育成上手のドゥクーニンク・クイックステップに新星現る!ハマーシリーズのクライムで独走圧勝の19歳の脅威の新人イヴェネプール、サッカーから2017年に鞍替えしたばかりの驚異の身体能力
常に新星と言う存在が現れ、世代交代は進んでいく、しかしチームによって育成が上手下手は大きく分かれる。育成に重点を置いているチームもあれば、結果を残している強豪選手たちを資金で集めるチームがいる構造は、日本のプロ野球と同じと言えるだろう。その中でも育成が極めてうまいのが個性派集団ドゥクーニンク・クイックステップだ。絶対的エースを置かず、勝利を狙えるチャンスがあれば調子がいい選手が急遽エースとなり、エース格がアシストに回るなど変幻自在の戦略を求めるこのチームは、「勝利出来る選手」を育てるにはうってつけの環境のようだ。
そんなチームに今シーズンから加入した19歳のレムコ・イヴェネプールが、先日行われたハマーシリーズのクライムで圧倒的な走りを披露、トップカテゴリーの選手たち相手にその大器の片鱗を見せつけた。
そもそも2017年度4月まではなんとサッカー選手であり、世代別のベルギー代表キャプテンも務めたことがある。そもそもの身体能力が高かったことで、サッカーを止めた後始めた自転車競技ですぐに頭角を現す。同年度中にUCIのジュニアレースで早くも勝利を挙げると、その後も勝利を量産、2018年度にはメジャーレースでも勝利を挙げUC伊ジュニアレースでシーズン22勝、出場した5つのステージレースの全てで総合優勝とポイント賞ジャージを獲得、さらにはそのうち4つのレースで山岳賞も獲得した。更にはベルギー選手権、ヨーロッパ選手権、世界選手権の全てのジュニアTT、ジュニアロードを制する圧倒的な力を見せつけた。この走りが認められそのままベルギーのトップチーム入りを決めた。競技転向からわずか2年、すでにワールドツアーチームの一員として勝利をあげられるまでに急成長を遂げた。
そのライドスタイルは、そもそもサッカー選手としてピッチを走り回っていたことからも、単独独走に圧倒的な強さを見せる。個人TTなどでも強さを見せるが、逃げから独走勝利も多いのが特徴だ。しかしそれだけではないのがこの男の真骨頂だ。何と上りでも早いのだ。異競技からの転向で才能を開花する選手はいるが、その中でもタイプ的に言えばスキージャンプから転向して今乗りに乗っているプリモズ・ログリッチ(ジャンボ・ヴィズマ)に近いタイプなのかもしれない。オールマイティーに強いのだ。
しかしまだまだ苦手な部分もあるようだ。サッカーはチームプレイとは言えある程度「個の能力」を活かす競技、集団走行などの接近戦を苦手としている。そのこともあり独走しての勝利が多いというのもうなずけるところだ。アタッカー的なそういった走りはドゥクーニンク・クイックステップの十八番であり、このチームだからこそここまで急激にその才能を伸ばしているとも言えるだろう。
今シーズンはUCIレースシリーズでもここまでも開幕戦のツール・ド・サン・ホァンで総合9位と新人賞、ツアー・オブ・ターキーで総合4位、と結果を残してきたが、今開催中のベルギーツアーでも第2ステージで圧倒的な独走勝利を挙げ、後続に大きくタイム差を開けて総合リーダージャージを獲得しており、このままいけばここでも総合優勝の可能性すらある。
恐るべし新人、恐るべし才能、イヴェネプールの名はこれから覚えておかねばならないだろう。
H.Moulinette