問題児モスコンがツール・ド・フランスで暴力行為で失格に、過去に人種差別問題発言や、故意に落車させたと訴えられたトラブルメーカー、新導入のビデオ判定システムでアウトに

弱冠24歳にして稀代のトラブルメーカーとなっているジャンニ・モスコン(チームスカイ)がまたしても問題を起こした。現在開催中のツール・ド・フランスで、ライバルチームの選手をレース中に殴り失格処分となった。モスコンは自らが加害者となった、レース中に故意にライバルを落車させたとするケース(証拠不十分でUCIは処分なしも傷害事件扱いとして訴訟中)があるのだが、このケースでは映像が残っていなかったこともあり、証拠不十分となった。だが皮肉にもその対応策として今大会から導入されたビデオシステムによって、自らの暴力シーンが裁定にかけられる結果となった。

©Tim D.Waele/Getty Images
裁判沙汰となっているケースだけではなくてもモスコンが起こしたトラブルの数は数知れず、黒人選手に対する人種差別発言や、小さな暴力沙汰も多く、口だけではなく手も出る短気で危険な男、としてすっかり有名になってしまっていた。そうでなくともチームスカイにとっては、ウィギンスTUE問題、フルーム問題でのグレーなイメージが定着しているだけに、今度は暴力沙汰となれば更なるイメージダウンと求心力の低下は否めず、さらには失格処分で人数が減ったことで、今現在総合1位と2位を占めている総合優勝争いの戦略にも影響を及ぼしそうだ。
第15ステージ、なんと国際映像の画像の中で、モスコンがフォーチュネオ・シデルメックの選手に対して手を挙げ、パンチをする映像が明確に映ってしまっていた。これには主催者もすぐさまビデオにより繰り返し映像を確認、失格処分が言い渡された。チームスカイは当初この暴力を否定したが、ビデオ映像を見せられると一変、事実を認め謝罪した。今回もチームスカイは行動が後手に回ってしまった形となった。
「本人は自らの行動を悔いているようだが、大会終了後にチームとして今後このケースに対してどう対処すべきかを改めて検討することになる。」チームスカイは今回の決定に対して、そうコメントしており、人種差別の一件で同じことが繰り返されれば解雇も辞さないとの当時の判断に沿い、解雇も視野に入れた検討に入っている。

©Tim D.Waele/Getty Images
モスコンはさらに昨年度の世界選手権では、イタリアチームの一員として参加したが、チームカーに牽引されたとして失格処分、選手である前に様々な人間性の問題、モラルの問題を指摘されている。
モスコンの一件では、UCIが直接制裁を加えたことはないが、チームは人種差別発言の際には6週間の出走停止を命じている。落車誘発に関しては証拠不十分でおとがめなしとなったが、今回の一件で改めてチーム内でのコンプライアンス教育が問題視されそうだ。
トラブルメーカーとしてすっかり定着してしまったモスコン、選手としては才能があるだけに、それを無に帰すような自らの悪態の代償は大きくなりそうだ。さらには最悪チームから解雇されたとしても、問題ばかり起こすような選手を欲しがるチームがあるとは思えず、モスコンは今まさに自分の首を自分で絞めている状況と言えるだろう。
短期は損気、自らの行動を自制できなければ、結局自分のみならず周囲にも迷惑がかかるのだ。
H.Moulinette