ツール・ド・フランス第12ステージ:マイヨ・ジョーヌのGトーマスがラルプデュエズ制し山岳ステージ連勝!ニーバリは残り3kmでまさかの落車も驚異のリカバーもゴール後背骨骨折発覚でリタイア

ツール・ド・フランスの名物峠、ラルプデュエズはチームスカイ以外のチームにとってはまたしてもほろ苦い場所となってしまった。大逃げを敢行したライバルたちをきっちりとペースを図り追走、そして狙ったかのように最後の上りで捉えてからの攻撃、昨日とまったく同じパターンで攻めたチームスカイの”新”エース、マイヨ・ジョーヌのゲラント・トーマス(チームスカイ)が軽やかかつ鮮やかにゴールを駆け抜けこれで山岳ステージ連勝、ボーナスタイムを獲得しライバルたちをさらに突き放すことに成功した。さらには大多数のスプリンターが昨日今日の山岳ステージの早すぎるペースについていくことができずにリタイア、大会は中盤ながら早くも世界チャンピオンピーター・サガン(ボーラ・ハンスグロエ)のポイント賞に確定ランプが点滅し始めた。

©Tim D.Waele/Getty Images
この日の大逃げに乗ったメンバーの中に、総合優勝をまだ狙えるアレハンドロ・バルベルデ(モビスター)に加え、総合6位のスティーブン・クライズワイク(ロットNLジャンボ)までが入る展開、チームスカイに対して各チームが積極的な攻めで圧力をかける。クライズワイクは、レース中盤の難所で、あえてバルベルデやピエール・ローラン(EFエデュケーション・ファーストドラパック)、さらにはワーレン・バーギル(フォーチュネオ・シデルメック)と言ったクライマー達を置き去りにしてまで独走態勢へと持ち込んでいく。これでGトーマスらのいる総合系のメイン集団との差は一気に6分強まで広がっていく。

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バルベルデは分断した逃げ集団で踏ん張り続けたが、徐々に逃げ集団は崩壊、徐々に吸収されていく。この日メイン集団ではチームスカイがまたしても組織力と駆け引きの妙を見せる。本来であればチームスカイが追走すべきところを、クライズワイクがそのまま逃げることを脅威に感じるチーム、またこの日仕掛けたいチームに引かせたのだ。本来であればチームスカイのアシストの脚を使わせ削りたいところではあるが、チームスカイのハイペースバトルに巻き込まれ昨日のように攻めてさえ失うことを嫌ったライバルチームは、あえて集団を牽引することを選択する。

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クライズワイクが一人旅を続ける中で、メイン集団との差は大きくは変わらないまま推移する。ただその間にいる逃げのメンバーはペースが上がらず、気が付けば集団へと飲み込まれ、そしてさらに後ろへと吐き出されていく。しかし超級山岳から残り13.8km地点のラルプデュエズまでの上りに入るまでの区間ではさすがに人数の差がものを言い、ようやく主導権を握ったチームスカイがペースアップしその差を4分台にまで縮めてくる。

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そしてついに突入したラルプデュエズで、チームスカイに対してライバルチームが波状攻撃を仕掛ける。まずはナイロ・キンターナ(モビスター)、そしてヴィンチェンツォ・ニーバリ(バーレーン・メリダ)らが次々と仕掛けるが、次世代のエースと期待されるイーガン・ベルナル(チームスカイ)がことごとくそれを潰していく。そしてその間にもクライズワイクとの差はみる見る間に縮まっていく。

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そして今度はロメイン・バルデ(AG2R)が一人波状攻撃でチームスカイのアシストのベルナルを脱落させたが、今度はGトーマス、さらにはクリス・フルーム(チームスカイ)が攻撃を仕掛ける。これに対してついにトム・デュムラン(チームサンウェブ)も動く。そして残り4kmでこの4人はクライズワイクに追いつき、あっという間に置き去りにしてしまう。ミケル・ランダ(モビスター)がかろうじて4人を追走、突き放されてもマイペース走法でしぶとく粘り続ける。
そしてそのすぐ背後でまたしても起きてはならないアクシデントが起きる。スモークが焚かれ視界が悪い中で、ニーバリが沿道の観客と接触、落車してしまう。腰を抑え顔をしかめるニーバリは何とか戦列に復帰、プロモズ・ログリッチ(ロットNLジャンボ)と共に猛追を仕掛ける。

