ツール・ド・フランス2026第18st:諦めない男カラパズがまたしても大逃げに乗ると、山頂ゴールでステージ勝利!シュミットは連日の2位!総合バトル勃発せず、ピーダースンがポイント積み重ねることに成功

Pocket

©ASO

東京五輪ロード金メダル、2019ジロ・デイタリア覇者、2020ブエルタ・ア・エスパーニャ総合2位、2021ツール・ド・フランス総合3位、輝かしい戦歴のピーク時から力が落ちたというよりは、若手のレベルが急激かつ飛躍的に上がったことで総合優勝は難しくなってきているが、ならばと栄光もプライドも関係なく貪欲に勝利を狙う男がリチャード・カラパズ(EFエデュケーション・イージーポスト)だ。今大会も何度となく大逃げに乗るとステージ勝利を狙って独走にまで持ち込むが、総合バトルに飲み込まれていた。しかしその時にタデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツXRG)が「カラパズの日は来る」と口にしていた通り、33歳のエクアドルからの刺客はこの日も大逃げに乗ると、さらにそこからライバルたちを出し抜く鮮やかなアタックを敢行、遂に独走で山頂ゴールを制した。これで一気に総合でもトップ10入りを果たした。諦めない男の諦めない走りは自身プロ25勝目、山岳賞ジャージを獲得しステージ勝利を挙げた2024年以来のツール・ド・フランスステージ勝利となった。

©ASO

ステージ2位に入ったのはマウロ・シュミット(ジェイコ・アルーラ)、すでにステージ勝利を挙げているだけではなく、昨日のステージではスプリントで2位を獲得していたが、この日も逃げに乗るとカラパズに次いでステージ2位を獲得した。今シーズン大きな飛躍を遂げている26歳はこれからが楽しみだ。ステージ3位にはエースを失い目標をステージ勝利に切り替えたヴィズマ・リースアバイクのマッテオ・ヨルゲンセンが入った。4位には繰り下げで山岳賞ジャージを着用しているヴァレンタイン・パレ・パントレ(ソウダル・クイックステップ)が入った。このステージ中間の山岳でポイントを稼ぎ、ゴールでも3位以内であれば山岳賞ジャージを自分のものにできたが、僅か1ポイント届かずポガチャルに次いで2位のままとなっている。

総合バトルは勃発しなかったが、もう一つの注目ポイント賞争いが白熱している。昨日ステージ勝利を挙げたフィリップセンが一気に7ポイントの僅差まで迫る中、昨日の失敗を取り返すべくマッズ・ピーダースン(リドル・トレック)がこの日も積極的な走りを見せた。フィリップセンは完全な平坦系、山岳系は大の苦手だが、ピーダースンは山岳でも馬力である程度こなせてしまう。これが功を奏しまたもポイント差を大きく開くことに成功、ポイント賞がまた一歩近づいた。

総合バトルに関して気がかりなのは、UAEチームエミレーツXRGの選手たちに体調不良者が相次いでいることだ。昨日からアダム・イェーツが腹痛でティム・ウェレンスも呼吸器系で苦しみ辛うじてリタイアは免れているが、この日はブランドン・マクナルティが体調不良の末リタイアとなっている。他にもフロリアン・フェルメールシュが怪我をして万全ではない。この日動かなかったのもこのことが影響している可能性は高く、残るアシストを温存したという可能性は高い。だが明日からの山岳連戦でアシストを欠くことはタデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツXRG)にとって余裕の5度目の制覇から、現状では大幅に戦術の変更を余儀なくされそうだ。

©ASO

アルプス突入の第18ステージ、獲得標高4000m近いこのステージは総合勢にとっても翌日を考えたときに動くべきか悩ましいステージではあり、それは裏を返せばきつくはあるが山岳逃げ切りが可能だということだ。そのことからスタート直後から逃げに乗るべくアタックの応酬が始まった。山岳賞ジャージに可能性を残しているカラパズとパレ・パントレはその中心で何度となくアタックを繰り返す。さらにそこにポイント賞争いのピーダースンやイーガン・ベルナル(ネットカンパニー・イネオス)らも加わりスタートから65㎞を要して40人ほどの逃げが決まった。

