コラム:メカオタクたちの自転車の楽しみ方!いじってなんぼも自転車道の一つなり!最近はやりの「レストア」で再び自分で自転車をいじる”いじりん”が増加中!
自転車は乗ってなんぼ、風を切ってなんぼ、速く走ってなんぼ、そういう風潮と声はよく聞くが、自転車には違った楽しみ方もあるのをご存じだろうか。「床の間バイク」と言えばただ高級品を飾るだけ、アートとして鑑賞するといった風合いの遊びだが、がっつりと自転車を触っているのに、あまり乗らない(乗れない)というのが「メカいじり」だ。機械好きな人であれば、自分でパーツ交換をしたりするのが得意な人がいるだろう。その延長上にあり、乗ることよりも「あれやらこれやら組み合わせてはバラス」という楽しみ方をするのが「メカオタク」と言われる遊び方だ。
確かに自転車は交通の手段であるから乗って楽しむのが王道と言えるだろう。ただそれと同時にアナログな部分が多い(昨今は電動コンポやパワメーターなど電装品が増えたが)自転車は、プラモデルなどと同じく「工作作業」が楽しいものでもあるのだ。乗るものだから、不安だから、とショップに任せるというのは当然の選択肢なのだが、器用な人であれば自分でいろいろと楽しめるのが自転車でもあるのだ。最近では一番リスクの高いパーツであるホイールも組めない、調整できないというショップ店員が多くいる中で(完組みが増えたことも要因)、ショップだから安全だというのはあくまでも期待値に過ぎない場合も多い。
1980年代から1990年代のMTB全盛期は、数多くのサードパーティーコンポーネント会社が乱立、互換性も高く個性あふれるセットアップが可能だった。また工具類も企画が乱立していなかったことで容易にそろえることができた。誰もがカラーコーディネートや個性あるパーツを組み込み、「人とは違う一台」、「自分だけの一台」を作り出すことに熱中した。前後ディレーラーの変速系のみならず、ブレーキやレバー、シフター、クランク、サスペンションに至っては、内部の構造をエラストマーからエア(空気圧)に変える改造や、フォーククラウンやフォークブレイスまでもが交換できたのだ。
ところが昨今はとてもいじりにくい理由が山積みだ。まずは規格が乱立したこと。これによりそれぞれに合わせた工具を用意しなければならなくなった。さらにはカーボン全盛期となり、締め付けのトルクなど、今まで以上にシビアさが要求されるようになった。
それでもメカオタはくじけない。それに対応して自分での組付けを楽しむ人が増えた理由の一端は、特定の馴染みのショップを持たずに、海外通販で購入して自分で組み付ける人が増えたのも理由の一つだろう。もちろんショップが近くにない場合が多いことや、ショップの態度が玄人より過ぎて敷居が高いなどの理由に加え、海外通販は工具も一緒に購入することができるだけではなく、価格も日本で購入することを考えれば大幅に安く済むことから、自分で楽しむ人が増えた。
さらには最近ではクロモリフレームやツーリングフレームなどの古い自転車を購入して「レストア」するのが流行りつつある。多くの名ビルダーたちが生み出した傑作と言えるフレームがネットオークションなどで気軽に手に入るようになったこと、またそれらにつけるパーツ類もネットオークションで容易に見つけられるようになったことで、一つの独立した趣味として成立し始めたのだ。「レストア」することが目的であり、それに乗ることが目的ではない、というケースも最近では増えている。乗ることもできるが、アート作品として鑑賞できるクラシックバイクもまた最高にうまい酒の肴だ。
例えば自分が生まれた年のフレームやパーツで統一をしたり、憧れの往年の名選手が乗っていたバイクをレプリカでくみ上げたりするのも楽しみ方であり、崇高な趣味と言えるだろう。
それぞれの楽しみ方がそこにあるのが趣味、そして自転車もそうあって然るべきだろう。自転車と言う趣味はスポーツだけではない側面も持ち合わせている。それを否定することは、自転車の一つの楽しみ方を否定しているに他ならない。楽しんだもの勝ち、それが趣味なのだ。
H.Moulinette