世界選手権2017エリート男子ロード:史上初!怪童サガンが世界選手権3連覇!クリストフと僅差のバトルを制し、史上最強の称号をさらに確固たるものに!オランダ旋風は男子エリートに吹かず

ノルウェイで行われてきたロード世界選手権、ここまで男女チームTTと男女エリート個人TT,そして女子エリートロードとオランダ旋風が吹き荒れてきた。男子エリートロードレースでもその勢いのままにチームTTと個人TTに続く3冠目を狙ったトム・デュムラン(オランダ)に注目が集まったが、最後はやっぱり大本命、2年連続世界チャンピオンのピーター・サガン(スロベニア)がその勝負強さと勝負勘を発揮、先に仕掛けた地元のアレクサンダー・クリストフ(ノルウェイ)を猛追すると、最後は僅差で勝利、史上初の3年連続世界チャンピオンとなった。

『史上初の3連覇!!! ©Tim D Waele 』
体調不良もあり、サガンのコンディションはベストとはいえなかった。しかしこの男にとっては、最後まで生き残れば勝機はあるという判断だった。周回コース最後の上り、ジュリアン・アラフィリップ(フランス)が仕掛けるとそれをデュムランが追う。しかしその走りに切れ味はなく、頂上をトップでクリアしたのはアラフィリップだった。この世界選手権へ向け調子を上げてきた男は独走態勢を築こうと目論むが、下りに入るとデュムランを置き去りにしたジャンニ・モスコン(イタリア)も合流、そのまま二人が僅か6秒ほどの差を後続につけてゴールを目指す。

『最後は力と力のぶつかり合い ©Tim D Waele 』
しかしこの距離は射程圏内とばかりに後続の集団は追走の手を緩めない。上りで遅れたものも下りで合流し、前を逃げていた二人をも吸収、そのまま26人の大集団となって残り1kmへと突入する。ここでアタックが発生するがこれにも集団は冷静に対処、そしてそのままゴールスプリントへと向かう。こうなればもはやサガンの思惑通り、得意の早仕掛けで飛び出したクリストフを一気に背後から追い詰めると逆サイドへと展開、サイド・バイ・サイドで並んで共にゴールラインへ向けてバイクを投げ出した。今シーズン何度も見てきた写真判定レベルの僅差の勝負がここ世界選手権でも繰り広げられた。

『バイクを投げ出しての決着 ©Tim D Waele 』

『最後は横を見て確認 ©Tim D Waele 』
結果は僅か数センチの差でサガンに軍配、地元開催でアルカンシエルを切望していたクリストフは、悔しい2位に終わった。誰がこの男を止められるのか、もはや世代最強は歴史上最強へとその歩みを進めている。歴史は塗り替えるためにある、それをサガンはあっさりと証明してみせた。これで3連覇のみならず、3つの異なる地域、北米、中東、北欧で世界一になるという記録も合わせて達成した。

『勝利確定で”よっしゃ~” ©Tim D Waele 』
「簡単じゃなかったよ。残り5kmで逃げが飛び出したときは正直”終わった”と思ったよ。でもフェルナンド・ガヴィリア(コロンビア)らが猛追、それでスプリントへ持ち込めたんだよ。クリストフはホームレースだったから彼から勝利を奪ってしまって申し訳なかったね。でも僕自身はまた勝つことができて最高にハッピーさ。僕自身にとってもこの勝利は信じられないよ。これでなにかが変わるわけではないけど、間違いなく特別な勝利だし最高の気分だからね。」

『表彰台の3人 ©Tim D Waele 』
「正直最後の上り辺りからはひっちゃかめっちゃかだったよ。集団はいくつにも分裂していて、でもそこからゴールまでの僅かな間にそれがまた一つになったんだからね。何が起きるかわからない、それがレースだね。今日の勝利は母国のチームメイトたちと集団内の仲間に感謝だよ。この勝利は生きていたら明日誕生日だったミケーレ・スカルポーニに捧げるよ。そしてもうひとり、僕の奥さんにもこの勝利を捧げたい。近く僕はパパになるんだよ。すべてが最高のシーズン最終盤だね。」サガンは笑顔で語った。

『やっぱり銀だよな・・・ ©Tim D Waele 』
対して勝利できなかったクリストフは、悔しさと諦めの表情を見せた。それでも銀メダル獲得は母国にとっては大きな勲章となった。また今シーズン絶好調だったマイケル・マシューズ(オーストラリア)がその背後のバトルを制して銅メダルも、やはりゴール後にハンドルバーを叩き悔しさを滲ませた。ブエルタ・ア・エスパーニャで大暴れしたマッテオ・トレンティン(イタリア)は残念ながらメダルには一歩届かず4位、しかし間違いなくこの男は今シーズンのこの活躍で一気にレースでのエース格に上り詰めた。

『最高のロケーションで非常に白熱したバトルが展開 ©Tim D Waele 』

『逃げの10人は中盤には捉まった ©Tim D Waele 』
このレースではスタート直後に10名の逃げが発生、あっという間に10分以上の差を後続につけた。しかしこの日のレースは19.1kmの周回コースを周る267.5kmの長丁場、レースはゆったりと展開していく。レース中盤はオランダのオレンジ軍団がコントロールに入り、この日の勝利を明確に寝らっている意思表示をする。そしてあっという間に逃げ集団は吸収されてしまう。

『熱烈な応援のノルウェイ ©Tim D Waele 』

『アラフィリップは果敢に仕掛けた ©Tim D Waele 』
ここからレースは再び駆け引きが展開される。アレッサンドロ・デ・マルキ(イタリア)やティム・ウェレンス(ベルギー)らが動きを見せ後続集団との間に差が広がる。そしてデュムランがその追走アタックを仕掛けるが、これは集団に吸収されてしまう。さらにトニー・ギャロパン(フランス)らもアタックを見せるがこれも吸収、そして勝負は最後のサーモンヒルの上りに差し掛かる。ここでアラフィリップが動きを見せたが、最後は集団がそれを飲み込みゴール勝負となった。

『肌寒いノルウェイが熱くなった一週間 ©Tim D Waele 』
世界選手権エリート男子ロード
金メダル ピーター・サガン(スロバキア) 6h28’11”
銀メダル アレクサンダー・クリストフ(ノルウェイ)
銅メダル マイケル・マシューズ(オーストラリア)
4位 マッテオ・トレンティン(イタリア)
5位 ベン・スイフト(イギリス)
6位 グレッグ・ヴァン・アーヴェルマート(ベルギー)
7位 ミカエル・アルバジーニ(スイス)
8位 フェルナンド・ガヴィリア(コロンビア)
9位 アレクセイ・ルチェンコ(カザフスタン)
10位 ジュリアン・アラフィリップ(フランス)
H.Moulinette