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この落車を聞いた先頭の5人は一度は脚を緩めるが、バルデが再び仕掛けバトルが再開する。そして残り1kmを切り、ランダが先頭のまま残り300mの最終コーナーへと突入すると、昨日同様に圧倒的な加速を見せたのはGトーマスだった。トラック競技で培ったその脚力の前に、ライバルたちは完敗だった。デュムランは二日連続の2位、バルデが3位に入った。

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「言葉が見つからないよ。まさか今日も勝てるなんて思ってもいなかったよ。僕はただデュムランをマークし、バルデとフルームの動きを注視していただけだよ。それとニーバリは運が悪かったね。僕も巻き込まれそうだったからね。このままパリまで一気の飛んじゃうのはダメなのかな?僕はプランBじゃないとは言ったけど、実績から言えばやはりフルームが一番”勝ち方”を知っている。だから今は僕はこの瞬間を満喫することにしているんだよ。」Gトーマスは満面の笑みでそう語った。
その不運なニーバリは、トーマスからわずか13秒遅れでゴールしたが、あまりの痛みにレース後レントゲンを取り確認したところ背骨の骨折でリタイアとなった。
「調子が良かったん猛追できたんだよ。でも今は背中が痛いよ。重傷じゃなければいいんだけど・・・(この後重傷と判明)」~ニーバリ

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「ツールでの勝利が難しいのは当たり前だよ。それがステージであろうと総合であろうともね。でもそれでも戦い続けるしかないんだよ。」~ランダ
「ステージ勝利を狙いながら総合も守るというのは骨が折れるよ。それで神経をすり減らしているよ。今日も勝利を狙ったけど、相変わらずチームスカイが強かったね。攻めているんだから後悔はないよ。」~バルデ
「いいトライだっただろ。仕掛けないと何も得る可能性は無いからね。まあ最後の上りは余分だったね。順位は落としたけど、まだ悪くないだろ。」~クライズワイク
「今日は神経戦だったね。ライバルたちがこれでもかと仕掛けていたからね。僕も何とか勝利を狙ったけど、スプリントするまでの位置取りが悪かったね。第3週に勝利を狙うよ。」~デュムラン
ツール・ド・フランス第12ステージ
1位 ゲラント・トーマス(チームスカイ) 5h18’37”
2位 トム・デュムラン(チームサンウェブ) +02”
3位 ロメイン・バルデ(AG2R) +03”
4位 クリス・フルーム(チームスカイ) +04”
5位 ミケル・ランダ(モビスター) +07”
6位 プロモズ・ログリッチ(ロットNLジャンボ) +13”
7位 ヴィンチェンツォ・ニーバリ(バーレーン・メリダ)
8位 ヤコブ・フグルサング(アスタナ) +42”
9位 ナイロ・キンターナ(モビスター) +47”
10位 スティーブン・クライズワイク(ロットNLジャンボ) +53”
ツール・ド・フランス総合順位
1位 ゲラント・トーマス(チームスカイ) 49h24’43”
2位 クリス・フルーム(チームスカイ) +1’39”
3位 トム・デュムラン(チームサンウェブ) +1’50”
4位 ヴィンチェンツォ・ニーバリ(バーレーン・メリダ) +2’37”
5位 プリモズ・ログリッチ(ロットNLジャンボ) +2’46”
6位 ロメイン・バルデ(AG2R) +3’07”
7位 ミケル・ランダ(モビスター) +3’13”
8位 スティーブン・クライズワイク(ロットNLジャンボ) +3’43”
9位 ナイロ・キンターナ(モビスター) +4’13”
10位 ダニエル・マーティン(UAEチームエミレーツ) +5’11”
H.Moulinette