ブエルタ・ア・エスパーニャ第20st:最終山頂バトルはランダが男泣きの勝利!総合バトルはカラパズが攻撃に徹し最後まで盛り上げるもトップ3に決定打なくマスが冷静に走り切り総合優勝確定的

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総合優勝争いは昨日大きな差がつかず、さらに攻撃も断片的という沈黙にも近い様相を呈した。唯一動いたのは元気印のリチャード・カラパズ(EFエデュケーション・イージーポスト)、そしてこの構図は最終山岳決戦でも同じだった。勝つためにはイチかバチかと攻撃を仕掛けるカラパズに対し、自らの総合順位を守るような走りに徹したのがトップ3、一つでも上の順位を目指すよりもまずはディフェンスとなったことで、直接対決は最後の山頂ゴール手前でようやく総合3位のフェリックス・ガル(デカスロンCMA・CGM)が抜け出すが時すでに遅し、総合1位のエンリック・マス(モビスター)と総合2位のプリモズ・ログリッチ(レッドブル・ボーラハンスグロエ)のどちらも逆転できずに、トップ4に入れ替えはないままの少し物足りない決着となった。

そんなステージはステージ優勝争いが白熱した。Uno-Xモビリティはノルウェイ国王逝去の日にツール・ド・フランスでステージ優勝を挙げたが、この日は前日に亡くなったアストリ王女に捧げるべく、チームメンバ6人が逃げに乗りステージ優勝を目指す走りを見せた。まるでチームTTかのように常時隊列を組み山岳ステージを駆け抜けるUno-Xモビリティ、圧倒的な存在感で展開を盛り上げてくれた。狙ったのはエースのトビアス・ヨハネセン(Uno-Xモビリティ)でのステージ勝利だったが、予想外の展開が待っていた。逃げ続ける先頭集団に単独で追いついてきたのは今シーズン限りでソウダル・クイックステップを離れることになったミケル・ランダ(ソウダル・クイックステップ)、なかなか思ったような結果が残せずにもどかしさを口にしており、「早く今シーズンが終わってほしい」と先日も口にしていた。

©ASO

ランダは冷静にUno-Xモビリティの展開に対応すると、人数が減った最終局面でアタックを仕掛ける。ヨハネセン、そしてもう一人単独で追いついてきたラムセス・デブライネ(アルペシン・プレミアテック)の3人による勝負が始まると、ランダは切れ味は鈍いが力強くアタック、これに疲れ切ったヨハネセンもデブライネもついていくことができない。じわりじわりと広がっていくその差、ランダは最後まで同じペースでペダルを踏みぬき、勝利を確信したゴール前では男泣き、目に涙をためながらガッツポーズでステージを制した。ランダにとってはこれがブエルタ・ア・エスパーニャでは2015年以来11年ぶりの勝利、最後のグランツールでの勝利(ジロ・デ・イタリア)からも9年たっており、久方ぶりの勝利のプロ通算17勝目となった。36歳の大ベテランはグランツール総合エースに何度も指名されてきたがここ数年は低迷、来シーズンは心機一転自らが2011年に所属していたエウスカルテル・エウスカディへの移籍が決まっている。

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その背後では総合バトルが勃発するが、先頭を行くランダとのタイム差は縮まるどころか広がっていく。これはかなり異質な光景であり、総合バトルがいかにスローな世界で行われていたかということになる。トップ4が残った展開からまずはガルがアタック、爆発力はないもののライバルたちはこれに直ぐにはついていけない。そしてその後マスが単独でこれを追い、ログリッチはいつも通りマイペースでゴールを目指した。ただゴールまでの残り距離が少なく順位変動を起こすにはこのアタックは遅すぎた。カラパズはこの日何度もアタックを仕掛けたことへの疲れもあり最後はログリッチの背後でゴール、そしてこの日のステージ中盤でカラパズとも共闘をした総合11位のセップ・クス(ヴィズマ・リースアバイク)は、一度カラパズと共に総合勢に吸収された直後に再アタック、ロングアタックを決めた末に大きくタイムを奪い返し、一気に総合5位まで順位を上げる見事な走りを見せた。

第20ステージ、山頂が連なるハードな最終バトルはスタートの旗が振られると同時にワウト・ファン・アールト(ヴィズマ・リースアバイク)が飛び出していく。既にポイント賞ジャージは確定的だが、この日はあえて山頂をすべて制しての山岳賞狙いの走りに出る。イヴォ・オリベイラ(UAEチームエミレーツXRG)と共に飛び出したファン・アールトはその後Uno-Xモビリティの6人を含む12人が合流を果たす。その背後ではメイン集団から50名近い選手たちが飛び出す形となり、状況は混沌とする。だがこの50名ほどの逃げこそがこの日の総合系のバトルにとっては重要となる。それぞれのチームがアシスト選手をここに送り込み、勝負の局面で呼び戻しアシストさせるという王道の戦略だ。ここにはランダやデブライネに加え山岳賞のサンティアゴ・ブイトラゴ(バーレーン・ヴィクトリアス)らも入り、それぞれが思惑を持った集団となった。

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スタートから80㎞ほどで、先頭のファン・アールトらから3分半ほど遅れて50名の大所帯、さらにその6分後方にメイン集団という展開となり、疲労と共にそれぞれ選手たちが数を減らしていく時間となる。そのタイミングを見計らったかのようにメイン集団ではまずはクスが残り97㎞でアタック、さらに昨日と同じ95㎞でカラパズがアタックを決める。このカラパズの走りに危機感を持ったのはデカスロンCMA・CGM、レース中盤にもかかわらずアシストをフル動員してカラパズを追う。自らの総合順位死守の為にデカスロンCMA・CGMが動く中、先行させた集団にアシストが多いマスとログリッチは展開をデカスロンCMA・CGMに委ねることとなる。

