド・フランス前哨戦が始まり、ファン・アールトはその真価が問われる時期に差し掛かっていた。そんなプレッシャーの中、ツールメンバー入りを目指している出場中のクリテリウム・ド・ドーフィネ第4ステージの個人TTで驚きの勝利を挙げると、その勢いのままに翌日の第5ステージではスプリント勝負を制し、ステージ連勝、こちらもようやくその才能の片りんを最高レベルのロードレースで見せ結果に繋げることができた。第1ステージで3位、第3ステージでも2位と今大会絶好調でポイント賞ジャージを獲得した。
第4ステージでは26.1kmという決して短くはない個人TT、スペシャリストが名を連ねる中で、ファン・アールトは激走を見せる。ジロで落車し、ツールを狙うトム・デュムラン(チームサンウェブ)はTTスペシャリストでもある。そのデュムランになんと47秒の大差をつけて、ぶっちぎりのステージ勝利を果たした。
第5ステージはクラシックハンターのファン・アールトにとっては好みのコース設定、荒れた展開となったゴール勝負で先行したのはサム・ベネット(ボーラ・ハンスグロエ)、さらには今シーズンスプリントでも強さを見せ勝利量産中のジュリアン・アラフィリップ(ドゥクーニンク・クイックステップ)もいるなかで真っ向勝負に出たファン・アールトはそのままライバルたちを蹴散らし勝利を掴んで見せた。
「今週はうまくいっているよ。スプリントをしてポイントを稼ぎ出したくて、そうしたら僕が一番早かったんだよ。結構コーナーだらけでトリッキーな設定だったから、なるべく前に位置どるのが重要だったんだよ。チームメイトがそこはよくやってくれたよ。縦一列になってしまったんで、僕はアラフィリップをマーク、そうしたら彼が最終コーナーを抜けて仕掛けたんで、そこから僕も加速したんだよ。最高のスプリントが出来たね。」
ファン・アールトは第5ステージの勝利後にそう語った。ツール出場はこれで確定となり、いよいよグランツールにその活躍の場を求めることとなった。
「こんなチャンスはそうないからね。ツール出場のチャンスは逃さないよ。チームから話が出たときには、ツールに出たら、そのあとはロンドンクラシックだけ出ればロードはそれでいいとのことだった。これで最高の準備が出来た状態でシクロクロスシーズンにはいれると思ったよ。」
シーズンを通してロードに出続ける男は、休む間もなく今シーズンもシクロクロスで世界一を狙うようだ。最大ライバルも当然それを迎え撃つと思われるだけに、冬場もファン・アールトとファン・デル・ポエルの名を聞き続けることとなりそうだ。最強シクロクロッサー二人は、今後間違いなく最強ロードレーサーの称号も競い合うこととなりそうだ。
H.Moulinette