自転車の家電化はどこまで進む?パワーメーターに電動変速コンポーネント、電動アシストサイクルまで、電気のないサイクルライフはもう過去のもの?住み分けとジャンル分離の可能性
昨今自転車の家電化は飛躍的に加速している。電力を使わない自転車なんて考えられない、もはやそう口にするサイクリストさえいる時代となった。一体どこまで家電化は進むのか、そしてこれは既存の自転車の枠に該当するものなのか、そのあたりを考えてみよう。
パワーメーターでケイデンスから心拍数など全てをモニターし、電動変速コンポーネントで変速をする。場合によってはそこにさらに電動アシストが加わる。これは近未来の話ではなく今現在の家電化している最先端の自転車の姿だ。もはや人力が必要なのはわずか、健康管理まで出来てしまう家電化はある意味人間をアシストするものとなっている。そう、家電化は”便利”なのだ。利便性を追求する人間が生み出した新たな自転車の姿とも言えるだろう。
『全てのデータを管理できるパワメーターは便利だ (C)Tim D.Waele』パワーメーターなど省電力(ボタン電池)で動き、電力が失われても自転車そのもの機能に差し支えのないためあまり気にはならない。電池がなくなれば、ただ単にちょっとした流行りのデコレーションを自転車につけていると思えばいいだろう。ただ使用に際しては実はこの電池が曲者で、ボタン電池はメーカーにより温度変化により電圧変動が大きいのだ。確かにその違いは微々たる物かも知れないが、そこに出る数値に健康管理を委ねている人にとっては、気温変化によっての電池の持ちがメーカーにより変わる事への配慮を怠ることはないだろう。
『電動コンポが一段落したら、次はどこへ向かうのだろう?オート化? (C)Tim D.Waele』昨今主流となりつつある電動変速機、コンポーネントメーカー側は必死になってその普及を進めるが、すでにその調整などは一店舗では対処しきれなくなり始めており、”街の電気屋さん”が活躍する時代も近いだろう。専門店でなくとも、ワイヤー式であれば職人の感覚で街の自転車さんが修理や調整をしてくれた時代徐々に過去のものとなり、壊れたら電気屋へ、そんなことが当たり前になるかもしれない。
電池がなくなると固定位置でしか対応できなくなる電動コンポーネント、つまりは多段化自転車から一気にフィクシー、シングルスピードに早変わりするのだ。一粒で二度美味しい、つまりはロードバイクとシングルスピードが同時に楽しめるお得感がある。ただし山の中で電池切れを起こすと・・・想像を絶するハードなトレーニングが待ち構えることとなるだろう。
『電動バイクは格好いいものが多い、このケーターハムも素晴らしい (C)Tim D.Waele』
電動アシスト自転車は海外で確実に広がって降り、それはもはや電動バイクと言ってもいいだろう。日本ではオートバイとの区分の問題で制約が大きいために、限られた形の電動アシスト自転車しか存在はしない。それでも電動アシスト自転車といえば電池パック、小さくなってきているとはいえまだまだ大きいのが現状だ。電動アシストを使えばスイスイどこへでも力をさほど使わずに進んでいける。今まで苦手だった坂道もらくらく、行動範囲が広がることは間違いないだろう。しかし電池がなくなればただの重い自転車に成り下がってしまう。それは時に最強の大リーグ養成ギブス的トレーニング機材となる。ストイックに意図的に電源を切って筋トレ代わりに使用することも出来るだろう。
便利だからこそ家電化するのだが、果たしてどこまでこの家電化というものは必要なのだろう。そしてどこまで家電化されたものまでを既存の”自転車”という枠の中において置けるのだろう。この定義はいずれかわり、別分野として”自動化自転車”、もしくは”家電自転車”、”電動自転車”となることも予想される。
それはさておき科学と時代の変化というものは世の中には必要不可欠なものでもあるし、自動化されるその技術は素晴らしい物がある。筆者も個人的にどんなものが次に出てくるのかを楽しみにしている。多様化するニーズに合わせた進化は大いに結構であるし、楽しみ方は人それぞれである。ただそれと同時に、自転車の家電化はなくても困らないものでもある。そもそもが人力で移動するための道具であり、無くても不自由するものではない。また利便性にかまけて人が体をあまり使わなくなった時に人の体は退化をしていくこと、また数値では計り知れないこともたくさんあるということも頭に入れておく必要はあるだろう。
H.Moulinette