スプリンターとは?最強スプリンターの一角、”ゴリラ”グライペルの勝てない苦悩、「牙を失ってしまった」、対してライバルたちは勝利量産中
スプリンターと言うのはゴール前で力強く勝負し、勝利を勝ち取る選手のこと、勝利を量産できるポジションであるとともに、勝てなければその責任を全て背負わねばならない過酷なポジションだ。そんなスプリンターの地位を守るのは並大抵のことではない。毎年のように新たな選手が台頭し、それでも勝ち続ける男たちはほんの一握りだ。つい数年前まではマーク・カベンディッシュ(ディメンション・データ)が世代最強と呼ばれてきたが、それが今はピーター・サガン(ボーラ・ハンスグロエ)、マルセル・キッテル(クイックステップ・フロアーズ)を中心とした覇権争いが繰り広げられている。そしてカベンディッシュと渡り合い同じく最強と呼ばれてきたアンドレ・グライペル(ロット・ソウダル)が今勝てない。
2008年度以降出場してきたグランツールでは必ず勝利を挙げてきた記録が今年のツール・ド・フランスでストップ、7度中4度のスプリントステージの表彰台に上がったものの、結局勝利を上げることができなかった。勝敗は紙一重とは言え、これ以降出場したレースでグライペルはまったく思ったような走りができていない。
記録が途切れてしまったということも影響していると思われるが、完璧なチームメイトのお膳立てから勝利できないことで、グライペル本人も現状へのいらだちを感じているようだ。
「見てわかるように、チームはいつも通り僕のために全力を尽くしてくれている。でもそれでも僕が勝利への本能を失ってしまっているんだ。牙を失ったスプリンターは勝てないんだよ。この間のレースでは最高の形でゴール前を迎えながらもそのままスプリントさえできなかった。今はまったくどうしたら勝てるかわからないよ。」”ゴリラ”は完全にスランプに陥っているようだ。
それに対してサガン、そしてそのスプリントスタイルで物議を醸しているがナセル・ブアニ(コフィディス・ソルーションクレジッツ)、アレクサンダー・クリストフ(カチューシャ・アルペシン)らがここへ来てきっちり勝利を挙げている中で、1人だけまったく勝利にも絡めない状況に、苦悩している。
「チームとしても腹立たしいが、それ以上に勝てないことで本人が一番いらいらしているはずだからね。」チーム監督はそう話すが、今のグライペルの状況と精神状態は今まで見たことがないほどに低空飛行状態となっている。
人気もあり実力派、そして誰よりも模範的で紳士的なスプリントをするグライペルは果たして復活するのか、それともカベンディッシュ同様に勝てないでもがき続けるのか、今グライペルは岐路に立たされているのかもしれない。
H.Moulinette