ブエルタ・ア・エスパーニャ第12ステージ:苦労人マルチンスキーが今大会2勝目!フルームが2度の落車で僅かにタイムを失う!コンた逃げてジャンプアップ!ブエルタ劇場は予測困難!


『第12ステージ高低表 ©ASO』
「ドラマチックブエルタ」そんな言葉が似合うのが予測不能なブエルタ・ア・エスパーニャの醍醐味でもある。ジャーニーマンでもあるトマズ・マルチンスキーが誰も予測できなかった今大会2勝目を逃げ切りで挙げると、その背後の総合集団のバトルでは、アルベルト・コンタドール(トレック・セガフレド)が可能性を求めアタック、そして総合リーダーのクリス・フルーム(チームスカイ)がまさかの2度の落車、と最後まで目が離せない展開となった。

『躊躇ない攻めの姿勢が結果をもたらした ©Tim D Waele 』
このステージの主人公となったのは苦労人、幾つものチームを渡り歩いてきたマルチンスキーだった。すでに第6ステージで勝利を挙げていながら、それに満足すること無くこのステージでも逃げに乗る。何とか勝利が欲しいホセ・ホアキン・ロハス(モビスター)や、ダビ・アローヨ(カハルーラル・セグロスRGA)らとともに快調に逃げ続けるマルチンスキー、総合勢に影響のないメンバーの逃げだけにチームスカイもそれを容認、タイム差は8分差以上にまで広がった。
そしてこの日ゴール前最後の上りでマルチンスキーが動く。タイミングよく飛び出すと、ライバルたちをあっという間に置き去りにしてしまう。このままマルチンスキーは一度もライバルたちに脅かされること無く最後まで逃げ切り、笑顔でガッツポーズを決めた。

『マルチンスキーが今大会2勝目 ©Tim D Waele 』
「今日はレースが今住んでいるところに近い場所からスタートしたんで特別だったんだよ。だから沿道にも知り合いが多く来てくれていて、それがモチベーションになったよ。実は今日こそが狙っていたステージだったんだよねだから逃げが決まるまで何度も挑戦したよ。今日はとにかく全力を尽くし力を出し切ったけど、結果に繋がったから良しだね。ましてや今大会2勝目が目の前にちらついたんだったら、行くっきゃ無いでしょ。今日は勝てる自信があったし、最後まで主役でいれたね。夢だったグランツール勝利がこれで2度目!信じられないね。」マルチンスキーな納得の表情を見せた。
ステージ2位にはオマール・フライレ(ディメンション・データ),そしてステージ3位でまたしても勝利できなかったロハス、今大会紙一重のところで勝利を逃し続けるロハスの表情には悔しさが滲んでいた。

『王者と呼ばれた男の走り ©Tim D Waele 』
しかしドラマはさらにその後方で起きていた。同じく最後の上りでまずはニコラス・ロッシュ(BMC)がアタック、そしてそれに反応してコンタドールが総合系集団から飛び出していく。しかしすぐにロッシュは力尽き、コンタドールは単独走を余儀なくされた。後方との距離を確認しながらどうすべきかを考えるコンタドール、だがそこに迷いはなくゴールへ向けてひたすらにペダルを踏み続ける。するとそこに逃げに乗っていたチームメイト、エドワード・トゥーンス(トレック・セガフレド)が合流、二人体制となりペースを落とすこと無く突っ走る。
そして頂上を越え下りに入ってもコンタドールのペースは衰えない。しかしここで今度はフルームが落車、慌ててバイク交換をするが、ヴィンチェンツォ・ニーバリ(バーレーン・メリダ)ら総合系集団に早く追いつこうと焦り、再スタート直後にまたしても単独で落車、細かな土埃がアスファルトに乗り滑りやすい路面に足元をすくわれてしまう。しかしそこはチームスカイ、即座に総合系集団にいたアシスト勢が合流しフルームをアシストする。

