長引くフルーム問題、双方有力弁護士で長期化の様相、ジロ開幕前に決着見込めず、UCIは効力ないが出走の取りやめを打診、UCI、ASOらは決着しない限りツールにも出場しないように通達
フルーム問題は間違いなく長期戦となってきている。すでにジロ前の解決は困難となり、フルームはジロ出場へ意欲を見せており、3連続グランツール制覇へと歩を進めている。フルーム側もUCI側も有力な弁護士を擁立し、どのような決定が出ようとも、この問題は裁判へともつれ込みそうな様相を呈している。
UCIはジロへの出場辞退を打診したがチームスカイとフルーム側は実質拒否、そしてツール・ド・フランスに関しては主催のASOとUCI、さらには各選手や各チームまでもが揃って出場辞退をするようにと口にしている。理由は明白で、もし今後出場停止処分となった場合、さかのぼって記録が抹消となる可能性が高いのだ。過去にランス・アームストロングや様々なドーピングケースで、遡っての記録抹消により順位変動や優勝者空欄となるという異常事態が頻発し、自転車レースへの信頼が失墜しただけに、同じ轍を踏みたくないのだ。
しかしことを複雑にしているのは今回のケースが「禁止薬物使用」のドーピング違反ではないということだ。申請を出して使用を認められていた薬物の過剰摂取によるパフォーマンス向上があったのではないかということが疑われているのだ。
すでに同じ症状(喘息)を抱える他の選手からは、「状況から考えても摂取後にパフォーマンスが向上しているのは、不自然であり、症状が出ていないのに摂取していた可能性が高い。」との指摘もあり、あれだけアンチドーピングを掲げてきたフルームには今やグレーなイメージが付きまとっている。他チームの選手たちからも「判断が下るまですべてのレースに出るべきではない」、「同じレースに出たくない」などの声も多く上がっており、今やすっかり「悪者」のイメージが定着してしまっている。
しかしこれはフルームの個人的なサルブタモール値がオーバーしていた問題だけではなく、チームスカイ自体のTUE(治療目的例外措置)の悪用に関して、チーム監督と当時エースだったブラッドリー・ウィギンスとともに限りなく黒に近いグレーという状況となっているからだ。こちらもまだ判断が下せぬ状況で、さらに発覚したチームスカイ内のスキャンダルだけに、各チームはチームスカイ自体に対して疑いのまなざしとその対応に嫌気を見せている。今現在もう一人のエースとなっているゲラント・トーマスが契約の延長ではなく移籍を示唆するなど、チームスカイは苦境に立たされている。
長引いている理由の一つが、フルーム側がこの異常数値が意図的でない資料の提出を長期化させていることだ。UCIはこれに対して「いたずらに伸ばしてもフルームには何のメリットもないはずだ、情報を我々に提出するのになずにこれほどまでに時間がかかるのか。」といら立ちを見せている。本来であれば、すでに審判委員会に委ねられているだけに、決着していてもおかしくなかったのだが、チームスカイ側の牛歩戦術ともいえるやり方が、事をむやみに引き延ばしているとUCI側はさらに疑念と懸念を深めている。
またチームスカイ側が、フルームの異常数値の理由が証明できないために、WADA(世界アンチドーピング機構)が行ったテストの信憑性自体を問おうとしている動きもあり、WADAも神経をとがらせている。
どうあれ、この問題が長引けば長引くほど、見ているレースファンや一般大衆側としては白けてしまう。
実際に黒であるかどうかはわからないが、偶発的に個人の特徴として突発的な異常数値が検出されることがないとは言えない。だがフェアな判断としては、異常数値が出たのであれば、その理由がどうあれ、まずは出場停止処分を下すべきだろう。その上で反論をする機会を与えるというのが順序だろう。フェアな判断としては、異常数値が出たのであれば、その理由がどうあれ出場停止処分を下すべきだろう。そうでなければまっとうに走っている選手たちに対して示しがつかないだろう。UCIは期限をきちんと設け、その期日までにフルームの潔白を示すデータが示せないのであれば、出場停止処分という判断をきちんと下すべきだった。王者に対する配慮なのかもしれないが、その優柔不断さこそが自転車レース界への信頼を失墜させているのだ。いつまでこの茶番が続くのか、さっさと決着をしてレース界の信頼回復に努めて欲しい。
H.Moulinette