キッテルがカチューシャ・アルペシンとの契約を解除、実質引退に近い休業へ、「燃え尽きてしまったんだ・・・」
「カチューシャ・アルペシンへの移籍は果たして成功だったのだのだろうか・・・」そう自問自答し続けた男がチームとの契約を解除、自転車競技から離れることを決意した。世代最強と呼ばれ、勝利を量産してきた男の早すぎる決断に、驚きの声が上がっている。
ルフェーブル監督のもと、クイックステップで勝利を量産するも、チームがフェルナンド・ガヴィリア(現UAEチームエミレーツ)を獲得したことで、絶対的なスプリントエースではなくなることに不満を示しカチューシャ・アルペシンへと移籍を決めたのが2シーズン前だった。しかしカチューシャ・アルペシン加入直後から、スプリント勝負に入る前の隊列、トレインの不十分さに不満をあらわにすることが多く、さらには「クイックステップのトレインの素晴らしさが今はわかる」とまでチームへの不満を口にしたことで徐々にチーム内でも孤立してしまった。
もともとメンタルが強いわけではなく、さらには体調も波があったが、それでもここ2シーズン(実質1シーズン半)あれだけの速さを持ちながら満足に勝利できなかった事で、自分自身の中で限界という壁にぶち当たってしまったのかもしれない。
「僕の方からカチューシャ・アルペシンに契約の即時解除を求めて認めてもらったんだ。僕の中で僕自身が人としてどこへ向かうべきか、選手としてどこへ向かうべきかを見つめなおす時なんだ。サイクリングは大好きだし、いまでも情熱はあるよ。でもそこで成功するには何が自分に要求されるかも知っているよ。皆人間誰もが強みと弱みを持っている。それと向き合うことこそが成功への道なんだよ。この2か月間、燃え尽きてしまっていたんだ。今の状態ではこの世界最高のレベルではトレインも組めなければ勝利もできない。だから今一度、休息が必要なんだと感じたんだ。もう一度自分のこれからと、自分の目標を見つめなおそうと思うんだ。」
「チームには感謝しているんだ。思ったような結果を残せなかったことは申し訳ないと思っている。今回の決断は経験則に基づいているよ。人生の岐路はリスクもあるけど常に新しい挑戦と可能性に繋がっていると思う。これからは人生の喜びを念頭に置いて、新しい道を模索していくよ。正直これから何が待ち構えているのか楽しみなんだ。またいつか自転車に乗りたいと思うし、レースで勝利したいと思う。その為にも準備は怠らないつもりだよ。今この瞬間が僕にとって最大の挑戦だよ。そしてそれときちんと向き合うつもりだよ。」キッテルはチームへの感謝を口にしながらも、自らの人生の新たな道へ踏み出すことを決断した。
チームも今回の決断を尊重しており、「頑張ってほしい」とコメントを出している。また前所属チームのルフェーブル監督は「彼はガラスのハートの持ち主なんだ。今でも彼が最速のスプリンターだと思っている。燃え尽きたなんて信じられない。いつかまた復活してくれると信じている。」とコメントしている。
世代最速のキッテル、まだ本引退には「速すぎる」。
H.Moulinette