パリ~ニース第7&8ステージ:S.イェーツが第7ステージ制し総合首位に立つも、最終ステージで逃げを敢行したソレルが大逆転で総合優勝!その差は僅か4秒にイェーツがっくり
パリ~ニースは今年も僅差の決着となった。第7ステージを制したサイモン・イェーツ(ミッチェルトン・スコット)が総合リーダーの証、マイヨ・ジョーヌを手にし、そのジャージを最終日もチーム一丸、全力で守りに行ったが、大逆転を狙って動いた総合6位のマルク・ソレル(モビスター)の必死の走りにまさかの大逆転を許してしまう結果となった。その差は僅か4秒、昨年に続き今年も一桁秒差での僅差の壮絶バトルで幕を閉じた。
第7ステージ
S.イェーツは狙い通り動いた。14㎞に渡る頂上ゴールまでの長い上りで総合リーダーにルイス・レオン・サンチェス(アスタナ)がまず脱落、そして総合優勝を狙っていたジュリアン・アラフィリップ(クイックステップ・フロアーズ)も苦悶の表情を浮かべると、残り4㎞でステージ勝利と総合リーダーの座を賭けてアタックを仕掛ける。それに追走を仕掛けられたのはヨン・イザギーレ(バーレーン・メリダ)とディラン・テウンス(BMC)だけだった。ヨンとのマッチレースになってからは駆け引きが続いたが、残り2㎞でアタックを決めるとそのままゴールラインまで独走で駆け抜けた。一発狙っていた男はその才能をいかんなく見せつけステージ勝利を獲得、さらには一気に総合でもボーナスタイムを獲得して首位に躍り出た。粘ってステージ3位に入ったヨン・イザギーレが総合でも2位にジャンプアップ、さらには兄弟のゴルカ・イザギーレ(バーレーン・メリダ)が総合で3位とバーレーン・メリダにとっては最高の形となった。
「きつかったね、こんなにも直線がないステージがあるんだね。僕は普段攻めるタイプではないんだけど、でも今日は攻めなきゃならない日だったんだ。ステージ優勝を狙えば、タイム的にも総合順位がついてくると思っていたよ。正直アタックした後、後方集団でで何が起きていたかはまったくわからなかったよ。自分の勝負に徹していたからね。マイヨ・ジョーヌは格別だね!」サイモンは淡々と語った。
チームスカイはポエルスをすでに欠いている中でもう一人のエースセルジオ・エナオ(チームスカイ)に期待がかかったが、頂上ゴールバトルで撃沈、いいところなく終わった。
パリ~ニース第7ステージ
1位 サイモン・イェーツ(ミッチェルトン・スコット) 5h02”54”
2位 ディラン・テウンス(BMC) +08”
3位 ヨン・イザギーレ(バーレーン・メリダ)
4位 ゴルカ・イザギーレ(バーレーン・メリダ) +13”
5位 ティム・ウェレンス(ロット・ソウダル)
パリ~ニース総合順位
1位 サイモン・イェーツ(ミッチェルトン・スコット) 27h29”02”
2位 ヨン・イザギーレ(バーレーン・メリダ) +11”
3位 ゴルカ・イザギーレ(バーレーン・メリダ) +12”
4位 ティム・ウェレンス(ロット・ソウダル) +13”
5位 ディラン・テウンス(BMC) +27”
ステージ8
混沌とするステージは、間違いなくこの最終ステージで大逆転を狙うものが出ると予想された。しかしそれが誰になるのか、その一転に注目が集まる中、まずはミッチェルトン・スコット崩しが展開する。僅か110㎞のステージながら、攻めどころ満載のステージはここから激しく動くこととなる。
先行するオマール・フライレ(アスタナ)を追いソレルとデビ・デ・ラ・クルス(チームスカイ)が集団から飛び出していくが、仕掛けが早かったこともありそれ以外のライバルたちは傍観する。S.イェーツも動きたいが、アシストを削られた上に自らも厳しいマークにさらされ動くことができない。