©ASO

その逃げ集団の中でも動きは明白で、山岳ポイント通過ではカラパズとパレ・パントレの一騎打ちが続く。モンテナールの山頂ではこの二人に加えピーダースンら14名が逃げ集団から抜け出す形で通過。逃げ集団の残りが1分半、そして総合系のメイン集団が3分後方からそれを追う展開となる。そして次の山頂までにメイン集団との差は一気に開き、6分台へと突入する。驚きの走りを続けるのはピーダースン、この日の中間スプリントは残り56㎞に設定されており、フィリップセンが絶対に山岳を超えてこれないことが分かっているため全力でこのポイントを狙いにクライマーたちに喰らいついている。チームメイトのマティアス・ヴァチェック(リドル・トレック)も献身的にアシストし続け、この日の中間スプリントでは誰も邪魔することなく先頭で通過、これで25ポイントを追加し、フィリップセンとの差を32ポイントまで広げた。

©ASO

ピーダースンのこの日の旅路はここで終わったが、残ったメンバーはここからステージ優勝を目指し仕掛けていく。追走が1分20秒背後に、そしてメイン集団とは8分差にまで広がり、この日の逃げ切りステージ優勝が一気に現実的となる。そして残り47㎞でここヨルゲンセンのアタックを皮切りに、先頭はトビアス・ヨハネセン(Uno-Xモビリティ)、シュミット、カラパズ、パレ・パントレの5人へと絞られていく。人数が絞られ目的がステージ優勝を狙うと一致団結したことで、強力なメンバーに協調体制が生まれ快走、この5人はそのまま後続との差を広げたままゴールまでの最後の山頂バトルへと突入していく。

©ASO

最初に動いたのはカラパズ、残り4.1㎞でアタックを仕掛けるとこれにパレ・パントレが即座に反応、しかしその後シュミット、ヨルゲンセンが再び合流を果たす。すると残り3.4㎞でカラパズはもう一度アタック、今度は誰もこれに反応できず、カラパズのゴールまでの独走が始まった。一切手を緩めない走りでゴールまで激走、欲しかったステージ勝利を遂に自力でつかみ取って見せた。ゴール後表彰台の待ち時間では、ポガチャルに「俺の言ったとおりだっただろ!」と声を掛けられがっちりと手を握った。

リチャード・カラパズ(ステージ1位)
「本当にツールでの勝利は特別だよ。全力を尽くし切らねば勝てないからね。本当にきつかったけど、タイミングを見計らって逃げに乗れたし、最後も我慢してなるべく一撃で仕留めたかったんだ。チームとしてずっとステージ勝利を狙い続けてきたけど、先週はあと一歩だけど叶わなかった。でも今日ここで勝利できて本当によかったよ。この勝利は家族に捧げるよ。」

©ASO

ツール・ドフランス第18ステージ順位
1位 リチャード・カラパズ(EFエデュケーション・イージーポスト)  4h26’21”
2位 マウロ・シュミット(ジェイコ・アルーラ)    +45”
3位 マッテオ・ヨルゲンセン(ヴィズマ・リース・ア・バイク)
4位 ヴァレンタイン・パレ・パントレ(ソウダル・クイックステップ)    +1’14”
5位 トビアス・ヨハネセン(Uno-Xモビリティ)    +1’57”
6位 ラウル・ガルシア・ピェーニャ(モビスター)   +2’12”
7位 パブロ・カストリーリョ(モビスター)    +4’30”
8位 レニー・マルチネス(バーレーン・ヴィクトリアス)   +4’35”
9位 レムコ・エヴァネポエル(レッドブル・ボーラ・ハンスグロエ)
10位 トム・ピドコック(ピナレロQ36.5 プロサイクリング)

ツール・ド・フランス総合順位
1位 タデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツXRG)   64h35’13”
2位 レムコ・エヴァネポエル(レッドブル・ボーラ・ハンスグロエ)   +4’32”
3位 アイザック・デル・トロ(UAEチームエミレーツXRG)  +6’51”
4位 ポール・セクサス(デカスロンCMA・CGM)   +7’11”
5位 ホァン・アユソ(リドル・トレック)   +9’22”
6位 マティアス・スケルモース(リドル・トレック)   +10’14”
7位 レニー・マルチネス(バーレーン・ヴィクトリアス)   +12’50”
8位 トム・ピドコック(ピナレロQ36.5 プロサイクリング)   +12’58”
9位 ジョーダン・ジェガット(トータルエナジーズ)   +14’04”
10位 リチャード・カラパズ(EFエデュケーション・イージーポスト)   +21’00”

H.Moulinette