クロモリフレームを正しく知ろう2:レディーメイドのクロモリとオーダーの違いとは、マスプロダクションとハンドメイドという2つのクロモリの顔
クロモリフレームビルダーの数が日本は多い。それは原則クロモリのラグフレームを使用する競輪という文化があり、それがクロモリフレームという文化を守り続けてきたからだ。その競輪を管轄するJKA(日本競輪協会)が定期的に強度や精度検査などを行い、その技術力を確かめているため、認可されているということは少なからずレベルが高いということになる。中には昔は認可されていたが、今はもう競輪フレームを作っていないので現在は認可されていないブランドも多くある。そういったブランドも技術力としては高いといえるだろう。これはあくまでも目安だが参考になる。
またそれとは別に最近では自転車の専門学校出身や、名ビルダーに弟子入り、暖簾分けなど様々な形で独自路線を追求している独立系ビルダー達もそれなりの数がいるのだ。もちろん技量にはばらつきがあるが、今までなかったような発想や独自性、またこだわりなど、評価できるポイントは多い。
そしてこれらハンドメイドとは別に、今でもクロモリリフレームはレディーメイド、マスプロダクション、つまり量産製品としても成立している。昔に比べれば少ないが、有名なところではコルナゴのマスターXライトなどが今でも販売され続けている。もはや名車と言われるマスターXライトには根強いファンも多く、誰もが一度は所有してみたい憧れの一台だ。また日本国内を見てもROCKBIKESが日本人の体型に合わせた独自設計のジオメトリーでのクロモリフレームと完成車を販売している。また他にもクロモリフレームを用意しているメーカーはそれなりにあるが、上記のメーカーらに比べると、あくまでもローエンド機としての立ち位置となっているものが多いのが特徴だ。
ハンドメイドフレームの最大のメリットは、自分の体や乗り方に合わせて、ジオメトリーやパイプの種類を変えられるところだろう。初めてのバイクにはハードルが高いと思う人もいるかもしれないが、ビルダーさんにきちんと話をすれば、そのあたりを加味した上で採寸や乗り方のチェックなどを行ってくれるので、自分に合った自分だけの一台が作れるのだ。それに対しデメリットはやはり工房まで出向いての注文が基本であるということだろう。そのため近くにビルダーの方がいなければ、電話やメール、FAXでのやり取りが中心となるが、時にはうまくその意図が伝わらないケースなどがあることだろう。
では量産されているクロモリフレームはどうだろう。大手海外ブランドに関しては、まずその最大のメリットはクラシカルな出で立ちを手に入れるという恍惚とした優越感だろう。これはそのブランドが培ってきたヘリテージを受け継ぐことであり、またその走りもその名に恥じないものとなっている。
また国内ブランドではロックバイクスのように、日本人の体型に合わせたジオメトリー、日本のストリートシーンに合わせた設計を意識しているメーカーも有り、量産のクロモリバイクでもクロモリの特性を十分に堪能できる物となっている。
生産に関しては量産クロモリフレームの多くが台湾で行われている。今現在クロモリのパイプ自体の生産が台湾などアジア中心となっており、国内外の主力パイプメーカーもその殆どが台湾でパイプを作っている為、台湾での生産は理にかなっているのだ。
デメリットに関しては、海外メーカーのものは金額が高い上にストックジオメトリーしか用意されていないことが挙げられる。しかしストックフレームではこれは素材に関係なくアタリマエのことであり、サイズを選んでからステムやシートポストの長さなどで、自らの走りや体格に合わせて調整をすればよい。
また量産クロモリフレームはどのような体型や体重の人が乗るかわからないため、全体的に見るとリスクを最大限に加味し、強度重視の重量のある丈夫なクロモリパイプを選択することが多いのだ。そのためどうしても重量が増加し、これがクロモリ=重いというイメージを生み出してしまっている。とは言え中級、高級ラインナップのフレームは2kg未満のものがほとんどで、カーボンフォークと組み合わせれば、十分に軽さを追及できる。(クロモリフォークは重い)
まずクロモリを経験したいのであれば中級クラスのクロモリバイクを用意しているブランドでその特性を体感してみるのがいいだろう。エントリーユーザー向けのフレームは重さと精度の部分で、クロモリの真価を体験することはなかなか難しいからだ。その上で自分に合っていると思えば高級ブランドの高級クロモリストックフレーム、もしくは、フルオーダーの国産ビルダーのハンドメイドフレームを選ぶのがいいだろう。
クロモリは奥が深い、なぜ長年に渡り愛され、作られ続けているのかを考えれば、自ずとこの素材の秘めたる可能性を感じることが出来るだろう。釣りがフナに始まりフナに終わるというように、自転車もクロモリに始まりクロモリに終わる、そう言えるほどにこの素材はある種自転車の”原点”とも言えるものなのだ。
H.Moulinette