ASIA BIKE SHOW REPORT Vol.4:主催者が見る中国自転車界のこれから、世界の自転車生産の8割を担う大国の産業の未来とは
中国南京で行われた中国国内市場向けの展示会、アジアバイクショー、世界の自転車生産の8割を担う国としての現状と未来はどうなのか、主催者の目から見たその変化を聞いてみた。
今までOEMで培った技術をいかせるブランドが世界進出できるのか、との問いへの答えは「まだ時期尚早」だった。 「中国のブランドはどんどんとOEMで力をつけ、そして独自の設計をするなど、ここ数年で目覚ましい進化を遂げています。製品のクオリティも上がり、ヨーロッパ企業やアメリカ企業、日本企業のクオリティコントロールよりも厳しいクオリティーコントロールをしているところもあります。ただまだまだブランドとしては未成熟で、それらをどうやって売っていくかというところへの思慮がまだまだ足りません。どんなにいいものを作っても、それをきちんと相手にアピールできなければ、その良さを理解されることはありません。中国企業はまだ内需への対応のままで世界へとアピールできると思っている節があります。しかし我々がユーロバイクと提携し、その過程ではっきりと分かるのは、そのやり方では世界では通用しないということです。そこにはワールドスタンダードがあり、消費者がどのような商品を望み、それに対してどのような説明を与えていけるのかというところへの気配りや配慮がまだまだ不足しています。これらをクリアにしていかない限り、中国企業が自社ブランドでジャイアントやメリダといった世界に通用する台湾企業相手に対等に競い合うことは難しいでしょう。ただ技術的な部分だけで言えば、そのレベルは極めて高くなっており、ブランドとしてまだまだ伸びしろが多く残されていると考えています。」
現状世界レベルに到達しているその技術、というよりは世界をリードするまでの技術をすでに要している中国自転車産業、このアジアバイクではコピー系のブランドは徹底して排除されており、実力で這い上がってきたブランドを厳選しているだけあって、そのレベルは高かった。それでも主催者の目は厳しく、しっかりとこれからのことを見据えて現状何が不足していることをきちんと指摘していた。
では今後どの程度で中国企業が世界レベルになるのか?との問いにも主催者は厳しい意見を突きつけた。「現状意識改革をしなければ、世界ブランドが誕生するのはまだまだ5年、10年先になるでしょう。それは先にも指摘した通り、中国企業がまだまだグローバルマーケットスタンダードに対応しきれていない部分があるからです。」
世界最大級の自転車製造会社でオリジナルブランドBATTLE(バトル)の製造元も、ここに関しては同じ視点を持っており、しっかりと自分達に何が不足しているのかをきちんと見極めていた。
現状中国企業が世界を目指さなくても成立しているのは、中国国内の需要でも十分に利益が挙げられている側面がある。バトルの製造元はなんと従業員数だけで30,000人もおり、企業の純利益はヨーロッパや日本国内のメーカーの上を行く。つまり規模で言えば間違いなく世界トップクラスにはすでにいるのだ。ただブランディングという部分で、世界での知名度がまだ及んでいないだけということだ。しかしこれが「難しい」のだと主催者もメーカーも気づいているだけに、今後このあたりの対応が加速すれば、間違いなく台湾ブランドと肩を並べる競争力を持ちそうだ。
最後に今後中国市場は現在のままの拡大を続けるのか?との問いに主催者は、「すでに第一次のピークは2014年にありました。今は一度それが落ち着いています。中国も日本同様にブランド信仰が高く、西洋のブランド(中国生産だが)の売上が安定しています。シェアバイクの登場で再び自転車に注目が集まっており、数年内にはまた成長カーブを描くと思われます。そのときに中国ブランドがどの位置にいることが出来るかで、その後の中国自転車産業の立ち位置は大きく代わっていくと思います。」
業界自体が冷静な分析ができている中国、成熟期に入り始めたその輪界の躍動は、今や世界の自転車業界が軽視できないレベルになってきている。
H.Moulinette