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2007/6/5 13:52

ジロ・デ・イタリア2007 現地レポート 第21ステージ by綾野 真

キラー in ピンク ペタッキの勝利で2つの喜びに溢れたミラノ


システムシックス
『ディルーカのシステムシックスはピンクがあしらわれたマリアローザ仕様』
FSAのハンドルバー
『ディルーカの名前が入るFSAのハンドルバー』
中野喜文
『リクイガスのマッサー、中野喜文さんがザネッタ監督にねぎらわれる』
フィアット
『マリアローザディルーカ仕様のフィアット』
ディルーカ
『ディルーカフィアットに笑顔で乗るダニーロ・ディルーカ(イタリア、リクイガス)』
ジロ最終日はいつも特別な雰囲気に溢れている。ここ2日の憂鬱な雨も上がり、いっそう陽が眩しい。ディルーカのマリアローザ姿も一層華やかだ。リクイガスは特別なピンクのキャノンデール・システムシックスを用意してこの日を迎えた。チームメイトのバーテープもピンクに巻きかえられた。

ディルーカのピンクバイクはFSAの一体型ハンドルとフィジークのサドルもピンク。加えてシディのシューズもピンクのものが新調された。第2ステージでガスパロットがマリアローザを着たときにはヘルメットもピンクだった(ディルーカのために用意されたものだった?)が、ディルーカが被るヘルメットがホワイトなのは、元プロツアーチャンピオンのこだわりか?。(ちなみにディルーカは今年のプロツアーチャンプを狙うことを昨日の記者会見で宣言した)

ディルーカを支えた日本人マッサー"ナカ"と戦略家ザナッタ

そしてリクイガスのスタッフも全員がピンクのネクタイをしめていた。中野喜文マッサーを見つけると、ステファノ・ザナッタ監督が「"ナカ"と一緒に写真を!」と肩を組んだ。1998年からプロサイクリングの世界で、しかも世界のトップチームで働き続けてきた中野さんにとっても初めて経験するグランツールの総合優勝だ。「総合リーダーになると仕事が倍増して毎日忙しくて大変です」と話していた中野さん。すでにゾンコランステージを終えた日から祝勝ムードに駆られたスポンサー関係者などがチームを訪れるようになり、その対応にも追われたそうだ。そのときも中野さんは決して浮かれてはいなかったが。

ザナッタ監督が「メキシコに高地トレーニングに行くときも、世界じゅうディルーカの行くところには必ず"ナカ"も行く」と言うほどディルーカを専属的に担当する中野さん。チャンピオンの身体・心を癒すこの3週間の心労はどれほどのものだっただろう? とにかく中野さんにも「コンプリメンティ(おめでとう)!」。

ザナッタ監督に「今回のジロでは本当にいろいろな"面白い戦略"をもって闘いましたね。面白かったですよ」と話しかけると「そう、今回はいろいろなアイデアを試してみた! そしてそれらがだいたいはうまくいった。それを決して君に言わなかったことは申し訳なかったね」とウィンクしながら答えてくれた。

戦略家と呼ばれる監督の代表格はヨハン・ブリュイネル(ディスカバリーチャンネル)だが、このジロでのザナッタ監督の采配は策略に富んで面白く、興味深いものだった。中野さんの言葉によれば「ザナッタはファッサボルトロ時代に(ジャンカルロ・)フェレッティ監督に学んだことが多いんです。フェレッティはたくさんの引き出しをもっていますからね。今のプロチームの監督陣のなかでも随一の戦略家でしょう。古い考え方の監督が多いなか、彼は考えていることが斬新だと思います」。

熱狂的なファンがつくったフィアット500(チンクェチェント)スペシャルローザカラーに迎えられ、ディルーカはスタートサインへと向かった。そして今日はもうひとりの主役はペタッキだ。ここまでに挙げた4勝、そして厳しい山岳を越える日々に耐えたペタッキにとっても凱旋の日だ。一度はやめて家に帰ろうと思ったペタッキの、チクラミーノを着てのジロ完走と栄光のミラノフィニッシュが同時に狙える日だ。(付け加えれば"ナカ"にとってもペタッキはかつて栄光をともにした仲。ペタッキの復活はナカにとっとも感慨深いものだっただろう!)

ベネチア通りで確定した2つの大勝利

ディルーカ
『集団内で手を振るダニーロ・ディルーカ(イタリア、リクイガス)』
イグナチエフ
『飛び出しを見せたミハイル・イグナチエフ(ロシア、ティンコフ)最後のミラノステージも独走を見せる』
ミラノの中心部、ベネツィア通りがフィニッシュなのはこの数年以来変わらず。ウェゲリュースが体調を崩してリタイアしたのは残念だったが、リクイガスの8人が集団の前を誇らしげに固めて周回サーキットに入ってきた。ディルーカコールが巻き起こり、ライムグリーンの一団に守られたマリアローザ、一番後方に位置するディルーカも思わず片手を挙げて声援に応える。詰め掛けた観客の目を楽しませる10周回。白いジャージのシュレクがセオリーどおりディルーカをマークする位置で走り、ときおり話しかけては笑顔を見せる。

最後の見せ場にフーガ(アタック)男"ロシアの怪童"イグナチエフが魅せてくれた低く、深く、美しい逃げのフォーム。その独走力を警戒されすぎてついにステージ優勝こそ遂げられなかったが、その走りをベネツィア通りに詰め掛けた観客も生で堪能することができた。逃げた距離の合計は469km!。