何とか12㎞を要し山頂でカラパズとクスを捉えるが、これによりガルはアシストをかなり失ってしまう。さらにはこれについていけたのは総合トップ3のみ、この段階で総合5位のオスカル・オンリー(ネットカンパニー・イネオス)らも脱落していってしまう。

そして次の山頂への上りでクスは再度アタックを仕掛けると、あっさりと抜け出していってしまう。山頂を総合勢から1分先に超えていったクスは、ここからチームメイトたちのアシストを受け大逆転を狙い爆走を開始した。そして総合バトルではカラパズが何度となくアタックを仕掛け、クスと同じく大博打に打って出ようとする。だがガルが徹底してカラパズをマーク、すべて不発に終わってしまう。その後更なるアタックを警戒してガルがカラパズに張り付いたことで、この集団のペースは大幅に落ちてしまう。それぞれチームメイトが前方の集団から番手を下げてアシストをするが、ガルにもログリッチにも逆転優勝を狙うような動きは一切ない。このことがクスに大逃げを後押しし、どんどんとその差は広がっていく。

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先頭ではUno-Xモビリティの激走にランダ、そしてデブライネがそれぞれ単独で合流する猛追を見せ、ステージ優勝争いが動き始める。この二人の合流によりここまで大逆転を目論み山岳ポイントを積み重ねたファン・アールトのチャレンジも終焉を迎えた。後から合流した二人はその勢いのままに展開をさらに加速させ、結果それに対してUno-Xモビリティは最後のエース、ヨハネセンが立ち向かうという3つ巴の展開となった。だが脚を残していたのはランダ、総合系の脚質を持つ男が、ベテランとしての意地を見せ勝利した。

そして総合バトルはその後大きく動く来なく推移、クスが大幅にタイムを削っても総合トップ3までは届かず、ガルも最後の最後でしか仕掛けなかったことで勝敗は決した。マスは冷静にすべてを見守り続け反応、ガルからは遅れてのゴールとなったが余裕で総合リーダーの座を守り抜いて見せた。

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ミケル・ランダ(ステージ1位)
「不運は共感を呼ぶんだよ。誰もタデイ・ポガチャルのように成功体験が多いわけではないんだ。僕はただの平均的な選手だし、成功体験よりも失敗のほうが圧倒的に多いんだ。だからこそ沿道の観衆の応援がより身に染みたよ。いつもグランツールでは不運続きだったけど、ここまで何もしてきていないから、そのまま終えるのは嫌だったんだよ。だから今日は勝利のために全身全霊で踏み続けたよ。最高の形でシーズンを終えられて本当によかったよ。今日の勝利はパワーの問題ではないね。これは経験と勘に基づいた勝負どころの嗅覚の差だよ。」

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エンリック・マス(総合1位)
「もうずっとゴールまでの距離をカウントダウンしていたよ。明日が終わって勝者として名を呼ばれたら、それはチームのおかげだよ。このチーム抜きにこの結果はあり得なかったよ。苦しみ抜きに勝利なんてありえないんだよ。」

フェリックス・ガル(総合3位)
「カラパズの最初のアタックとその次の攻撃が本当に痛手だったよ。彼はアタックの嗅覚が抜群だから、いつが一番効果的かをわかっているんだよ。そのあとは申し訳ないけど見ている人には退屈だったかもしれない。彼をひたすらマークするしかなかったんだよ。カラパズを行かせてしまったら全てがひっくり返ってしまっていたかもしれないからね。」

リチャード・カラパズ(総合4位)
「失うものはなかったからね。レースは勝たないと意味がないんだよ。だから仕掛け続けたし、早めから仕掛けていったんだよ。できるだけのことはやったから納得だよ。

第20ステージ順位
1位 ミケル・ランダ(ソウダル・クイックステップ)   4h58’01”
2位 トビアス・ヨハネセン(Uno-Xモビリティ)   +47”
3位 ラムセス・デブライネ(アルペシン・プレミアテック)   +1’27”
4位 ポー・ミケル(バーレーン・ヴィクトリアス)   +3’00”
5位 ウルコ・ベラーデ(エキッポ・ケルン・ファルマ)   +4’12”
6位 ヤン・ヒルト(NSNサイクリング)   +4’18”
7位 ヨルゲン・ノードヘイゲン(ヴィズマ・リースアバイク)   +4’35”
8位 セップ・クス(ヴィズマ・リースアバイク)
9位 ウォルター・カルツォーニ(ピナレロQ36.5)    +4’48”
10位 ロレンツォ・フォーチュナト(XDSアスタナ)   +4’53”

ブエルタ・ア・エスパーニャ)総合順位
1位 エンリック・マス(モビスター)  70h56’58”
2位 プリモズ・ログリッチ(レッドブル・ボーラ・ハンスグロエ)   +2’15”
3位 フェリックス・ガル(デカスロンCMA・CGM)   +2’44”
4位 リチャード・カラパズ(EFエデュケーション・イージーポスト)   +6’54”
5位 セップ・クス(ヴィズマ・リースアバイク)   +8’45”
6位 オスカル・オンリー(ネットカンパニー・イネオス)   +9’28”
7位 ヤコブ・オムルツェル(バーレーン・ヴィクトリアス)   +10’38”
8位 クレメント・ベルセット(グルーパマFDJユナイテッド)   +11’41”
9位 クリスチャン・ロドリゲス(XDSアスタナ)   +11’59”
10位 ハロルド・テハダ(XDSアスタナ)   +14’40”

H.Moulinette