どうなるUCI改革?UCI会長選挙でラパルシェン新会長誕生、ASOらフレンチ・コネクションがクックソンの再選を阻む!早くも世界選手権のチームTT削減を宣言、その手腕は果たして…

僅か4年、UCI改革道半ばでの交代劇となった。現在行われている世界選手権、それと同時に自転車界にとっては、極めて重要なUCI会長選挙決定となった。結果はフランス人のダビ・ラパルシェンが37対8の圧倒的票を集めてイギリスのブライアン・クックソンの再戦を阻止したのだ。新会長誕生は果たしてどのようにこれからの自転車界を導いていくのだろうか。
クックソン元会長は、腐敗しきったマックエイド元会長との選挙で勝利し、”腐敗を正し、信頼を取り戻す”ことを掲げてこの4年間職務を全うしてきた。しかし旧態依然の体質が蔓延、それが足かせとなり思ったように改革は進まなかった。そのことでまるで何もやっていないかのような批判に晒されながらも我慢強く説得交渉などを続け、幾つもの改革を行ってきた。しかしアンチ・ドーピングを掲げておきながらお膝元のチームスカイ内でのブラッドリー・ウィギンスのTUE(治療目的例外的使用許可)の悪用疑惑が取り沙汰されたことで一気に求心力を失っていった。
またツール・ド・フランスなど多くのレース主催者であるASOとは度々激突、ASOがUCI抜きで勝手にルール変更を宣言したり、またわUCI主催のワールドツアーレースからの離脱をちらつかせるなど、その関係は犬猿の仲となった。さらに現在ASOが独占している放映権収益を各チームへ分配すべきと、何度となくASOとぶつかってきた。業界にも苦言を呈し、あくまでも選手たち優先というスタンスが基本線となっていた。

『圧勝で新会長となったラパルシェン ©Yamit 』
しかし今回ラパルシェンが圧勝したことで、UCI改革の行く先が一気に不透明となった。ASOの息のかかった人物とも言われており、また今回そのフレンチ・コネクションの根回しがこの圧勝に繋がったとすでに囁かれており、ASOにとっては目の上のたんこぶだったクックソン降ろしが成功した形となった。またクックソンに引きずり降ろされたマックエイド元会長がラパルシェンへの票誘導をしたことも表沙汰になっており、早くも不安要素だらけといえるだろう。
根回しがあったにせよ、ではなぜラパルシェンが勝利することが出来たのだろう。その1つは政治力という資質と言えるだろう。トップに経つ人間はしたに従える人間をいかにうまく束ね、そこに対して自らの言葉に説得力をもたせるかが重要だ。その点でラパルシェンのコミュニケーション能力は非常に高かったのに対して、クックソンはうまくはなかった。また旧体制化の幹部クラスの多くがクックソンに馴染めず、そのためクックソンは腹心を中心とした運営を余儀なくされたことも求心力低下に繋がった。
そしてもう一つはクックソンの改革が痛みを伴ったことへの反発もあった。費用の増加が様々なシーンで発生したが、各国のフェデレーションにとっては自らの利益につながるものが少なくうま味が少なかったのだ。それによりより利益還元を期待できるラパーションに票が流れたのだ。
敗北したクックソンは、「これが政治というものだよ。正直これほどの大差がつくとは思っていなかったし、4年間進めてきた改革を道半ばで手放さなくなることは残念だよ。でも勝利したララパルシェンには頑張って欲しいと思うよ。ただ一つ、力を持っているASOの飼い犬にだけはなってほしくない。ASOは独占企業となりつつあり、また業界の思惑にもかんたんに染まる性質を持っている。現場の声(チームや選手たちの声)を聞かないようなUCIにはならないで欲しい。ラパルシェンにとってはASOの舵取りこそが最大のハードルになると思う。」クックソンはラパルシェンへメッセージを残した。
ラパルシェンは、「各国の代表たちは変化を求めていたんだ。」としているが、その手腕は未知数だ。すでに2020年度での世界選手権でのチームTT打ち切りを宣言するなど動き出したらパーション体制、ラパルシェンが、UCIの実権を握りたい一部やASOらに担ぎ出されたただのお飾りなのか、それとも勇気ある決断ができる立派な指示者なのか、まずはその手腕の様子見となりそうだ。
~ラパルシェン
「すべての大陸からの指示票が入ったことは、僕がすべての大陸を代表する立場になったということだ。僕がまず取り組まなければならないのは、引き続き自転車会への信頼回復だ。選手あっての競技であるということを忘れること無く、また昨今話題になっているメカニカルドーピングへの対処も非常に重要といえるだろう。これに関しては2018年シーズン開幕までに何らかの措置を講じたいと思っている。もう2度とアームストロング問題のようなスキャンダルはいらないからね。5分で破壊されたものに対して復興には20年かかるなどというのはもう懲り懲りだからね。」
「収益分配はASOと話し合っていかねばならないだろう。それに自転車の放映権の値上げも必要だろう。そうすればASOも潤い、さらに分配を得ることが出来るだろう。現状のスポンサースポーツには限界がある、ビジネスモデルとしてのサイクリングを再考しなければならないだろう。また男子に比べてまだまだ認知度も競技人口も少ない女子レースをよりプロモーションしていかねばならないだろう。女子レースでのTV放映も含め、もっと注目度を上げる必要がある。また女子選手たちの収入がきちんと確保されているかも議論していかねばならない。」
「僕はASOといい関係を築けていることが、今後改革にとって大きな役割を果たすだろうと考えている。だが僕は彼らの手駒ではないことは言っておく。」
「世界選手権はすべての大陸で持ち回りでもいいだろう。それにワールドツアーレースが多すぎるし、日程が近すぎたりかぶるのもよろしくない。選手の分散派遣などチームへの資金面での負担も大き伊野は問題だ。またレース界にはサガンのようなヒーローがもっと必要なんだよ。我々の予想を超えてる活躍をし、世界中のファンを熱狂させるようなそんな存在、アイコンとなれるような選手がもっと出てきてほしいね。」
interview:Yamit
H.Moulinette