フロントシングルで挑むアクアブルースポーツ、平坦から山岳まで早くも結果を出す!多段化へ一石を投じることになるか?ギア比の効率を考えれば11速でも戦えることを実証

今シーズン様々な注目があるが、その中で多くの人の関心を寄せていたのがアクアブルースポーツの1Xシステム(フロント1速のみのフロントシングル)の採用だ。マウンテンバイクやシクロクロスではよく見かける光景であったが、ロードでは多段化ばかりが進んでいく中で、それに一石を投じるかの如くスラムが導入したフロントシングルが果たしてどこまで通用するのかは全く未知数だった。しかしそんな心配は無用だったようだ。まだシーズン開幕直後にもかかわらず、早くもすでにスプリント勝利に山岳賞獲得とキッチリと結果を残して見せている。
現在主力を占めるコンポーネント業界が、リア12速(フロント2速でトータルで24速)に、さらにはそのためにリアエンドのワイド化まで視野に入れているのに対し、あえて段数を減らすことを選択するというスラムの選択はまさに時代逆行と言えるかもしれない。多段化が進めば進むほど、似たようなギア比はより多く発生することとなる。なのであればあえてリアは11速のままでフロントを1枚にし、重量とメカトラのリスクを軽減するように考えられたのがフロントシングルだ。その代わりに重要となるのがリアとフロントのギアの選択だ。それを使いこなしたアクアブルースポーツは一発でフロントシングルの可能性を示して見せた。

『フロントシングルで早くも結果を出した @3T』
開幕を迎えたばかりのオーストラリアでの今シーズンのレース、まずはカデル・エヴァンスグレートオーシャンロードレースでラッセ・ノーマ・ハンセンがフロント44Tにリア11-36T を使用して最大勾配22%の山岳を制して山岳賞を獲得、さらにはヘラルドサンツアーではフロント54T、リア11-36T を使用して並みいる強豪を抑えてのスプリントステージ勝利と、その力をいかんなく発揮している。
そんなフロントシングルのバイクに関してハンセンは、「最初はフロントが変速できないことでリアのギアの間隔がすごく気になるかと思ったんだけど、実際使ってみたらそうでもないどころか、フロントの変速がなくなったことで変速の意識がリアのみになりすごく楽に走れるよ。余計なトラブルの心配も減ったしね。まあ山岳ステージなどでのフロントのギアの選択は今後実際に走っての課題だね。」と語り、現状このセットアップで戦えるという手ごたえをつかんでいるようだ。
しかしまだまだシーズンは長いし、これからのレースでは多様なステージが待ち構えることとなる。そのコースに合わせたギア設定を選手たち各自がしっかりと見極めることとなるだろう。それでもシーズン序盤で結果を残した功績は大きい。それはフロントシングルの一つの可能性を明確に示したと言えるだろう。今シーズンアクアブルースポーツがどのような結果を残すかによっては、来シーズン以降スラムへの変更を検討する強豪チームが出てもおかしくはない。
H.Moulinette