世界で戦う選手たちの給与は安すぎる?最低年俸が底上げもワールドツアー、プロコンチネンタル選手の年俸は他メジャースポーツに比べまだまだ低水準、しかも突如チーム解散もある不安定さ
世界には多くのスポーツがある中で、自転車レースもまたメジャースポーツとして君臨している。ツール・ド・フランスなどは世界190カ国以上で中継されるなど、間違いなく世界中の人間を魅了している。そのロードレースのワールドツアーとプロコンチネンタル選手たちの最低保証年俸が底上げされることとなった。果たしてプロロード選手はどれほど稼いでいるのか、そして他のメジャースポーツに比べてどうなのかを見ていこう。
まず今回値上げとなった最低年俸で、ワールドツアー選手の最低年俸は約473万となった。またプロコンチネンタルは400万となった。ただしネオプロの最低保証年俸は更に低く、ワールドツアーの場合で400万、プロコンチネンタルで340万となっている。
ではトップクラスの選手はどの程度稼いでいるのだろう?詳細が公表されていないためにあくまでも報道などからの推定だが、ダブルツールを達成したクリス・フルーム(チームスカイ)が今自転車界で最も稼いでおり年俸約6億円となっている。今シーズン限りで引退を表明したアルベルト・コンタドールや、ヴィンチェンツォ・ニーバリ(バーレーン・メリダ)らのグランツール優勝経験者が今シーズン年俸約5億円程となっている。
経験豊富なのメインクラスのアシスト選手や、クラシックなどで勝利を挙げられる選手たちで年俸~1億円ほど、中堅クラスの選手で勝利がない選手たちは一気に下がり平均で年俸~1000万程となっている。つまりその収入は当然のように極めて分かり易く、結果が出せる選手ほど高給取りとなっている。またその上で結果が出なければ容赦なく首になるオン・ザ・エッジの職業でもあるのだ。
この金額は決して高くないといえるだろう。どのスポーツよりも怪我のリスクが高く、またシーズンが長いことを考えれば、この金額は極めて低いといえる。例えばサッカーのイギリスのプレミアリーグの平均年俸は4億1500万、そしてその傘下の2部リーグでさえ平均年俸は8800万もあるのだ。
別のスポーツで言えばアメリカのプロバスケットボールリーグNBAではは平均年俸が7億、野球のMLBでは5億、アイスホッケーのNHLでは3億5千万、アメリカンフットボールのNFLで2億4千万となっている。ちなみにMLBでは最低保障年俸が6000万となっている。
同じメジャースポーツであるにも関わらず、自転車は名誉職的なニュアンスも大きく、またスポンサースポーツの弱点でもある資金難に常に向き合わねばならず、選手は活躍をしてもチームの資金事情に限度があるために大幅な年俸アップは難しいのが現状だ。
日本では世界に通用するようなロード選手が新城幸也と別府史之以降なかなか誕生しないのだが、海外ではトラック選手が多くロード選手として成功している。それを考えれば、日本の競輪選手であれば、間違いなく海外のロードで成功する選手はいるだろう。ただ日本の競輪は平均でも1000万ほどの収入があるため、あえて結果が出ないとすぐにクビになる海外のロードレースや、給与が安い日本のロードレースに挑むよりも、ライセンスがある限り出場できる競輪で活動を続けたほうが間違いなく安定するのだ。また最低限英語など複数の言語を話すことも求められるのもハードルにはなっているが、それよりも日本人は安定した収入を求める傾向にあり、あえての冒険を冒さない人が多い国民性というのもあり、なかなか選択肢にはなっていないのが現状だ。
ハイリスク・ローリターン、それでもあえてロードレースという土台を選ぶアスリートがいる限り、自転車はメジャースポーツであり続けるだろう。しかしやはり昨今話題になるように放映権の分配などがきちんと行われない限り、チームの突然の解散は今後も続くであろうし、子供達にとって憧れの職業であり続けるのは難しいかもしれない。
H.Moulinette