フライレに追いつき3人体制となった先頭集団はバーチャルでソレルが総合首位となったまま逃げ続ける。スペイン3人組とはなったが目的はバラバラ、総合を狙うソレルに対してステージが取りたいフライレとデ・ラ・クルスはうまく協調体制が取り切れない。そうなればソレルは孤軍奮闘に近い状態で長時間にわたり先頭を引くこととなる。
それに対して追走ではS.イェーツが頂上を超えてからのダウンヒルゴールでこちらも逆転を狙う、ティム・ウェレンス(ロット・ソウダル)、ディラン・テウンス(BMC)、ゴルカとヨン・イザギーレ(バーレーン・メリダ)ら総合2位から5位までのライバルたちに遅れをとってしまい万事休す化に思われた。しかしここでなんとゴルカとヨンが兄弟で落車、これで再び運がS.イェーツに味方をする。猛烈な追走を仕掛けるゴルカとヨンに喰らいつくことにより、なんとウェレンスらの集団に追いつくことに成功、さらには総合優勝を守り切ることまで視野に入ってきたのだ。
しかし総合逆転優勝を狙っていたウェレンスとテウンスにとってはS.イェーツの集団復帰はモチベーションが落ちる材料でしかなかった。先頭では頭を大きく左右に振りながらソレルが苦悶の表情を浮かべて必死の走りを見せ、最後はデ・ラ・クルスがステージ勝利、フライレが2位、そしてソレルが3位でボーナスタイムも獲得した。そしてバーチャルでかなり際どいタイム差で推移していた後続集団は、ゴールを前にステージ4位をめぐる駆け引きに入ってしまう。これで勝負あり、S.イェーツは逆転されたことを理解し、ゴールでがっくりとうなだれた。しかしそれでもゴルカとヨンに集団に引き戻してもらえなければ総合2位どころか7位まで順位を落としていた可能性もあっただけに、これで良しとせざるを得ない結果となった。
「コンタドールがここでやったことを頭の中でイメージしていたんだよ。彼の大ファンだったし、彼みたいに走りたいと思ったんだ。何とかステージ勝利を狙えればとは思っていたけど、結果的に大逆転で総合優勝にも手が届いたね。でも本当は表彰台を意識していたんで、まさかその中央に立てるとは思ってもいなかったよ。」ソレルの表情が緩んだ。
「ソレルがアタックしたときは早すぎると思ったし、それにライバルたちに囲まれていたからね。もう最後は脚がなかったよ。強い者が勝つのがレース、ソレルのほうが僕よりも強かったということだよ。僕もようやく総合を狙える力がついてきたんだ、今回の結果は自信につながるよ。」サイモンは落胆しながらも結果に自信をつけたようだ。
イザギーレ兄弟はそれぞれゴルカが総合3位、ヨンが総合4位となった。またウェレンスも総合5位となり、ステージレースでの適性が一過性のものではないことを改めて見せつけた。思わぬ結末もまたレース、ソレルの大逆転勝利という最後まで見応え十分な大会となった。
パリ~ニース第8ステージ
1位 ダビ・デ・ラ・クルス(チームスカイ) 2h53’06”
2位 オマール・フライレ(アスタナ)
3位 マルク・ソレル(モビスター) +03”
4位 パトリック・コンラッド(ボーラ・ハンスグロエ) +38”
5位 ティム・ウェレンス(ロット・ソウダル)
パリ~ニース総合順位
優勝 マルク・ソレル(モビスター) 30h22’41”
2位 サイモン・イェーツ(ミッチェルトン・スコット) +04”
3位 ゴルカ・イザギーレ(バーレーン・メリダ) +14”
4位 ヨン・イザギーレ(バーレーン・メリダ) +16”
5位 ティム・ウェレンス(ロット・ソウダル)
H.Moulinette