イル・ロンバルディア2025:史上最強男ポガチャルが史上初の同一モニュメント5連覇達成!またしても独走で圧倒的な勝利!メルクス以来の年間モニュメント3勝!エヴァネポエルまたも2位

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©Il Lombardia

強者だけが歴史にその名を刻み続けることができる。史上最強の呼び声高いタデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツ)は世界選手権を制し、ヨーロッパ選手権を制し、イル・ロンバルディアの前哨戦を制し、そして秋のクラシック、年間5大モニュメント最後のイル・ロンバルディアも独走で勝利を掴み取った。これでイル・ロンバルディアは大会5連覇となり、同一モニュメント5連勝という歴史上誰も成し得なかった金字塔を打ち立てた。世界チャンピオンジャージを着用してのイル・ロンバルディア2勝目も史上初となり、またこの勝利で5大モニュメントの内年間3勝となり、これは偉大なエディ・メルクスが1971年に打ち立てた記録に並ぶこととなった。イル・ロンバルディアの通算5勝目も、伝説のファウスト・コッピに並ぶ最多記録(コッピはイル・ロンバルディア4連覇)となった。これでモニュメントの勝利数も通算10勝目となり、これはメルクスの19勝、ロジャー・デ・フラメニックの11勝に続く、単独3位となった。まだ27歳のポガチャルは、シーズンの締めくくりもまたしても記録づくめでシーズンを盛り上げて見せた。

あまりにも強すぎるポガチャルがいなければ、間違いなく世代最強と呼ばれているのはレムコ・エヴァネポエル(ソウダル・クイックステップ)だろう。世界選手権でも、ヨーロッパ選手権でもポガチャルの独走を追う立場となったが、イル・ロンバルディアでもまたしてもポガチャルの独走をひたすら追う結果となった。途中まではマイケル・ストーラー(チュードル・プロサイクリング)と共にポガチャルを追走していたが、得意のTTを活かして最後は単独での2位となった。またエヴァネポエルには置き去りにされたが、ストーラーは最後まで粘りの走りでこちらも単独で3位ゴール、驚きのモニュメント表彰台を確保した。

241kmの秋のクラシックレースは序盤からフィリッポ・ガンナ(イネオス・グレナディアス)、クイン・シモンス(リドル・トレック)ら14名が素晴らしい走りを見せる。その背後ではこの日の優勝候補の一角、トム・ピドコック(Q36.5プロサイクリング)が相次いで不運に見舞われる。落車をしたのちにメカトラ見見舞われ、チームメイトの牽引で何とか集団復帰を果たすが、序盤に大きく力を使わされてしまうこととなった。

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この日のメイン集団は当然のようにUAEチームエミレーツがコントロール、そのため僅か3分ほどまでしかアドバンテージを得られない逃げ集団は、レース後半に差し掛かるとここでアタックの応酬となる。残り80㎞を残しシモンスが独走態勢となり、残りの逃げのメンバーは順番に人数が減ったメイン集団に吸収されていく。好調なシモンスはタイム差を4分ほどまで広げたが徐々に縮まっていくと、メイン集団も勝負どころのパッソ・ディ・ガンダの上りで動き出す。まずは今シーズン限りで引退のラファル・マイカ(UAEチームエミレーツ)が渾身のアシストをする。アシストが終わるとポガチャルがそれに感謝の意を込めて手を挙げ、そして残り38㎞で最強アシストのジェイ・ヴァイン(UAEチームエミレーツ)が猛烈な加速を始める。

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このアシストによりメイン集団は完全崩壊、ポガチャル、アイザック・デル・トロ(UAEチームエミレーツ、エヴァネポエル、ストーラー、ポール・セイクサス(デカスロンAG2Rラモンディアル)に絞られてしまう。するとヴァインがアシストを終えるタイミングでそのまま残り36.6㎞、津にポガチャルがアタックを仕掛ける。ポガチャルにしては珍しく腰を上げてダンシングをしながら加速していくが、これに誰もついていこうとしない。エヴァネポエルも完全無反応でポガチャルを見送った。

