コラム:コンポーネントの未来はブレーキも電子制御?シマノがエレクトリックブレーキの特許を出願、完全家電化でのリスクはどうなるのか

昨今変速は電子化が進み、もはや変速機周りは機械というよりは家電に近い時代となった。それには一長一短があり、時代の流れに合わせた変化と言えるだろう。カメラがフィルムからデジタルに変化していったように、自転車の変速機周りもワイヤーで引っ張るアナログ式から、電子制御で動く変速機にまで進化した。しかし命を預けるべきブレーキ周りは、ワイヤー式のブレーキから油圧式のディスクブレーキへと変化はしたが、一貫して”手動”によるものだった。しかしここへきてシマノが電子ブレーキの特許を出願、果たして近未来の自転車はブレーキまで電子制御されたものとなるのだろうか。
ブレーキは減速装置であり停止装置だ。つまりこれは自転車に乗る上では命を守るライフラインとなる。そのため物理的にケーブルを引っ張りブレーキシューをリムに押し付ける、油圧(水圧式もある)でブレーキパッドをディスクに押し付けることで安全に減速、停止することができるのだ。今回の特許は、ブレーキレバーへの入力が、電子制御されたコントローラーとアクチュエーターによってブレーキ本体が作動させられるというものだ。狙いとしては、これによりブレーキレバーがブレーキレバーの形状である必要がなくなる、というところかもしれない。
現段階ではまだまだイメージという感じだが、正直現段階でその現実化というものはあまり気乗りしない。物理的ではなく、電気制御されたブレーキにどこまで命を預けたいと思えるか、と考えたときに、正直まったく預けたいとは思わなかったからだ。例えば車などでは電子制御ブレーキなどが存在するが、あれは金属で覆われた車体の中にシートベルトとエアバッグに守られて運転者がいることで、万が一の事故の場合でもある程度の安全が担保されているところがポイントだ。自転車の場合生身でむき出しの体なわけで、万が一の誤作動や故障などの場合には自らの体のみでそのリスクのすべてを受けることとなる。
まだまだ今回の特許はアイディアを先に抑えておくためのものであり、開発には時間を要するだろう。果たしてすべてのコンポーネントが電動化されるのか、その未来はどれほど先に待っているのだろう。機材開発と機材競争の波は、昨今競争原理があまり働かない状況になっており面白みに欠けている。利便性や買い替え需要だけではない”面白い開発”ももっとどんどんと進めていってほしい。特許でがんじがらめになり、サードパーティー排除となっていった1990年代からの流れは、そろそろ一旦絶たねばならないだろう。自由競争でこそゲームチェンジャーとなるような面白い発想と新しいアイディアは生まれてくるものだ。
H.Moulinette