ブエルタ・ア・エスパーニャ第3ステージ:いきなりの山岳総合バトル勃発!ステージを制したのはニーバリ!攻めたフルームがステージ3位で早くも総合リーダーに!コンタドールが早くも脱落

最近のグランツールの傾向となりつつある大会序盤での総合勢バトル、今年のブエルタ・ア・エスパーニャ第3ステージに用意された山岳ステージは、総合系の選手にとってはいきなりの直接対決の機会でもあり、ライバルを蹴落とすチャンスでもあった。そしてそのステージで早くも総合バトルは大きく動き、人数が絞られることとなった。ステージを制したのはジロ以来のグランツール出場のヴィンチェンツォ・ニーバリ(バーレーン・メリダ)、何度となく脱落するも粘り強く前を追い、最後は見事少人数からのゴール前スプリントで切れ味鋭く勝利をもぎ取った。そして攻めの姿勢を貫いたクリス・フルーム(チームスカイ)が中間スプリントのボーナスタイムで早くも総合リーダーの証、マイヨ・ロホを獲得してみせた。
『きちんと勝利を奪うのもグランツール覇者の慣れか ©Tim D Waele 』この日最後の上りでチームスカイが大きく仕掛けた。これによりライバルチームと選手たちの隊列は大きく崩れることとなる。この日最大の犠牲者となったのは今大会限りでの引退を決めているアルベルト・コンタドール(トレック・セガフレド)、スカイの攻撃で遅れを取ると、そのままズルズルと後退していった。この時点でバーレーン・メリダの隊列も崩壊、ニーバリはいきなりの苦境にに立たされることとなる。しかし何とかそこからリカバー、先頭集団に食らいつく。

『チャベスのみが反応したフルームのアタック ©Tim D Waele 』

『この二人は今大会のキーマンとなるか? ©Tim D Waele 』
そして残り8kmでこの日の総合勢の行方が大きく揺さぶられる。なんとツール・ド・フランス覇者のフルームがいきなり仕掛けたのだ。エステバン・チャベス(オリカ・スコット)はこれに反応するが、ここでまたしてもニーバリは脱落してしまう。そしてファビオ・アルー(アスタナ)とロメイン・バルデ(AG2R)らはこの二人を追走する。さらに遅れを取ったニーバリだったが、しかしニーバリにとって不幸中の幸いだったのは上りゴールではなかったこと、得意の下りで素晴らしいダウンヒルを見せると、残り1kmを切り三度集団へ合流を果たすと、その勢いのままにゴールスプリント勝負を挑み、ステージ勝利をもぎ取ってみせた。
「今までの勝利とは全然違ったね。今日はいきなり総合上位勢が直接動いたし、自分も勝利のために自ら大きく動かねばならなかったし、大きく削られたよ。とにかく自分も犠牲を払わねば総合上位争いにさえ絡めない、そんなタフなステージだったよ。」ニーバリは勝利を噛み締めた。

『フルームの攻めに対応を余儀なくされた総合勢 ©Tim D Waele 』
ステージ2位には移籍が決まっているデビ・デ・ラ・クルス(クイックステップ・フロアーズ)が入り、そのまま総合2位へと順位を上げた。昨日の総合リーダー、チームメイトのイブ・ランパート(クイックステップ・フロアーズ)から総合リーダージャージを引き継ぎたかったが、この日中間スプリントでも積極的な動きを見せたフルームにわずか2秒届かなかった。フルームはその中間スプリントで獲得したボーナスタイムが物を言い、早くも総合リーダーへと躍り出た。ツールからの疲れ言えないままに出場、そしてグランツール連勝を狙うフルームにとっては、この早い段階からの攻めでライバルたちを脱落させていくことに勝機があると睨んでいるようだ。最終的にフルームらと同タイムでゴールできたのは僅か9人、イェーツ兄弟(オリカ・スコット)、イルヌール・ザッカリン(カチューシャ・アルペシン)、ルイス・メインチェス(UAEチームエミレーツ)ら総合優勝候補が早くもタイムを失う展開となった。

『フルームが素晴らしい攻めの姿勢 ©Tim D Waele 』
「6年ぶりのマイヨ・ロホは格別だね。でもこのために僕も大きな犠牲を払ったんだよ。とにかく総合系の直接ライバルたちがあれだけ残っていたからね。」トフルームがかたり、またチャベスの走りを褒め称えた。そのチャベスは、「あれが限界だったよ。でもそれにしてもまさかフルームがあそこまで攻めてくるとは予測していなかったよ。まだまだ駆け引きをするものだとばかり思っていたよ。」トフルームの積極的な攻めに驚きを隠さなかった。
この日のステージは逃げといえばこの人、お馴染みのトーマス・デ・ヘント(ロット・ソウダル)が素晴らしい逃げっぷりを披露する。出場したツール・ド・フランスでは全行程の1/3、1000km以上をを逃げた男がこの大会でもその才能を見せつけた。8人となった逃げは快調に逃げ続けるが、この日は総合系が逃げを許さない展開、とても大会序盤とは思えない激しいステージとなる。

『スペインバトルは序盤戦から激戦へ ©Tim D Waele 』
そしてチームスカイがこの日の中間スプリントでフルームのために動くと、これでこの日のステージの方向性ははっきりと見えることとなる。大会序盤から動くことでライバルたちに差をつけること、これがフルームのダブルツールへの可能性だと言えるだろう。ステージ優勝こそニーバリに奪われたが、ここまでの動きは明確に意図したものであり、これからもチームスカイの戦術とチーム力が大きく物を言いそうだ。逆にニーバリはステージ優勝こそしたがすでに貴重なアシストを昨日失っており、この日の上りでも遅れをとるなど不安要素が多そうだ。
ブエルタ・ア・エスパーニャ第3ステージ
1位 ヴィンチェンツォ・ニーバリ(バーレーン・メリダ) 4h01’22”
2位 ダビ・デ・ラ・クルス(クイックステップ・フロアーズ)
3位 クリス・フルーム(チームスカイ)
4位 ロメイン・バルデ(AG2R)
5位 エステバン・チャベス(オリカ・スコット)
6位 ファビオ・アルー(アスタナ)
7位 ニコラス・ロッシュ(BMC)
8位 ティージェイ・ヴァン・ガーデレン(BMC)
9位 ドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(AG2R)
10位 マイケル・ウッズ(キャノンデール・ドラパック) +25”
ブエルタ・ア・エスパーニャ総合順位
1位 クリス・フルーム(チームスカイ) 8h53’44”
2位 ダビ・デ・ラ・クルス(クイックステップ・フロアーズ) +02”
3位 ニコラス・ロッシュ(BMC)
4位 ティージェイ・ヴァン・ガーデレン(BMC)
5位 ヴィンチェンツォ・ニーバリ(バーレーン・メリダ) +10”
6位 エステバン・チャベス(オリカ・スコット) +11”
7位 ファビオ・アルー(アスタナ) +38”
8位 アダム・イェーツ(オリカ・スコット) +39”
9位 ドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(AG2R) +43”
10位 ロメイン・バルデ(AG2R) +48”
H.Moulinette