ジロ・デ・イタリア第4ステージ:運も実力のうち、ログリッチ以外の総合系大打撃!落車で最大ライバルのデュムラン4分のタイムロス!上りスプリントでのステージ勝利はカラパズ!
残りわずか6km、この距離に魔物が住んでいた。総合上位勢が細心の注意を払い不用意なタイムロスを避けるべく動く中で、まさかの大落車が発生した。残り3km以内であれば救済措置が取られるが、その距離に届く前に悲劇は起きてしまった。そしてそれを逃れた総合系はなんと総合リーダーのプリモズ・ログリッチ(ジャンボ・ヴィズマ)ただ一人、この男の「強運」はどれほどのものだろう。そして対抗馬と目されたトム・デュムラン(チームサンウェブ)がこの日最大に犠牲者となり、大きくタイムを失い総合争いから大きく後退することとなった。
平坦基調なステージが続く今年の大会では、前半戦は静かに推移するものと思われていた。当然このステージも終盤まではスプリンターステージとなる気配しかしなかった。しかし勝負の女神は想像を超えたハプニングを選手たちに用意していた。まずは残り12.3kmでなんでもない直線で落車が発生、主要選手たちは難を逃れたが、難所ではない場所での落車の発生は、選手たちがナーバスになるきっかけとなる。
すると今度は、残り6.4kmで選手たちが隊列を維持しようと高速でうねるように走行した際に集団中央で落車が発生、かなりの選手たちが巻き込まれ、あっという間に集団が2つに分断されてしまう。さらにはその次のロータリーで再び落車が発生、デュムランのみならず、サイモン・イェーツ(ミッチェルトン・スコット)や、ミゲル・ランダ(モビスター)なども巻き込まれる。デュムランは立ち上がったが苦悶の表情を見せる。左ひざ丈夫に裂傷と擦過傷を負い、再スタートこそしたがペースが上がらない。さらにはバイク交換も余儀なくされ、どんどんとタイムを失っていってしまう。
この一連の落車を逃れたのは僅か15名、総合リーダーのマリア・ローザのログリッチは何事もなかったかのように、その中でスプリンターに紛れて先頭集団を形成する。この日は上りスプリントともういこともありリチャード・カラパズ(モビスター)は虎視眈々とステージ優勝を狙い影を潜めていたが、残り400mを切り一気に仕掛けると、そのまま独走へと持ち込む。先頭集団ではだれが追走するかで一度はお見合い、この一瞬が勝敗を分けることとなった。必死でカレブ・イーワン(ロット・ソウダル)が追走で迫るが、最後は一歩及ばずカラパズがステージ勝利を挙げた。ログリッチは2秒遅れのステージ6位でゴール、すべての総合ライバルたちにタイム差をつける形となる。
必死で追走してきたイェーツはヴィンチェンツォ・ニーバリ(バーレーン・メリダ)、ミゲル・アンヘル・ロペス(アスタナ)、ラファル・マイカ(ボーラ・ハンスグロエ)、ボブ・ユンゲルス(ドゥクーニンク・クイックステップ)らと何とかタイムロスを16秒の最小限にとどめた。
しかしデュムランは4分以上にタイムロス、これでログリッチとのタイム差は4分30秒に広がり、わずか4ステージ目にして2017年度の勝者が早くも総合ギブアップを宣言した。この日の落車で総合勢は大幅にシャッフルされることとなった。ログリッチ以下総合系が名を連ねるが、タイム差がしっかりとついており、早くもログリッチには追い風が吹いている。
「正直前のほうにいたから落車は見えなかったんだよ。総合勢は無駄なタイムロスをしないために集団前方にいるのに、こういうことが起きるんだよね。だから最善を尽くしたといえるように位置取りをするんだよね。ステージも狙いたかったけど、まあ後続とのタイム差が広がっただけでOKだよ。これでレース的にもこれから楽になったしね。」
~プリモズ・ログリッチ ステージ6位 総合1位
「皆がロータリーではポジションを狙っていたし、僕の前で一人選手がバランスを崩したんだよ。誰のせいでもないよ、あれは偶発的なものでしかないよ。でもまあ運よくすぐに起き上がれて復帰できたから、タイムロスを最低限に抑えられたよ。そりゃ安全に走り切れるに越したことはないよ。でも落車は自転車レースの一部なんだ。起きるものは起きるんだよ。」
 ̄サイモン・イェーツ ステージ10位 総合2位
「畜生、イェーツのせいで落車したよ。あいつ頭いっちゃんてるんじゃないのか?(その後イェーツに謝罪)。落車が痛いんじゃないんだ、タイムロスが痛いんだよ。これでログリッチと2分半の差だよ。」
~ミケル・ランダ
「今晩休んで、明日からどうするかを決めるよ(リタイアするかどうか)。総合に関してはもう完全に白旗だからね。集団前方にいたんだけど、避けられなかったね。幸いにも骨折はないけど傷だらけだよ。最後は足に激痛が走ってもうあれ以上追走もできなかったよ。」
~トム・デュムラン
ジロ・デ・イタリア第4ステージ
1位 リチャード・カラパズ(モビスター) 5h58’17”
2位 カレブ・イーワン(ロット・ソウダル)
3位 ディエゴ・ウリッシ(UAEチームエミレーツ)
4位 パスカル・アッカーマン(ボーラ・ハンスグロエ) +2”
5位 フロリアン・セネシャル(ドゥクーニンク・クイックステップ)
6位 プリモズ・ログリッチ(ジャンボ・ヴィズマ)
7位 ヴァレリオ・コンティ(UAEチームエミレーツ) +14”
8位 ミゲル・アンヘル・ロペス(アスタナ) +18”
9位 アルノー・デマール(グルーパマFDJ)
10位 サイモン・イェーツ(ミッチェルトン・スコット)
ジロ・デ・イタリア総合順位
1位 プリモズ・ログリッチ(ジャンボ・ヴィズマ) 16h19’20”
2位 サイモン・イェーツ(ミッチェルトン・スコット) +35”
3位 ヴィンチェンツォ・ニーバリ(バーレーン・メリダ) +39”
4位 ミゲル・アンヘル・ロペス(アスタナ) +44”
5位 ディエゴ・ウリッシ(UAEチームエミレーツ)
6位 ラファル・マイカ(ボーラ・ハンスグロエ) +49”
7位 バウク・モレンマ(トレック・セガフレド) +55”
8位 ダミアーノ・カルーソ(バーレーン・メリダ) +56”
9位 ボブ・ユンゲルス(ドゥクーニンク・クイックステップ) +1’02”
10位 ダビデ・フォルモロ(ボーラ・ハンスグロエ) +1’06”
H.Moulinette