多くの選手達がTUEのあり方に物申す、キッテルとグライペルは重度の喘息患者は同じ土俵で勝負すべきではないと発言、TUEにより厳しい基準と透明度をもたせる必要性
シーズンが終了し、TUE(治療目的例外措置)問題も一見収束したかのように思えるが、来シーズンへ向けてまだまだ火種はくすぶっている状況が続いている。ブラッドリー・ウィギンスのTUE申請による投薬が、過剰だったのではないか、それによりドーピング効果があったのではないかという疑惑から火がついた論争は、解決の糸口さえ見えていない。
選手たちの間にも今までTUEに関しての不満があったが、WADAの情報リークにより発覚した投薬量を見た選手たちからは厳しい声が上がっている。
「重度の喘息患者で、スポーツに支障があるレベルであれば、それはもはや純粋に同じ土俵でフェアに競技は出来ない。そういう人たちのためにパラスポーツという競技があるのだから、大量の投薬が必要なレベルであれば、そのような場所で、同じような症状を持つ人達と競技をすべきだ。」世界トップクラスのスプリンターであるマルセル・キッテル(エティックス・クイックステップ)はウィギンスの例を引き合いに出し、あれだけの投薬をすれば、そのパフォーマンスにも影響を及ぼし、フェアなレースにはなっていないと指摘した。
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また同じく世界トップクラスのスプリンターでもあるアンドレ・グライペル(ロット・ソウダル)もTUEがレースシーンをアンフェアなものにしていることを口にした。
「体調が悪いのであればレースしない。TUEの乱用をしないために、うちのチームも多くのチームが参加しているMPCC(クリーンな自転車界を求める活動)に参加しているんだ。今回の一件で、なぜチームスカイがMPCCに賛同も参加もしていないのかがよくわかったよ。」キッテルもグライペルも、体調不良で苦しんだ時期もあるが、どちらもTUE申請をしてのレース出場はしていない。
もちろん反発するものばかりではない、ジョン・デゲンコルブ(ジャイアント・アルペシン)は「本当に健康に深刻な問題があるのであれば」という限定条件下のもとでのTUE使用であればしょうがないとしている。
治療のために投薬が必要なのは仕方のないことだが、それが選手間に不公平感を生み出しているのであれば、WADA(世界アンチ・ドーピング機構)はその選手たちの声に真摯に向き合うべきだろう。今まで一切公表されてこなかったTUE申請で、どの選手がどれだけの治療薬を処方されたかという事実と、その処方量の異常さが公表されたことで、今まではTUEは治療のためだから仕方がない、と容認していた人々も違和感を抱いているのが現状だ。
UCIもWADAも「きちんとやっているのだからよし」ではなく、選手たちの不満の声に対してもっと聞く耳を持つべきだろう。ドーピング問題がある程度下火になったところで、今度は合法的なルールを悪用しての違反行為を感じさせる行為があったことで、さらなるファン離れが懸念される。
TUEは決して不必要な制度ではない、ただしそこには透明性が欠けていたとを今回のデータ流出は教えてくれた。キッテルやグライペルのように現場で戦う人間にとっては死活問題でもあり、このようなきつい発言になってしまうことにも理解は出来る。彼らのように選手たちがいかに不公平感を感じないように出来るか、これは早急に取り組まねばならない案件だろう。
スポンサースポーツであるがゆえの闇、TUEの透明性を増すためにはやはりある程度のデータの公表は避けて通れないだろう。
H.Moulinette