シクロ界から来た最強の男、クラシックまで制したマシュー・ファン・デル・ポエルの凄さ、強豪チームからオファー殺到もシクロ優先で契約満期まで移籍しないと明言も
今シーズンはここ数年シクロクロス界を引っ張ってきた2強が揃ってロード本格参戦とあって注目が集まっていた。ワウト・ファン・アールト(ジャンボ・ヴィズマ)とマシュー・ファン・デル・ポエル(コレンドン・サーカス)は、飛び級で10代にもかかわらずから二人でエリートクラスのシクロ界を牽引、交互に世界王者になるなど、いつロードへのステップアップを果たすのかが常に話題となってきた。
今年のシクロクロスシーズンではファン・アールトが前倒しでのワールドツアー移籍に関して契約でもめ続けたこともあり、なかなか集中しきれないシーズンを送ったのに対し、ファン・デル・ポエルは絶好調を超える絶好調、出走したレースは世界選手権も含め1戦を除いて全て勝利するという離れ業をやってのけた。
そしてそのまま2人は休むことなくロードシーズン入りをしたのだ。UCIの裁定に救われる形でファン・アールトがワールドツアー入りしたのに対し、ファン・デル・ポエルは所属するコレンドン・サーカスがファン・デル・ポエルがロードシーズンを戦えるようにと彼のためにプロコンチネンタル登録をしたようなもの。メンバーを見ればその多くがシクロクロスを走っている選手という状況だ。チームはファン・デル・ポエルのためにワールドツアーチームへのステップアップも考えると話すなど、まさにファン・デル・ポエルのためにチームが存在しているような形だ。
ワールドツアー入りしたファン・アールトは問題なくすべてのレースに参加ができるものの、何度となく表彰台を獲得しているにもかかわらず優勝が出来ていない。それに対して招待枠での出場に望みをかけたファン・デル・ポエルは、主催者からの注目もあり次々とワイルドカードでの出場枠を獲得すると、ドワース・ドア・フランデーレン、ブラバンツ・パイルというクラシック2勝でキッチリと勝利を挙げ、さらになんとアムステルゴールドレースのモニュメントに匹敵するクラシックまで制覇、その地位を確固たるものとした。
ファン・デル・ポエルのロード適正は、昨年度オランダのロードナショなるチャンピオンになったことからも容易に想像がついた。また実は昨年度はMTBのクロスカントリーでもナショナルチャンピオンとなると、世界選手権でも銅メダルを獲得、すべての自転車競技において最強であることを示している。今シーズンも夏場以降はMTBのレースに出場することを予定しており、ロード最強を通り越えた、自転車競技最強を目指しているようだ。
すでに多くの強豪チームがファン・デル・ポエル獲得に関心を寄せているが、今現在の段階で2023年度まで契約が残っており、本人も「残念ながら2023年以降まで待ってもらうしかないね。」と口にするなど、チームへの感謝を示し今の段階での移籍などの憶測を一蹴した。
ファン・デル・ポエルは実は自転車サラブレッド一家、兄も自転車選手であるだけではなく、父親は元世界チャンピオンにクラシックレース勝者、母方の祖父はブエルタ・ア・エスパーニャ総合覇者でありツール・ド・フランスでも総合2位に入っているのだ。血筋の呪縛に押しつぶされてしまう選手も多い中で、着実にステップアップを果たしている男の行く先はいったいどこなのだろう。これからもマシュー・ファン・デル・ポエルという男から目が離せない。
H.Moulinette