ここから1㎞10秒のペースで先頭のシモンスとのタイム差を縮めながら、エヴァネポエルには10秒のタイム差をつけていくと、残り34.3㎞でシモンスを捉え、残り33.8㎞でシモンスを置き去りに単独先頭に躍り出ると、そのまま頂上を先頭通過しテクニカルなダウンヒルへと入っていく。その背後ではエヴァネポエルが淡々と自ら引き続けると、まずはセクシアス、そしてデル・トロが順番に脱落していく。更には頂上手前でシモンスを捉えると、ストーラーも加え3人で頂上を通過、ポガチャルとの追いかけっこが開始される。

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しかし世界TTではエヴァネポエルに敗れたとはいえ世界トップクラスの独走力を誇るポガチャルとのタイム差は1分20秒前後で推移し続ける。代わりにストーラーとシモンスはここで後れを取り、それぞれが単独でゴールを目指す。すると最後の上りでエヴァネポエルがアクシデントに見舞われる。カメラマンが乗ったバイクと先導バイクが沿道の観衆の多さに遮られ停止、それにエヴァネポエルは巻き込まれ減速を余儀なくされた。何とか脚をつくことなくバイクを回避したが、この段階でポガチャルとの差は1分50秒弱にまで広がり、エヴァネポエルの表情から前を追うというモチベーションが消えた。追いつけなくとも最後まで戦う姿勢を見せていたが、これで2位狙いへと明確にシフトすることとなった。

ポガチャルはゴールを前に何度もカメラに対して笑顔を見せると、ゴールでは5連覇の勝利をアピール、チームも今シーズン93勝目を記録づくめのモニュメントで飾った。エヴァネポエルも笑顔で2位ゴール、ゴール前には無線で今シーズン限りで去るソウダル・クイックステップのチームへ向け感謝の言葉を伝えた。その背後ではこちらも納得の笑顔でストーラーがゴール、表彰台の一角を手にした。それに続いてシモンスが粘りの4位、こちらは敢闘賞を獲得した。

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タデイ・ポガチャル(優勝)
「特別感は別にないよ。でも5連覇したことを考えると、このコースが本当に僕向けなんだと心底思うよ。そしてとにかく僕は最高のチームメイトに恵まれていること、それがこうした結果に繋がっているよ。レースを支配し、上りでのペースアップ、そして追走を抑え込む、すべてがあってこその勝利だよ。プロ7年目だけど、毎年このシーズンがベストだったと言ってるけど、今年も今年がベストだったと言えるよ。」

レムコ・エヴァネポエル(2位)
「全力を出し尽くしたよ。でもまた”最強の男”に阻まれたよ。またも2位だったけど、でも納得しているよ。いい形でシーズンを終えられたと思うね。とにかく上りでUAEがペースを上げた時点で、ポガチャルのレースになったよ。なにも文句はないよ、ただポガチャルが強かっただけだよ。でも3週続けてポガチャルに負けての2位は悔しいよ。これでこのチームでは最後だけど、この7年間を胸に新しいチームで全力を尽くすよ。」

マイケル・ストーラー(3位)
「全てに感謝しかないよ。チームもこの結果を喜んでくれるだろうね。きっと留守電にも大量に祝福のメッセージが入っていると思うよ。エヴァネポエルについていけたらよかったんだけど、彼はあの姿勢でグイグイ行くんだ。何とか踏ん張って各コーナーの立ち上がりでスプリントしていたけど無理だったね。普段はもっと冷静に下るんだけど、今日だけは自分を限界まで追い込み続けたよ。

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イル・ロンバルディア順位
1位 タデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツ)   5h45’53”
2位 レムコ・エヴァネポエル(ソウダル・クイックステップ)   +1’48”
3位 マイケル・ストーラー(チュードル・プロサイクリング)   +3’14”
4位 クイン・シモンス(リドル・トレック)   +3’39”
5位 アイザック・デル・トロ(UAEチームエミレーツ)   +4’16”
6位 トム・ピドコック(Q36.5プロサイクリング)
7位 ポール・セイクサス(デカスロンAG2Rラモンディアル)
8位 イーガン・ベルナル(イネオス・グレナディアス)
9位 ジェイ・ヴァイン(UAEチームエミレーツ)   +4’18”
10位 キアン・アイデブルックス(ヴィズマ・リースアバイク)   +4’30”

H.Moulinette