ブエルタ・ア・エスパーニャ第20ステージ:コンタドールがアングリルを制す!フルームがステージ3位でダブルツールほぼ確定!ザッカリンが粘りの走りで総合3位に!ニーバリ落車も2位キープ

今年のブエルタの最終山岳決戦は、最後まで見応え充分だった。そしてツール・ド・フランスとブエルタ・ア・エスパーニャのダブルツールを、目指し確定させたクリス・フルームを脇役に追いやり、この日の主役となったのは連日のように攻撃を仕掛け続けたアルベルト・コンタドール(トレック・セガフレド)だった。
『最後に締める、これも元王者の貫禄か ©Tim D.Waele 』
「これ以上の現役の終わり方があるかい?アングリルで勝利しての引退なんて最高の結末だろ!無線で状況はいろいろ入ってきていたし、多くの選手が落車をしていることも聞いていた。でもそれでも僕はあのタイミングでパンターノと仕掛けることしか頭になかったんだよ。リスクを負っての下りでの攻めがチャンスだとわかっていたからね。」コンタドールは自ら最高の結末を演出してみせた。

『トレック・セガフレドがコンタドールのアタックを予感させる牽引 ©Tim D.Waele 』
アングリルが選手たちを迎え撃った最終山岳決戦、この日も逃げ切りを目論む選手たちが集団を築き、総合系選手たちの集団からリードを奪う。しかしこの日はトレック・セガフレドがコンタドールアタックの準備とも言える明確な意思を持った牽引を行い、逃げ集団に大きなタイム差を許さない。

『沿道の応援も絶頂に ©Tim D.Waele 』
そして満を持してコンタドールはチームメイトのヤーリンソン・パンターノ(トレック・セガフレド)とともにコルダルからの下りで飛び出していく。更には同胞でもあるエンリック・マス(クイックステップ・フロアーズ)も合流しコンタドールをアシストしているとも取れる動きを見せる。そのままリードを保ちアングリルへと突入すると、さらにぐんぐん飛ばすコンタドールはあっという間に全ての逃げを吸収、マルク・ソレル(モビスター)、ロメイン・バルデ(AG2R)、トマス・マルチンスキー(ロット・ソウダル)らとともに集団で山頂を目指す。

『この日はコンタドール以外仕掛けることができなかった ©Tim D.Waele 』
それをチームスカイトレインが追走、40秒ほどのタイム差で総合勢を引き連れているが、その集団はどんどんと小さくなり、総合上位勢のみが食らいつく状態となる。コルダルからの下りでは多くの選手が落車し、ヴィンチェンツォ・ニーバリ(バーレーン・メリダ)もその犠牲となったが、アングリルへ突入しなんとかフランコ・ペリッツォッティ(バーレーン・メリダ)のアシストを受け踏ん張っている。

『孤独の戦いは有終の美へと ©Tim D.Waele 』

『単独になっても歯を食いしばって上り続けた ©Tim D.Waele 』
そしてアングリル最大の難所、”山羊の道”と呼ばれる細く急勾配なセクションを迎えると、コンタドールは最後まで踏ん張っていたソレルを振り切り単独走へとなる。ここからはもう己との戦い、歯を食いしばり、時に蛇行しながらも懸命に逃げ切りでのステージ優勝を狙い踏み続ける。一時は後続とのタイム差を1分以上にまで広げたが、やはりフルームは強かった。最強アシストのワウト・ポエルス(チームスカイ)のアシストを受けてじわじわとそのタイム差を詰め始める。

『最後の最後でこのピストレロポーズ! ©Tim D.Waele 』
残り数キロでの最大勾配20%超えのセクションもコンタドールはクリア、そしてガッツポーズを決めるべくゴールへと突き進む。残り僅か、勝利を確信しジャージの前のジッパーを上げると、ゴールラインではお馴染みの”バキューン”ポーズで自らのステージ優勝を祝った。
その僅か17秒後にフルームはポエルスとともに笑顔でゴール、ダブルツールを確定的なものとした。さらにそこから18秒遅れてイルヌール・ザッカリン(カチューシャ・アルペシン)がゴール、なんとか最後の最後で総合3位へと滑り込んだ。ステージ優勝を挙げたコンタドールだが、ザッカリンの踏ん張りにより20秒届かず総合4位となった。

『ザッカリンがこの日もねばリの走り ©Tim D.Waele 』

『最後まで手を緩めなかったフルーム ©Tim D.Waele 』
更にはニーバリがゴール、苦しみながらも総合2位を守り抜いた。昨日までの総合3位ウィルコ・ケルデルマン(チームサンウェブ)はアングリルで苦しみ、なんとか踏ん張ったものの総合5位まで順位を落とした。
「最高の気分だよ!3週間のレースの最後のバトルに相応しいレース展開だっただろ。そしてこれでダブルツールが確定的、これ以上の何も望めないよ!とにかくこの大会期間中僕を支え続けてくれたチームのみんなに感謝したい。今日もチームメイトたちのお陰でこの走りができたからね。それに最後はコンタドールを捉えたかったけど届かなかったね。彼には最高の形で引退の花道を飾れたことに対して素直に”おめでとう”と伝えたいね。」フルームは満面の笑みだった。

『フルームは笑顔でゴール ©Tim D.Waele 』
このステージではアスタナ勢が苦戦、ミゲル・アンヘル・ロペスが総合で順位を落とすと、ファビオ・アルーはトップ10からも陥落、世代最強の選手たちを前に力負けする形となった。またチーム存続が確定したキャノンデール・ドラパックは最後まで予想外の走りを続けたマイケル・ウッズがステージ10位で総合7位と検討したのみならず、ダビデ・ヴィレラが山岳賞を確定、最高の形で最終日を迎えることとなった。
これで残すは最終ステージのみ、まだポイント賞が確定しておらず、マッテオ・トレンティン(クイックステップ・フロアーズ)が最後のチャンスをかけて挑むこととなる。
ブエルタ・ア・エスパーニャ第20ステージ
1位 アルベルト・コンタドール(トレック・セガフレド) 3h31’33”
2位 ワウト・ポエルス(チームスカイ) +17”
3位 クリス・フルーム(チームスカイ)
4位 イルヌール・ザッカリン(カチューシャ・アルペシン) +35”
5位 フランコ・ペリツォッティ(バーレーン・メリダ) +51”
6位 ヴィンチェンツォ・ニーバリ(バーレーン・メリダ)
7位 スティーブン・クライズワイク(ロットNLジャンボ)
8位 ウィルコ・ケルデルマン(チームサンウェブ) +1’11”
9位 ロメイン・バルデ(AG2R) 1’25”
10位 マイケル・ウッズ(キャノンデール・ドラパック) +1’36”
ブエルタ・ア・エスパーニャ総合順位
1位 クリス・フルーム(チームスカイ) 79h23’37”
2位 ヴィンチェンツォ・ニーバリ(バーレーン・メリダ) +2’15”
3位 イルヌール・ザッカリン(カチューシャ・アルペシン) +2’51”
4位 アルベルト・コンタドール(トレック・セガフレド) +3’11”
5位 ウィルコ・ケルデルマン(チームサンウェブ) +3’15”
6位 ワウト・ポエルス(チームスカイ) +6’45”
7位 マイケル・ウッズ(キャノンデール・ドラパック) +8’16”
8位 ミゲル・アンヘル・ロペス(アスタナ) +8’59”
9位 スティーブン・クライズワイク(ロットNLジャンボ) +11’04”
10位 ティージェイ・ヴァン・ガーデレン(BMC) +15’36”
H.Moulinette