ゴール地点脇のVIPエリアにはディルーカの両親、兄弟(おそらくはお兄さん)が来ていた。IDカードの名前で確認しなくとも、明らかにディルーカの肉親とわかる似た顔! そしてディルーカの奥さんとペタッキの奥さんのアンナキアーラさんがおしゃべり中。ディルーカとペタッキは仲が良いが、奥さん同士もかなり仲がいいとみた。他にもシモーニの奥さんと娘も来ていた。

10周回を経ていよいよのゴールスプリントでジロのフィナーレだ。すでに強敵のいないペタッキは、少し余裕のあるチームミルラム列車に乗って、じつに2年ぶりにここミラノで定石どうりの自分のスプリントを披露した。

全身シクラメンの紫色(チクラミーノ)のペタッキが両手を挙げ、その後ろでチームミルラムのブルーのジャージが手を挙げる。さらにその後ろではライムグリーンのリクイガス7人とピンクのディルーカが揃ってウィニングポーズだ。

ペタッキ「今目標はツールになった」

ペタッキ
『笑顔を見せるマリアチクラミーノのアレッサンドロ・ペタッキ(イタリア、ミルラム)』
ペタッキ
『スタート前、ペタッキがディルーカを称える』
これで生まれ変わる勝利のステップを5つ踏んだペタッキ。完全復活はもはや固いものになった。

「2年前の僕は家に居てこの最終ステージをテレビで観ていたんだ。脚にはギプスをはめてね。本当に信じられないよ。このジロを疑いをもってはじめたけど、それが今5勝を挙げることができて、チクラミーノを着てミラノに帰ってくることができたんだ」。ペタッキは今日も感慨深く喜びをかみしめた。

このジロでは途中でオンガラートを失ったが、今日もランカスターの働きはうまく決まった。「ランカスターはもともと最終リードアウト(牽引)マンじゃなかったんだけれど、今日も完璧に決めてくれた。ランカスターはトラックの選手でもあるから、彼のスピードには誰も前に出られないさ。6人で今日を迎えたけれど、チームは素晴らしい働きをしてくれた。ミルラムは僕のためのチーム。チーム全員が僕のことを信じてくれた。本当に感謝している」。

「ピネローロでのステージ優勝の後、ジロを続けようか止めようかとずいぶん迷ったけど、本当に止めずに良かったと思う。一度止めてしまうとまたイチから始めなきゃいけなくなるからね。山でも僕に対する観客の声援が凄くて、僕はポジティブに走れたんだ。

さあ、今から僕の目標はツール・ド・フランスになった。今は本当に疲れているけれど、それまでには回復したい。このジロはツールのためのトレーニングとしても良かった。山が厳しくて、僕の体重はずいぶん減った。でもツールに臨むにはもっとスリムマンになる必要があるね」。

そしてペタッキは親友ディルーカの勝利にも祝福を送った。「僕たちは完全にタイプが違う選手。彼はクライマーで僕はスプリンター。でも2人はとても仲がいいんだ。彼がジロに勝ったことは僕も本当に嬉しい。心から祝福するよ、コンプリメンティ!」。

最初の勝利はいつも特別で美しい

ディルーカ
『トロフィーにキスするダニーロ・ディルーカ(イタリア、リクイガス)』
ディルーカ
『トロフィーをリクイガスのチームメイトを分け合うダニーロ・ディルーカ(イタリア、リクイガス)』
マリアローザと螺旋の優勝カップを受けるディルーカはピンクに染まり本当に輝いていた。チームの勝利でもあることを強調してきたディルーカ。そのチームメイトもポディウムの前に集まり、ディルーカのキスを済ませたカップを受け取り、皆で喜びを分かち合った。

「今日は一日中、185kmずっと"ディルーカ! ディルーカ!!"というすごい声援を聞きながら走ったんだ。本当に感激して、少しでも長くその声を聞いていたいと思ったよ。でもゴール地点には両親や妻、家族、サポーターたちが待っていてくれたから、早くミラノに着きたいとも思っていたんだ。今までで一番美しい勝利は8歳のときの人生最初の勝利だった。そのときは脚がふるえたのを覚えている。そして今ジロに初めて勝つことができ、また同じ気分を味わった。「最初の勝利」はいつも特別で素晴らしいね」。

「僕は建築が好きなんだ。今日受け取ったカップは素晴らしいアートだね! 明日になって時間ができれば僕について書かれた記事を読むのが楽しみだよ。明日はリクイガスの本拠のブレシアでパーティがある。楽しみだね」。

※ディルーカの詳しいコメントについては勝利インタビューとして別ファイルでアップします。そちらもお楽しみください。

3週間におよぶジロ・デ・イタリアレポートにおつきあいくださいましてありがとうございました。期間中現地で共に頑張ったフォトレポーター・シロッティチーム(イタリア)、ルク・クラェッセン(ベルギー)のカメラマン3人、そして通訳のミリアム・ノルデマンさん(フランス)の協力とグッジョブにも感謝します。

それではグラツィエ・ミッレ・トゥッティ、 ア・プロッシマ・ジーロディターリア! アリヴェデルチ、チャオ・チャオ!


ジロ・デ・イタリア2007第21ステージグラフィックス

text&photo:Makoto.AYANO
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