シクロクロスとグラベルロードって何が違うの?昨今流行の「旅する自転車」として使える二つの車種の基本的違いとは?
世の中には似たようなものが違う名前で存在することがよくある。自転車界でも昨今「よく違いが判らない」と言われるのがシクロクロス車とグラベルロードの違いだ。何が違うのか、そのあたりを見ていこう。
ロードシーズンのオフのトレーニングとして始まったとされるシクロクロスは、どちらかといえばMTB寄りの物と言えるだろう。ポジションやジオメトリーもロードに比べバイクコントロール重視となっており、またブロックタイヤも細めのMTBといったところだ。それに対してグラベルロードはツーリングバイク寄りであり、ロードのポジションのバイクにディスクブレーキと太いタイヤをはかしたものと言える。
海外、特にヨーロッパではシクロクロスが一つの分野としてしっかりと確立しており、盛んにレースも行われる。シクロクロス専門のプロ選手も多く、特にベルギーでは”国技”ともいえるほどの熱狂ぶりだ。シクロクロスは1時間という時間制限で行われるオフロード周回コースレースであり、そのスピード感と自転車を担いでクリアしなければならない障害物があるなど、エンターテイメント性の高いものとなっている。またシクロクロスは近年ロードの第一線級でも活躍する強豪選手を多く輩出しており、その注目度は高い。その為シクロクロス専門ブランドも存在するなどシクロクロスは身近な競技であり車種と言えるだろう。
対してグラベルロードは比較的新しい呼び名だ。今でも旅する自転車の代名詞であるランドナー、スポルティフと呼ばれる自転車の現代版がグラベルロードと言えるだろう。キャリア用のダボがついたものも多く、悪路を長距離走るために生まれた機材と言えるだろう。昨今進むロードバイクのディスク化の中で、一番適材適所としてディスクが受け入れられている分野でもある。雨の日などの走行などでも制動力が落ちることがなく、安全面に考慮していると言えるだろう。またタイヤもファット化しており、MTBとほぼ同様のタイヤ幅の物も多い。ただし本格的なブロックタイヤではなく、セミスリックやそれにサイドブロックがついた程度の、いわゆる”ツーリングバイク用タイヤ”がほとんどだ。
最近では自転車が移動手段としてのみならず、旅の手段として認識される傾向にあり、その為競技用のロードレーサーではなく一つのツールとしてのグラベルロードの存在感が際立ってきている。これは過去に日本がランドナーとスポルティフの旅する自転車が一大ブームとなっていたこととも関係があるだろう。またキャリア用のダボがなくてもよいのであればシクロクロス車も同じようにツーリングに使用することもできる。ただジオメトリーがより短距離勝負の競技向けなものとなっており長距離用として作られたのではない。ただしトップチューブが短めに設定されていることが多いことからも、よりリラックスしたポジションが可能でもあるので、設定さえ出せれば長距離をこなしても問題はない。筆者もシクロクロスをツーリングバイクとして使っており、その使い勝手の良さからメインバイクとなっている。
グラベルロードとシクロクロス、新旧のオフロードも走れるドロップバーバイクは業界の多様性の一つの形であり、自転車での楽しみ方の一つの形を提案してくれるものと言えるだろう。最近では自転車で泊まれる宿も増えた。まずは自転車にまたがり旅に出てみてはいかがだろうか。
H.Moulinette