パリ~ルーべ2026:主力がトラブルに見舞われるも史上最速の平均時速48.91kmで決着!ポガチャルのパリ~ルーべ制覇を阻んだのはファン・アールト!スプリント直接対決でポガチャルの野望を撃破!

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パリ~ルーべ、モニュメントの中でも最も「運」を必要とするレースは、今年はすべての優勝候補に試練を与える大会となった。しかしそんな逆境をも見せ場に変えてしまうのが歴代最強のタデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツXRG)だった。喉から手が出るほど欲しかったパリ~ルーべの勝利は、昨年度は落車で優勝争いから脱落してしまい、2位に終わってしまった。しかし今シーズンいまだに勝てていない2つのモニュメントを勝利すべく入念に準備してきた男は、ミラノ・サンレモを勝利し、最後の一つとなったこのパリ~ルーべを明確に狙っていた。そして体重を増やし重厚感のある体格へと変貌を遂げたポガチャルは、途中パンクでニュートラルサービスのバイクに乗り換えるなどのトラブルに見舞われながらも、自らの力も使い先頭集団へと復帰、そしてそのまま攻めの走りでライバルたちを順番に削っていくと、今年はワウト・ファン・アールト(ヴィズマ・リース・ア・バイク)との一騎打ちへと持ち込んだ。しかし最後に笑ったのはファン・アールトだった。スプリント力で勝る男がトラックで豪快にスプリント、先行したポガチャルを真っ向勝負でねじ伏せて見せた。

257㎞の長丁場、この日は多くの選手たちが石畳の洗礼を受けた。まずは迎えた第22セクター、まず犠牲となったのはポガチャルだった。パンクに見舞われたがバイク交換をしようにも細い石畳区間だったこともありバイク交換がままならず、シマノのニュートラルサービスのバイクを受け取り再スタートを切ることとなる。これで1分近くのタイムロスを喫してしまい、大きなビハインドからの展開となる。自分の体にぴったりではないバイクだけに交換をしたいところだが、狭いコースもありなかなかバイク交換ができなかった。先頭の集団はヴィズマ・リースアバイクとアルペシン・プレミアテックがプッシュする中、第20セクターを前にようやくバイク交換をしたポガチャルをUAEチームエミレーツXRGが組織力でじわじわとタイム差を詰めていく。

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そしてポガチャルが迫って迎えた最難関の名物アーレンベルグの石畳では、ファン・デル・ポエルに不運が訪れる。ファン・アールトともに先行していたが、パンクを喫してチームメイトのヤスパー・フィリップセン(アルペシン・プレミアテック)のバイクに乗り換えて漕ぎだすが、ペダルがはまらない。結局諦めてフィリップセンへとバイクを返すと、コースを歩いてさかのぼり自分のバイクを取りに戻る。ちょうどその間に後続グループにいた別のチームメイトが、自らの前輪を外してファン・デル・ポエルのバイクへと取り付けていた。新たな前輪を得たファン・デル・ポエルはようやくこれで再スタートとなったが、さらに不運が訪れる。アーレンベルグを抜け出す前に再度パンクを喫してしまい、結局この区間だけで2分以上遅れる結果となってしまった。

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そんな中先頭まで追い付いたポガチャル、ファン・アールト、ピーダースンらが先頭グループを形成、状況を有利に展開していく。しかしファン・デル・ポエルはそこから腐ることなく猛追を続け、4つ星の第12セクターでは、ポガチャルらの先頭集団の背後20秒差にまでその差を詰めてきていたが、追いつかれるのを嫌ったファン・アールトが加速をして先頭集団から飛び出していく。残り53㎞、先頭はポガチャル、ファン・アールトとピーダースンの3人に絞られるかに思われたが、すぐさまポガチャルがさらに踏み込みピーダースンを置き去りにする。先頭は二人旅へと突入していくが、その背後でもファン・デル・ポエルも追走集団から飛び出し自力での追走を試みる。

そして迎えたこの日二つ目の5つ星、第11セクターのモン・サン・ぺベル、勢いよく飛び込んでいく先頭の二人に対し、ファン・デル・ポエルは一度は縮まった差が僅かに広がり30秒を超えていく。その間に戦闘ではポガチャルがファン・アールトを引き離すべく猛烈に石畳で加速をしていく。時速55㎞ほどで石畳の上を飛んでいくが、ファン・アールトは何とかこのセクターでは最後まで踏ん張り喰らいつく。その背後ではピーダースンはここでファン・デル・ポエルのグループにつかまり、タイム差は40秒近くまで広がってしまう。

