アムステル・ゴールドレース2018:未だ崖っぷちのアスタナが数的優位を生かしてヴァルグレンが勝利!サガンをマークしすぎたライバルたちはタイミングを逸し自滅
世界チャンピオンの存在感というのはそれほどまでに圧倒的なものなのだろう。ピーター・サガン(ボーラ・ハンスグロエ)がいることでお互いをけん制し続けた優勝候補たちは、「自らを犠牲にするくらいなら先に行かせた奴が勝利すればいい」という世界チャンピオンの割り切りにまんまとはまり、追走をすることなく自滅してしまった。それを逆手に取ったのが数的優位に立っていたアスタナ、何度となく揺さぶり続けたヤコブ・フグルサング(アスタナ)の陰で息を潜めていたミカエル・ヴァルグレン(アスタナ)がタイミングよくアタックを決め、最後はスプリントを制してオムループ・ヘット・ニウスブラッドに続いて今シーズンワンデイのビッグタイトル2勝目を獲得した。
クラシックのビッグタイトルを目指すバトルは、残り20㎞を切り先行する数名をパリ~ルーベを制したサガン、ジュリアン・アラフィリップ(エティックス・クイックステップ)、今シーズンも絶好調のアレハンドロ・バルベルデ(モビスター)、先日のクラシックレースを制したティム・ウェレンス(ロット・ソウダル)、今大会を2度制しているエンリコ・ガスパロット(バーレーン・メリダ)らを含む強力な優勝候補たちが追う展開となる。この日もクイックステップ・フロアーズのアシスト勢が機能し、あっという間にその差が縮まると、集団は一つとなって展開していく。
そこから繰り返される揺さぶり、バルベルデやアラフィリップ、ウェレンスやガスパロットらも次々仕掛けて見せるが、サガンは一向に動じない。ライバルたちはサガンをゴール勝負へと連れて行ってしまえば勝ち目は薄いと判断、何とかサガンを追い落とそうと躍起になるが、サガンはそれをあざ笑うかのように淡々と走り続ける。
そんな展開を凍り付かせたのが、ここまでフグルサングばかりが動いていたアスタナだった。脚を貯めていたヴァルグレンは残り5㎞のベメレベルグで渾身のアタックを決めると、いったんその差が開く。まずはウェレンスが追走をするが、その差は思ったように縮まらない。そこでサガンが一気に加速、このアタックを何とか終息へと持ち込む。しかし残り2.5㎞、再びヴァルグレンが躊躇ないアタックへと繰り出すと、それに反応したのはロマン・クロイツィゲル(ミッチェルトン・スコット)だけだった。そのクロイツィゲルでさえ、サガンやほかのライバルたちの表情を確認しながら、一瞬躊躇した後に追い始めた。
あっという間に差が広がっていき、これに危機感を感じたガスパロットは単独で追走へと飛び出していく。集団も距離感を確認ししながらも、サガンへの一方的マークに精神をすり減らす精神戦が繰り広げられる。バルベルデが追走の速度を上げるべく揺さぶりをかけるが、サガンが反応すると一気に誰もが引かない状況となってしまう。そのまま残り1kmを通過、先頭の二人、そしてそれを単独で追うガスパロットが直線に入り、そして優勝候補たちの集団も続いて直線に入るが、アラフィリップは敗北を確信、うなだれるように首を振る。
ガスパロットが背後に迫った瞬間ヴァルグレンが一気に仕掛け、そのままクロイツィゲルを振り切りガッツポーズ、アスタナにとっては貴重なビッグタイトル獲得となった。ガスパロットは踏ん張り3位、そしてその背後では4位争いのスプリントをバルベルデとサガンが繰り広げる。どちらも年間王者へ向けて少しでもポイントを積み重ねたいだけに、一つでも上の順位を目指したが、他のライバルたちは敗北決定と共にモチベーションを失い失速してのゴールとなった。
「監督が、今日は素晴らしいチームワークだったと絶賛してたんだけど、僕もそう思ったよ。今日は集中できていたしいいメンツが揃っていたからね。序盤からそれぞれが役割を果たし、そして最後はフグルサングがライバルたちを疲弊させてくれ、僕のお膳立てをしてくれたよ。完璧だったよ。2度目のアタックはあまりにもあっけなく決まったよね。無線越しに「いけ~!」って聞こえてきたし、この勝利はチームにとってはとても大きいよ。」ヴァルグレンはレース後すぐに電話してきたヴィノクロフがチームワークを絶賛していたことを笑顔で語った。
すっかりお馴染みとなったビールによる勝者の祝杯、今年も思わぬ勝者が263kmの長丁場の混戦を制した。
アムステル・ゴールドレース
優勝 マイケル・ヴァルグレン(アスタナ) 6h40’07”
2位 ロマン・クロイツィゲル(ミッチェルトン・スコット)
3位 エンリコ・ガスパロット(バーレーン・メリダ) +02”
4位 ピーター・サガン(ボーラ・ハンスグロエ) +19”
5位 アレハンドロ・バルベルデ(モビスター)
6位 ティム・ウェレンス(ロット・ソウダル)
7位 ジュリアン・アラフィリップ(クイックステップ・フロアーズ)
8位 ヤコブ・フグルサング(アスタナ) +23”
9位 ローソン・クラドック(EFエデュケーション・ファーストドラパック) +30”
10位 イェーレ・ファネンデール(ロット・ソウダル) +36”
H.Moulinette