日本でMTBのブーム再燃はあるのか?圧倒的にロードにシェアを奪われている現状の理由とは?MTBの復活はあるのか?新たなオフロードバイク需要がMTB復活の鍵となるか
日本で本格的にスポーツ自転車が一大ブームとなったのは1980年代後半、MTBが日本で大ブレークしたのだ。どこを見回してもMTBばかり、専門店にいけば所狭しと様々なカラーリングと形状のフレーム、そして個性的な形状とカラーリングのパーツがが並んでいた。量産メーカーのみならず、ハンドメイドビルダーの第一次全盛期となり、多くのビルダーが誕生した。その殆どが消滅したが、今でも生き残ったブランドは幾つかあるが、それらのメーカーは今はロードバイクを中心に作っている。またハンドメイドパーツブランドも多く誕生し、今では考えられない様なバリエーションのパーツが世に送り出された。
『メカチックなMTBは男心を大いにくすぐった ©CT』
『個性あるパーツが多かったMTB全盛期 ©CT』世界的にもMTBが一大センセーションとして受け入れられ、世界選手権などが積極的に行われるなど、あっという間に一大スポーツとしてのポジションを獲得した。日本でも様々なイベントやレースが行われ、世の中はMTB全盛期となった。
しかしそれは同時にある社会問題を引き起こした。林道などを縦横無尽に駆け回るなど、MTBユーザーのマナーが問題となったのだ。林道だけに飽き足らず多くのユーザーが立ち入り禁止区域に入ってしまうケースが続出、社会的に”MTBユーザーはマナーが悪い”というマイナスイメージが定着してしまった。
それに伴い徐々にMTBも下火となっていき、輸入数と販売数が激減、今ではロードに比べると圧倒的にマイナースポーツとなってしまった。しかし海外を見渡せば今でもMTBとロードの売上はほぼ半々の状況であり、MTBはきちんと市民権を獲得して定着している。
ではなぜMTBは日本でマイナーとなったままなのだろう。MTBのイメージダウンとともに、出かけていかねば本質的に楽しめないオフロードよりは、近所でも楽しめてしまうオンロード、つまりロードバイクの方が気軽にスポーツを楽しめるという印象がついたのは大きかったと言わざるをえない。またMTBがどちらかと言えばコアな機械好き向けであり、自分で改造を施したりいじる幅が大きかったのに対し、ショップが大体のことをやってくれるロードのほうが”楽に楽しめる”とお手軽感が受けたというのもあるだろう。
ただ実はここへ来て、若干だがMTBへ再び注目が集まりそうな要因が増えてきている。その一つがグラベルロードであり、シクロクロスだ。オフロードも走れるように太めのタイヤとディスクブレーキを装備したグラベルロード、そしてさらにオフロードに特化したシクロクロスが注目を浴びているのは、これらの自転車がオンロードとオフロードの両方の楽しみ方ができるマルチパーパスバイクであるからだ。もちろんMTBのような悪路は難しいが、実際には林道も含めてそれほどの悪路は少ない。なのであればシクロクロスやグラベルロードで十分だと考える人は多い。
実はシクロクロスやグラベルバイクのニーズは”旅する自転車”が求められている背景が大きく影響している。昔であればランドナーやスポルティフといったタイプの自転車が使われていたのだが、そこにこれらの新たな世代の機材が市民権を獲得し始めているのだ。そしてこれら”旅する自転車”の広がりが、MTB復活の鍵となるかもしれないのだ。
シクロクロスやグラベルロードは、ドロップバーが原則でありやはりロードの延長上である感は拭えない。そしてオフロードも走る場合、やはり安定感を考えるとフラットバーが選択肢として浮上するのだ。その場合シクロクロスやグラベルロードをフラットバー化するより、最初からMTBのほうがいいのではないかと考える人が増えているのだ。またギア比もMTBのほうがより軽いギアまであるのも旅する自転車を求めるユーザーにとっては重要なポイントなのだ。坂が多い日本ではオンオフ問わず、大きなリアギアを使う傾向にある。その中でより大きなギアを選択できるMTBは旅する自転車にはうってつけなのだ。
専門店などでMTBを扱っているショップは少ないし、あったとしても追いやられているケースが多い。それでもMTBは一つの個性であり、そのまま消滅するようなものではない。昔のようなMTBブーム到来はないだろうが、違う形で再評価される日は近いのかもしれない。
H.Moulinette