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ポガチャルはファン・アールトにアタックをさらに仕掛けるがこれも決まらず、すると足を少し緩め駆け引きとなる。これによりあっという間に10秒ほどが縮まってしまう。しかしここから展開は大きな動きがないままレースは推移することとなる。この30秒ほどのタイム差のまま、この日最後の5つ星第4セクターのカルフール・ド・ラルブルへと突入していく。すぐさまポガチャルがアタックを仕掛けるが、一瞬バランスを崩してしまう。それでも何とか堪えてポガチャルは加速をしていく。そしてその背後は猛追をしてきたファン・デル・ポエルがついに19秒差にまで迫ってくる。

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そして次の第3セクターでもポガチャルは加速して攻撃を仕掛ける。しかしファン・アールトはここでも喰らいつき離れない。後続との差はまた広がり、30秒ほどで推移をしたまま優勝争いはポガチャルとファン・アールトの一騎打ちへとなっていく。トラック競技場でのスプリントは、通常のロードとは異なる技術が求めらえるが、ポガチャルはうまく立ち振る舞っているように思えたが、自力で勝るファン・アールトのスプリントの前に結局屈することとなり、2年連続での2位に終わり、最後のモニュメント制覇はお預けとなるとともに、前人未到の同一年度全5モニュメント制覇への挑戦もここで潰えることとなった。

また史上初のパリ~ルーべ4連覇を狙ったファン・デル・ポエルだったが、結局表彰台争いでもヤスパー・ストゥーヴェン(ソウダル・クイックステップ)に屈し、こちらも記録を達成することができなかった。

歴代最強の男でも勝てないパリ~ルーべ、そして改めてポガチャルも人の子であり無敵ではないことをようやく感じることとなった。3度のパンクと3度のバイク交換、強さだけではどうしようもない「運」、そしてそれにより費やした追走の脚は、きっと最強の男には新たな経験値となったことだろう。

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ワウト・ファン・アールト(優勝)
「この勝利は僕にとってのすべてだよ。初めてここに参加してから、ここでの勝利を夢見てきたんだよ。今まで何度となく「不運」に見舞われてきたけど、ようやく手が届いたよ。2018年にこのレースで亡くなった元チームメイトのマイケル・ホーラーツのためにもどうしても勝ちたかったし、天にこの勝利をささげたかったんだよ。ここしばらくポガチャルとファン・デル・ポエルを目の前にして何度となく自信を失いかけたけど、翌朝起きて「新たな一日だ」と気持ちを切り替えてきたんだよ。そして世界チャンピオンとゴールまで競い合えるなんて最高の結末だよ。彼はほんとうに史上最強だし、最後まで本当にきつい勝負だったよ。」

タデイ・ポガチャル(2位)
「ミッションインポッシブルだったよ。今日は皆がトラブルに見舞われていたけど、僕も3度のパンクに3度のバイク交換だったよ。チームがスーパーで最高の仕事をしてくれたんだけど、アーレンベルグではすでに結構脚がいっぱいだったよ。ファン・アールトと二人旅になってからは、もう振り切るだけの脚はなかったよ。もうその段階で負けるかもと覚悟はしたよ。それでもベストなスプリントをしたけど、足は茹ですぎた麵のようだったよ。」

パリ~ルーべ2026順位
1位 ワウト・ファン・アールト(ヴィズマ・リース・ア・バイク)   5h16’52”
2位 タデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツXRG)
3位 ヤスパー・ストゥーヴェン(ソウダル・クイックステップ)   +13”
4位 マシュー・ファン・デル・ポエル(アルペシン・プレミアテック)   +15”
5位 クリストフ・ラポルテ(ヴィズマ・リースアバイク))
6位 ティム・ファン・ダイク(レッドブル・ボーラ・ハンスグロエ)
7位 マッズ・ピーダースン(リドル・トレック)
8位 ステファン・ビセガー(デカスロンCMA・CGM)   +20”
9位 ニルス・ポリット(UAEチームエミレーツXRG)   +2’36”
10位 マイク・テウニッセン(アスタナXDS)

H.Moulinette