SENSAH:第4のコンポーネント勢力が日本上陸、元スラム技術者たちが生み出す新たな1ページ!すでに世界のレースシーンでも結果を残す!コスパに優れた魅力ある選択肢
世界のコンポーネント事情は、一昔前に比べ大手しかいない選択肢に乏しい状況が続いている。シマノ、カンパニョーロ、スラムの三社に続くメーカーは乏しく、マイクロシフトが一時第4の勢力になるかと思われたが、結局それもしりすぼみになってしまった。そこで新たに台頭してきたのが、元スラムの技術者らが携わっているSENSAH(センサー)だ。
世界のスポーツサイクルの8割を製造する中国、その中でもOEMで培った技術を活かし、自社ブランドを立ち上げる企業が増えてきている。クオリティーコントロールが懸念材料とされてきたが、各自自社ブランドを立ち上げたことで、クオリティーコントロールは飛躍的に向上し、それまでの懸念もかなり払拭された。そんな昨今台頭著しい中国の自転車産業の中で生まれたのがSENSAHであり、すでにヨーロッパのプロチームが使用し、主要レースで結果も残すなど、活躍をし結果を残している。
そんなSENSAHがついに日本上陸を果たした。今までもネット経由での購入は可能ではあったが、しっかりと代理店ができたことで、アフターサービスなどの対応も可能となったのはありがたいところだ。そもそもSENSAHはコストパフォーマンスに優れている。従来のメーカーのコンポーネントはかなり高額になってきているうえに、いろいろと制約も多く、コンポーネント載せ替えとなるとかなり財布が苦しいところだ。SENSAHは基本スラムと互換性があり、リアスプロケットはシマノとも互換性がある。そして価格がリーズナブルであり、「試してみたい」と思わせてくれるのだ。
そんなSENSAHの主力コンポがロードレース用のEMPIRE PRO(エンパイアープロ)だ。12速で、さらにシングルレバーのダブルタップという見た目のシンプルさと使い勝手の良さは、一度使うと病みつきになる。スラムと同じダブルタップ方式でありながら、レバーは一つ、ブレーキレバーがシフターにもなっているのだ。当然メリットは軽いことと、見た目のすっきり感だ。そしてブラケットも握りやすく、デザインは独創的とは言えないが、レーシーなイメージでかなり洗練されたすっきりした印象を与える。位置づけとしてはアルテグラと105の間ぐらいとメーカー自身が正直に話すあたり、好感が持てる。レースで使えるタフさと耐久性を持たせて備えており、ホビーレーサーにとっては魅力ある存在となりそうだ。
フロントシングルの11速のグラベル専用コンポSRX PROがある。ランドナーとロードレーサー、MTBまでもが入り混じったようなグラベルロードだが、基本は旅する自転車だ。荷物も積むことも考慮され、MTBのようなギア比でありながら、変速周りはロードと同じというのが基本だ。まだ選択肢が少なく高価なグラベル用コンポにおいて、SRX PROの存在はうれしいところだ。
それ以外にも11速のEMPIRE(エンパイアー)、そしてEMPIRE PRO にもフロントシングルが用意されており、選択肢に幅は広い。
基本左右のシフターと前後変速機のセットが用意されており、古い自転車などのレストアにもうってつけの、7~10速用もあり、シフターも単品販売されている。レストアやエントリーユーザー向けのバイクや小径車などでのアップグレードにもぴったりだ。この辺りはあまり選択肢がなかったジャンルでもあり、正直ありがたい。
クランクの設定はなく、ユーザーが好きなクランクを使う設定となっているほか、スプロケットは用意はされているものの自社生産ではなくOEM生産なので、ここもユーザー側で自由にシマノ製やスラム製などを選択するのもいいだろう。
難点を挙げるとすれば調整だろう。そもそもスラムがかなりピーキーな調整を要求されるのがあるように、その部分までスラムの系譜を引き継いでいるところはある。ただ慣れの問題の範疇ではある。11速のEMPIREではフロントディレーラーにトリム機能がなく酷評されたが(スラム使用者にとってはさほど問題ではなかったが)、12速のEMPIRE PROではその辺りも改善されており、今現在更なるコンポーネントの開発も進んでおり、今後が非常に楽しみだ。
なかなかサードパーティーや主力メーカー以外の選択肢がなくなってきている中で、こうしたカスタマイズの楽しみを与えてくれるコンポーネントは貴重といえるだろう。サイクリングタイムでは今後SENSAHの様々なコンポーネンツの長期レビューを行っていく予定なので楽しみにしておいてほしい。
SENSAH の掲げる言葉はShifted Thinking。つまり考え方をシフトさせていくという意味でもある。さらにロゴではShift Kingが色が変えてあり、シフトキング、さらなる高みを目指すことを宣言している。大陸性であることなどの先入観にとらわれず、実際に使ってその実力とコスパを体感してほしい。
H.Moulinette