650c ロードバイクを見つめなおす 今あえて650cはいかが?700cがスタンダードな中で見直されるべき存在、選択肢の幅が広がれば、ライドスタイルもより細密化される?
ホイールサイズというものは時代によって変化していっている。特にMTBでは26インチから29インチ主流へとなりかけたが、29インチを小柄な選手が乗れば正直格好悪い,タイヤに乗られているような惨めなセッテイングとなり、そのためまた一回り小さい650bが登場した。しかしそれでも26インチは未だにしっかりとその座を維持しており、3つの規格が乱立した状態となっている。
それに対してロードレーサーは長らく650cと700cという2つの規格が混在してきたが、海外での700cの圧倒的シェア、そして食生活の欧米化に伴う日本人の体格の変化により、日本でも700cが主流となり、650cは一部トライアスリート、現在全体の25%程が使用していると言われているが、自転車界全体的で見れば風前の灯となっている状態だ。僅かに女性用という名目で最近では作られている機種もあるが、それでもやはり手に入るリムとタイヤが圧倒的に少なく、明らかにマイノリティー化しているのが現実だ。
身長が160cm台の人間、そして日本人体型にとっては実は650cはまだまだ主流とであってもおかしくはない、ちょうどいい寸法なのだ。日本の全人口のうち10台後半からから60台までの平均身長が170cm、しかも同体格の欧米人からすれば足が短い事を考えれば、700cよりも650cの方が体格にあっている場合がかなりあるのだ。ある大手メーカーが統計から導き出したデータによれば、700cのロードバイクで52cmまでのフレームに乗る人間であれば、650cの方が最適なポジションが出やすいとしている。しかもこれは欧米人体格での話だ。
現在海外ブランドの多くは欧米人の平均体格からそのフレーム寸法を割り出しているが、それでは胴や手足の長さのバランスの違う日本人にとっては体に合わないことが多いのだ。結局ステムの長さやスペーサーなどで調整はするのだが、やはりどこか見た目的に微妙になってしまうことが多いし、乗り味もしっくりこないことがある。それに対して日本のメーカーは日本人の体格に合わせた設計をしているので、700cであっても小柄な人にしっくりとくるバランスと見た目となっている。でもどうせなら、より設計に余裕が持てる650cでもいいのではと思ってしまうのだが、先にも述べたとおりパーツの入手難からメンテナンスなどで困ることがあるため、敬遠されているのだ。
650cのメリット・デメリットなどは語り尽くされているが、実際レースシーンでも1990年台後半から2000年代初頭にかけてはツール・ド・フランスの山岳などで650cを使い結果を出したケースも有るなど、一概に一般的に言われているデメリットだらけということは無いように感じられる。それよりもやはりメーカー主導の世界だけに、デメリットを謳うことで一極集中化させた感が強いように感じられる。
今回は手持ちの650cを眠っていたパーツで組み上げ、普段乗り慣れている700cと比べて見ることにした。もちろん使い方にもよるだろうが、乗り慣れた700cと650cを乗り比べて感じたことを率直に語ってみたいと思う。まず感じたのは、踏み出しの軽さだ。その踏み出しの軽さが最初はフワフワとした感じに感じられ違和感を覚えたが、慣れてくれば全く問題はなかった。後もう一つかなり感じられたのは実際の加速(速度)と加速感にギャップがあることだ。700cに慣れているからだとは思うが、実際の加速と加速感がマッチしない様に感じられた。これは距離をこなしても、明確に違いが感じられたため、それぞれのホイールサイズによるその特性の違いによるものだろう。
また長距離を乗る場合、当然のことながら650cの方がより多くクランクを回さねばならないが、100kmほどの長距離を走ってみても正直そのデメリットをあまり感じることはなく、同じような感覚と時間で走り切ることが出来た。またジオメトリーの違いからくるしっくり感は650cでかなり実感することが出来た。毎年かなりのメーカーの車種を乗り比べているが、やはりそれらの多くと比べても無理がないというのが一番的確なのかもしれない。
上りでは個人的には650cの方が上りやすいと感じた。これは乗り手がケイデンス系かパワー系かでも変わってくると思われるが、やはりより軽い力で上れる感じがし、タイムも縮めることが出来た。下りではさほどの差は感じられなかったが、ただコーナーでの感覚が700cとは若干変わるためその辺りは慣れが必要かもしれない。
650cで唯一大きなマイナスと感じたのは、路面のショックをより大きく感じるということだ。路面が荒れれば荒れるほどそれは顕著に感じられた。振動吸収性に関してはMTBで26インチよりも29インチのほうがより衝撃を吸収するという関係性と同じ事が言えるのかも知れない。タイヤの径のみならずタイヤ幅が細かったことも影響していると思われるが、選択肢が少ない650cに取ってはこの部分はマイナスだろう。ただ路面が荒れていないな状態では全く問題がなく、決して700cに劣っているわけではないことがよく分かる。
やはりメリットとしては、700cでサドルを目一杯下げ、短い突き出しのステムを使い、タイヤとタイヤの間に挟まっている感があるよりは、650cでサドルを高い位置に持ってきたほうが格好良いと感じた。見た目は乗り味に関係はないが、やはり乗るからにはその姿も美しくあってほしいと思うのは人間の感覚としてありだろう。
結論としては650cはもっと評価されるべきだろう。今本格的な650cフレームといえば本当に選択肢がない。もっと選択肢として尊重されるべきであり、ホイールメーカーやタイヤメーカーにもう少し選択肢を増やしてもらいたいと思う。そうすればより多くの人があえて650cを選択するということも確実に増えるだろう。実際に今では650cに乗ったことがない人も多いのではないだろうか。機会があればぜひとも一度乗ってみて欲しい。知識としてネットやショップなどから聞かされてきたのとは違った側面を必ず感じるだろう。やはり物事は自分で経験してみなければ、その本質はなかなか見えてこない。
H.Moulinette