ブエルタ・ア・エスパーニャ第9ステージ:名ばかりの平坦ステージは20%超えの頂上ゴール、制したのは王者フルーム!盤石の強さを見せライバルたちを圧倒

ゴール前にそびえ立つ勾配20%の頂上ゴール、しかしブエルタではこのステージを平坦ステージと呼ぶ。最後の最後、一発勝負のゴール勝負に持ち込まれたこのステージ、様々な駆け引きも見られたが、それを一撃で破壊したのは総合リーダーのクリス・フルーム(チームスカイ)だった。全てのライバルを置き去りにしてガッツポーズを決めての単独ゴール、最も難しいと言われているツール・ド・フランスとブエルタ・ア・エスパーニャのダブルツールが現実味を帯びてきた。

『攻め続けるスカイ、そしてライバルたち ©Tim D Waele 』
「勝負は残り1kmを切ってから」、間違いなくフルームはこの日のステージ優勝を狙っていた。ツール・ド・フランスもステージ優勝無いままに総合優勝を果たし、このブエルタでもライバルを圧倒する走りを見せ続けるも先行の逃げがいる展開が多かっただけに、このチャンスを物にすべくライバルたちの動きを見ながら自分の間合いになりまでじっくりと待ち続けた。ミケル・ニエベ(チームスカイ)の強力なアシストが、最後の上りに入ってから発生したロメイン・バルデ(AG2R)やリチャード・カラパズ(モビスター)らの切れ味鋭いアタックをじわじわと追い詰め吸収していく。

『フルームが攻めの走りで独走ゴール ©Tim D Waele 』
そして満を持してフルームがアタックを決めると、一気に突き放しにかかる。かろうじてエステバン・チャベス(オリカ・スコット)、マイケル・ウッズ(キャノンデール・ドラパック)が追いすがるが、躊躇なく踏み続ける。一度はチャベスが追いつくも再び加速をすると、もうそれに追いつくだけの力はチャベスに残っていなかった。
そのまま渾身のガッツポーズを決めてゴール、全ての総合ライバルにタイム差をつける会心の勝利となった。つけたタイム差はさほど大きくはないが、しかけるタイミングと、そしてあの加速を目の当たりにしたライバルへの精神的なダメージは大きいといえるだろう。

『ステージトップ3の顔ぶれ ©Tim D Waele 』
「残り数百メートルに全力を注ぎ込んだんだよ。ライバルたちに僕を捉えるだけの力は残っていないと判断していたからね。ようやく勝利できてホッとしているよ。チームは最高のリズムでペースを整えてくれたね。序盤戦を終えて、これ以上の順位はないよね。このレースをターゲットにしてきたし今のところすべてが順調だよ。」フルームは笑顔で語った。
チャベスが2位、そしてウッズが3位に入った。またバルギルが強制送還となったチームサンウェブは、エースのウィルコ・ケルダーマン、サム・オーメン共にトップ10フィニッシュ、チーム自体は好調さを維持し続けている。

『名物のモーモー看板現る ©Tim D Waele 』
このステージではスポンサー探しが難航、チーム解体の危機と報じられているキャノンデール・ドラパックが、アピールの意味を込めて素晴らしいチーム力を披露、レース後半にかけて主導権を握って攻め続けた。また今大会前までまったく誰も注目してこなかったウッズがフルームに喰らいつき総合でも8位へとジャンプアップ、猛アピールはまだまだ続きそうだ。
この日のステージは10人の逃げから始まり、マルク・ソレル(モビスター)とトビアス・ラドヴィグソン(FDJ)が最後の頂上決戦まで逃げ続けた。しかし総合勢が動いたこの日は、逃げ切りにチャンスは与えられなかった。そして最後はフルームの一撃で勝負あり、まるで勝負どころのような派手なステージとなった。

『フルームのダブルツールが現実味 ©Tim D Waele 』
ブエルタ・ア・エスパーニャ第9ステージ順位
1位 クリス・フルーム(チームスカイ) 4h07’13”
2位 エステバン・チャベス(オリカ・スコット) +04”
3位 マイケル・ウッズ(キャノンデール・ドラパック) +05”
4位 ウィルコ・ケルダーマン(チームサンウェブ) +08”
5位 イルヌール・ザッカリン(カチューシャ・アルペシン)
6位 アルベルト・コンタドール(トレック・セガフレド) +12”
7位 ダビ・デ・ラ・クルス(クイックステップ・フロアーズ)
8位 サム・オーメン(チームサンウェブ)
9位 ニコラス・ロッシュ(BMC) +14”
10位 ヴィンチェンツォ・ニーバリ(バーレーン・メリダ)
ブエルタ・ア・エスパーニャ総合順位
1位 クリス・フルーム(チームスカイ) 36h33’16”
2位 エステバン・チャベス(オリカ・スコット) +36”
3位 ニコラス・ロッシュ(BMC) +1’05”
4位 ヴィンチェンツォ・ニーバリ(バーレーン・メリダ) +1’17”
5位 ティージェイ・ヴァン・ガーデレン(BMC) +1’27”
6位 ダビ・デ・ラ・クルス(クイックステップ・フロアーズ) +1’30”
7位 ファビオ・アルー(アスタナ) +1’33”
8位 マイケル・ウッズ(キャノンデール・ドラパック) +1’52”
9位 アダム・イェーツ(オリカ・スコット) +1’55”
10位 イルヌール・ザッカリン(カチューシャ・アルペシン) +2’15”
H.Moulinette