ブエルタ・ア・エスパーニャ第15ステージ:またしてもロペスが連日の爆走!頂上ゴールを制し、一気に総合6位に!フルームはペースアップ走法という攻めでライバルたちを苦しめる

『第15ステージ高低表 ©ASO 』
戦略というのは各チームで違う。そしてエースがいても、それ以外の選手が調子が良ければ、それにゴーサインを出すケースも有る。チームに現イタリアチャンピオンのファビオ・アルー(アスタナ)というエースがいる中でも、ミゲル・アンヘル・ロペス(アスタナ)は自由を与えられ続けている。そしてこのステージでも圧倒的な走力を披露、新たなコロンビアンが第11ステージに引き続きクリス・フルーム(チームスカイ)らを置き去りにしての勝利、一気に総合表彰台争いに浮上してきた。

『最後のグランツール、コンタドールも魅せる ©Tim D.Waele 』
誰が今大会前この男の存在が脅威になると思っただろう。第11ステージを制し、第14ステージでもステージ優勝を果たしたラファル・マイカ(ボーラ・ハンスグロエ)を単独で猛追した男は、このステージでも健在だった。この日はゴールまで緩やかな勾配で長距離上り続ける長丁場でもあり、フルームがこの日のために脚を温存したとコメントするなど過酷なバトルが繰り広げられることが予想された。
選手にはそれぞれ短距離急勾配が得意なクライマーもいれば長距離緩斜面が得意なクライマーもいる。そしてその特性の違いがこのステージを面白いものとした。この日の逃げを追って集団を飛び出していったのは、ロメイン・バルデ(AG2R)、アダム・イェーツ(オリカ・スコット)、さらにはスティーブン・クライズワイク(ロットNLジャンボ)と言った元優勝候補たち、何とかステージ勝利をチームにもたらすべく積極的に動く。順に先行していた逃げを吸収、順調に進んでいく集団を追い、今度は今大会限りでの引退を決めているアルベルト・コンタドール(トレック・セガフレド)が飛び出していく。そしてそれに反応したのはロペス、何の躊躇もなく逃げることを選択したのだ。

『勢いのある選手がチャンスを得る ©Tim D.Waele 』

『コンタドールもいい走りはしたが・・・ ©Tim D.Waele 』
快調に追走する追走メンバーたち、超級ゴールへ向けての上りではイェーツが単独となり先頭を逃げ続ける。脱落したバルデにはコンタドールとロペスが合流する。一時はバーチャルで3位表彰台にまでタイムを伸ばしていたコンタドールだったが、やはり今までのようにスタミナが持続しない。ロペスはあっさりとコンタドールとバルデを置き去りにすると、そのまま一気にイェーツへと迫っていく。後続のフルーム集団もペースを上げるが、それでも単独走を続けるロペスとのタイム差はまったく縮まらない。

『ニーバリは切れ味鈍かった ©Tim D.Waele 』
総合2位のヴィンチェンツォ・ニーバリ(バーレーン・メリダ)がこの日も仕掛けるも差が広がらず、ワウト・ポエルス(チームスカイ)が追走のペースを上げてあっさりと飲み込んでしまう。コンタドールも集団に飲み込まれると、こらえていたがそのまま脱落、早めに仕掛けたツケを払うこととなった。
そのロペスは残り4kmでイェーツに追いつくと、そのまま一気に引き離そうとさらに加速する。一旦はそれに反応したイェーツだったが、突如電池切れのおもちゃのごとく失速、首を振りながら見る見る間に遠ざかっていった。

『ロペスの好調さが怖い存在となりそうだ ©Tim D.Waele 』

『ステージトップ3の顔ぶれ ©Tim D.Waele 』
ロペスはそのまま独走でゴール、今大会2勝目を上げるとともに総合での順位を6位まで上げ、フルームとの差も3分を切った。今まで蚊帳の外だった、ダークホースにさえ名前が挙がらなかった男がここへ来て一気に注目の選手となっている。その後方ではゴール間際になりイルヌール・ザッカリン(カチューシャ・アルペシン)がアタック、単独2位でゴールし、総合3位へとジャンプアップを果たした。ウィルコ・ケルデルマン(チームサンウェブ)もステージ3位には入ったが、総合ではザッカリンの逆転を許してしまった。フルームはステージ5位、最後の最後で遅れを取ったニーバリに6秒の差をつけ、再びフルームとニーバリとのタイム差は1分を超えた。
「素晴らしい一日だったよ。チームが素晴らしいサポートをしてくれたんだ。今日はコンタドールが仕掛けた時点でそれに乗っかることにしたんだ。でも内心かなりの長距離での仕掛けになるのでうまくいくかは半信半疑だったんだ。さらに標高も2000mを超え自分的にも限界かなとは思ったんだけど、でも今僕がこうしてここにいるということがすべてを物語っているよね。」ロペスは自らの限界を超える走りができたことを満足気に語った。
ブエルタ・ア・エスパーニャ第15ステージ
1位 ミゲル・アンヘル・ロペス(アスタナ) 3h34’51”
2位 イルヌール・ザッカリン(カチューシャ・アルペシン) +36”
3位 ウィルコ・ケルデルマン(チームサンウェブ) +45”
4位 エステバン・チャベス(オリカ・スコット) +47”
5位 クリス・フルーム(チームスカイ)
6位 マイケル・ウッズ(キャノンデール・ドラパック) +50”
7位 ヴィンチェンツォ・ニーバリ(バーレーン・メリダ) +53”
8位 ワウト・ポエルス(チームスカイ)
9位 ルイス・メインチェス(UAEチームエミレーツ)
10位 ペッロ・ビルバオ(キャノンデール・ドラパック) +1’02”
ブエルタ・ア・エスパーニャ総合順位
1位 クリス・フルーム(チームスカイ) 62h06’25”
2位 ヴィンチェンツォ・ニーバリ(バーレーン・メリダ) +1’01”
3位 イルヌール・ザッカリン(カチューシャ・アルペシン) +2’08”
4位 ウィルコ・ケルデルマン(チームサンウェブ) +2’11”
5位 エステバン・チャベス(オリカ・スコット) +2’39”
6位 ミゲル・アンヘル・ロペス(アスタナ) +2’51”
7位 ファビオ・アルー(アスタナ) +3’24”
8位 マイケル・ウッズ(キャノンデール・ドラパック) +3’26”
9位 アルベルト・コンタドール(トレック・セガフレド) +3’59”
10位 ワウト・ポエルス(チームスカイ) +5’22”
H.Moulinette