名選手と名機 Vol.1:ヘルボルドが第1回DH世界チャンピオンになった時の愛機1990ミヤタ・リッジランナー、ラグ付きクロモリフレームでアルミ、カーボンバイクを蹴散らし優勝の名機
「全力で、落車しないことを願いつつ」がモットーだった”ヘアボール”ことグレッグ・ヘルボルドは、1990年の第一回DH世界選手権を制した男だ。その男が乗っていたのがミヤタ・リッジランナー、ミヤタ独自のスプライントリプルバテッドが施されたクロモリチューブをラグで繋いである、細身で極めてオーソドックスなフレームだ。当時はすでにティグ溶接されたクラインのアルミの極太フレームや、YETIのクロモリとカーボンのハイブリッドフレームなど、新素材が台頭しマーケットを席巻していた。しかしヘルボルドは当時としてはすでに見ることが少なくなっていたラグ付きクロモリフレームで初代王者になってみせた。しかも量産品でバイクラック用のダボまでついた、ヨーロッパではオールパーパスツーリングバイクとしても人気を博していたモデルだ。
ミヤタは1975年よりヨーロッパではKoga-Miyataとして有名であり、また国内工場ではジャイアントのクロモリフレームの下請けをするなど、量産ラグフレームでの技術が高く、その技術に支えられたフレームが結果的に世界を制する形となった。しかし時代はすでに新素材に移り変わっていたため、日本国内ではあまり注目を浴びず、逆にミヤタは独自のアルミ、カーボンの接着フレームの新シリーズのプロモーションの為にヘルボルドに一役買ってもらい、これが大ヒット商品となった。
シマノのテストライダーを努めながら、ロックショックスのテストもし、更にはテンションディスクを投入するなど、最先端の技術を惜しげもなく使いこなした男だったが、メインフレームは極めてオーソドックスで、時代の流れと逆行していたラグ付きクロモリフレーム、しかしこれが世界の頂点を極めた意義は大きい。
H.Moulinette