『フルーム焦るも最後はチームに救われる ©Tim D Waele 』

『ニーバリはきっちりと動いた ©Tim D Waele 』
ニーバリはこのフルームの落車を受けてアタック、逆転勝利へ手を緩めない。このアタックで総合系集団のペースは上がりフルームにとっては我慢の時間が続く。結局コンタドールは最後までニーバリらに追いつかれること無くゴール、そしてそのニーバリらはフルームに追いつかれること無くゴール、それぞれタイムを稼ぎ出す結果となった。これで総合勢は3位から9位までが1分差の中にひしめき合う大接戦、お互い譲り合わないガチンコ勝負での表彰台争いが激しくなっている。またニーバリとフルームとのタイム差も1分を切り、ニーバリにとっては光明が見え始めている。

『コンタドールは納得の走りで満面の笑み ©Tim D Waele 』
「シナリオよりもうまくいったんじゃないかな。ロッシュとは協調したんだけど彼がすぐに脱落してしまった、でもチームメイトが前に逃げているのがわかっていたからね。下りは路面が滑りやすい上にテクニカルで難しかったよ。だからコーナーでは気を使ったね。フルームは落車したみたいだけど、大きくタイムを失わなかったから良かったね。今日の走りにも結果には満足しているよ。」コンタドールの目には強さが戻っていた。
「今日何か起きるとは思っていたけど、ここまでとは思わなかったよ。コンタドールが誰にとっても驚異だったか、それを追うのに必死だったからね。当然フルームを待つという選択肢はなかったよ。フルームを待っていたら、皆コンタドールに逆転を許してしまう可能性があったからね。」紙一重の総合バトルは予想困難なドラマを見せたことをニーバリはレース後にそう語った。

『チームスカイのチーム力はやはり素晴らしい ©Tim D Waele 』
「まさかの2連チャンゴケだったね。完全にレバーが曲がるし、でもまあ怪我が大したことなかったのは救いだね。それにニエベとポエルスのおかげであれ以上のタイム差を失わなかったね。」フルームは苦笑いと安堵の表情を見せた。
面白くなってきたブエルタ、まだまだ本番はこれからだ。

『ブエルタ名物巨大牛看板再度登場 ©Tim D Waele 』
ブエルタ・ア・エスパーニャ第12ステージ
1位 トマズ・マルチンスキー(ロット・ソウダル) 3h56’45”
2位 オマール・フライレ(ディメンション・データ) +52”
3位 ホセ・ホアキン・ロハス(モビスター)
4位 パウェル・ポリアンスキー(ボーラ・ハンスグロエ)
5位 ステフ・クレメント(ロットNLジャンボ)
6位 ブレンダン・キャンティ(キャノンデール・ドラパック) +1’42”
7位 アンソニー・ペレス(コフィディス・ソルーションクレジッツ) +2’50”
8位 ヤン・ポランク(UAEチームエミレーツ)
9位 アンドレアス・シリンゲル(ボーラ・ハンスグロエ)
10位 ダビ・アローヨ(カハルーラル・セグロスRGA) +3’00”
ブエルタ・ア・エスパーニャ総合順位
1位 クリス・フルーム(チームスカイ) 49h22’53”
2位 ヴィンチェンツォ・ニーバリ(バーレーン・メリダ) +59”
3位 エステバン・チャベス(オリカ・スコット) +2’13”
4位 ダビ・デ・ラ・クルス(クイックステップ・フロアーズ) +2’16”
5位 ウィルコ・ケルデルマン(チームサンウェブ) +2’17”
6位 イルヌール・ザッカリン(カチューシャ・アルペシン) +2’18”
7位 ファビオ・アルー(アスタナ) +2’37”
8位 マイケル・ウッズ(キャノンデール・ドラパック) +2’41”
9位 アルベルト・コンタドール(トレック・セガフレド) +3’13”
10位 ミゲル・アンヘル・ロペス(アスタナ) +3’51”
H.Moulinette