キャノンデール・ドラパックが存続の危機:チームはすでに全選手に移籍容認を伝達、エースのウランはチームに2週間の猶予、現所システムの視聴料収益の分配の早期実現の必要性

来シーズンへ向けての動きが活発化する中で、予想外のチームが苦境に立たされている。来シーズン以降の新スポンサーが決定的だったキャノンデール・ドラパックだが、ここへ来て一転、そのスポンサー契約が白紙に戻り新たなスポンサーを見つけられなければ今シーズン限りでの解散が現実味を帯びてきた。すでにチームはブエルタ開催中であるにも関わらず、全選手とスタッフに他チームとの交渉を解禁、これはよほど追い詰められている状況といえるだろう。

『ウラン流出となるのか? ©Tim D Waele 』
ツール・ド・フランスではクリス・フルーム(チームスカイ)に次ぐ総合2位に入ったリゴベルト・ウランにはすでに多くのチームがアプローチを掛けているが、ウラン自身はあと2週間チームに猶予を与えたいとしている。ウランはすでにチームと新たに3年契約を結んでいるが、状況次第ではそれを破棄しての移籍となりそうだ。またもともと今シーズン限りで契約が切れる予定だったマイケル・ウッズがブエルタで現在総合8位と大躍進、来シーズンチームがなくなるのであれば、間違いなく他チームへと移籍となるだろう。
「現状のスポンサー各社(キャノンデール、ドラパック、オース、POC)は来シーズン以降も活動することで合意しているが、それでは決定的に資金がたらず、UCI規定が定める保証金などが用意できない状態だ。その為各選手とスタッフには自由の権利を与えた。ただもしチーム存続が確定すれば、優先的に契約を残している元スタッフや選手は雇用する予定だ。」
現状では新たにチームがスポンサーを見つけても、主力選手たちの流出が止められなければ、スポンサーが満足している結果を2018年度実現できる可能性は低い。それを考えるとキャノンデール・ドラパックの置かれている現状はかなり苦しいものだ。

『新たな柱となりうるウッズも移籍になるか ©Tim D Waele 』
昨シーズンはランプレ・メリダが分裂、その片割れとなった現UAEチームエミレーツが、やはりスポンサー契約が突如白紙になったことで苦境に立たされたが、最後の最後で中東マネーがそれを救出、そして想像を超える活躍にスポンサーが来シーズンへ向け大幅な戦力補強に動いたというケースも有る。ただこれは様々な思惑が予想以上にうまく回った極めて稀なケースであり、キャノンデール・ドラパックは安易な皮算用は出来ない状況だ。
毎年のように聞かれるこのチーム存続の危機、やはり多くのレース主催者であるASOからの放映権分配はこれからの自転車界を考えた時には絶対に必要だろう。一人勝ち状態で札束勘定をしているASOは放映権を各チームへと分散することを拒んでおり、それを要望したUCIに対しワールドツアー離脱を示唆するなど、まるで脅迫まがいのスタンスを未だに変えていない。ASOが抜ければワールドツアーはその存在意義を失いかねないのは事実だが、だからといってASOの言いなりでASOの懐具合だけが潤う現状は大問題だろう。
しかしASOが考えなければならないのは、選手あってこそのロードレースであり、チームの撤退縮小が相次げば、最終的には自らの首を絞めることになるということだ。
何とかキャノンデール・ドラパックの継続を願うが、それと同時に放映権問題はもう一度UCIと選手会がきっちりと議論のまな板の上に上げなければならないだろう。その上できっちりとASOと話し合って結論を出していくことが求められる。
H.Moulinette