続TUE(治療目的例外措置)を考える:続々と公表されるTUE申請、カンチェラーラ、フグルサング、カミングスら主力選手の申請も、WADA難色もチームスカイはTUEの公開は必要と指摘

ファンシーベアーによるWADA(世界アンチ・ドーピング協会)へのハッキングにより流出している選手たちのTUE(治療目的例外措置)情報、新たにファビアン・カンチェラーラ(トレック・セガフレド)、ヤコブ・フグルサング(アスタナ)、ステファン・カミングス(ディメンションデータ)、ジャック・ボブリッジ(トレック・セガフレド)らの情報がリークされた。各チームの主力や、今シーズン限りでの引退となる伝説の男”スパルタカス”カンチェラーラの名前がそこにあったことに、世間はざわついており、「TUEっていったい?」と言った雰囲気になっている。

『TUEとは・・・ 』
改めて説明すると、TUEとは治療目的で選手たちがWADAが指定している禁止薬物を使用する許可のことだ。常人が使用すれば様々な効果をもたらし、ドーピングと認定されるのだ。しかし医師の判断と診断書を元に申請をすれば、レース前でも例外的に使用が認められるのだ。これにより、万が一ドーピングテストでドーピング物質が検出されたとしても、”問題なし”とみなされるのだ。多くの場合、TUE申請が提出され、WADAがそれを認めた時点で、検査から除外されることが多い。」
そもそもハッキングでの流出がある前からTUEに関しては何度となく公開すべきかどうかの議論が行われてきた。新たなドーピングの温床になるのではと危惧されたからだ。しかしWADAは選手たちのプライバシーを理由にその議論をすることさえ拒んできた。
そして起きた今回の一連の騒動の中で、チームスカイのブラッドリー・ウィギンスやクリス・フルームのTUE申請がリークされたことで、ウィギンス、そしてチームスカイは矢面に立たされることとなった。そうなったことでチーム監督のブレイルズフォードは「TUEの公表はよりオープンな自転車界のためには必要、そして公表するかどうかの最終判断は選手たちの個人の意志に任せる」という形を提案している。
WADAはこれに対しても反論をしており、個人の医療記録は公開する必要がないとしている。「選手は個人情報を開示する必要性はない。TUEはもはや選手間のみならず、医師やアンチドーピング賛同者達の間でもスポーツに必要不可欠なものであると認識されており、我々がそれをきちんと管理している。」
そう語るWADAだが、実際に今回公表されたTUE申請書類には、日付などが合わないものも存在しており、厳格に管理されているとはいい難い側面も垣間見えた。また結果的にこのような形で表面化したことで、選手たち自身に非難の矛先が向けられてしまっている現実を考えてみても、世間の目がいかに「薬物」に対して拒絶反応を持っているかがわかる。ならば、やはりきちんと公開、なぜその薬物を治療に使っているのかを公表する必要はあるだろう。スポーツ選手は一個人ではあるが、スクリーンを通して世界中でその姿を見ることが出来る、ある種”公人”でもあるのだ。それを考えればある程度オープンにする必要はあるのではないだろうか。<br />
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H.Moulinette