Frame Building Project Vol.1 Material 自分でフレームを作れるか?第一弾~フレーム用素材を考える~クロモリからカーボン、ダンボールまで
自分で自転車のフレームを作ってみたい、自転車好きであればそう考えたことがある人も少なくないだろう。日本国内では少ないが、海外では自分でフレームそのものを作ってしまうガレージビルダーが少なからずいるのだ。フレーム用パーツの専門店まであり、日本とは違い道具や材料が安価で手に入る。また多くの高校で専門技術のクラスを選択でき、溶接などの技術を気軽に身につけることができるだけでなく、ガレージや庭が広いからこそできるといった理由もある。
でもそれでも作ってみたい!ではどうすれば作れるかを一から考えてみようと思う。まずはいろいろな素材とその特性から見てみよう。
カーボン
昨今自転車の素材はカーボンが主流を占めつつある。それは軽さと強度が両立された素材であるからにほかならない。しかしカーボンは高価であり、破損しやすいという問題がある。転倒やぶつけるだけでも割れてしまう可能性があり、そういった意味でも財布にとても厳しいのが現状だ。
しかしそれでもレースシーンやハイエンドはカーボン一辺倒の傾向がある。年々軽量化も進んでいるが、それらはシンプルに言えば極限まで削られたフレームであり、やはりレース専用に設計されており、乗ることに気を使わざるをえない。
当然簡単に扱えるシロモノではない。材料は購入できるが、その制作には技術と設備が必要となってしまう。ただし出来ないことはない。僕自身の友人で、若きセミプロのスロベニア人選手は今年ワンオフのカーボンフレームを作るメーカーを立ち上げた。彼は自身自分の作ったフレームでここ数年プロレースに参加し勝利もあげている。彼の場合確かにそれなりの設備は確かに持っているが、それ以上に技術力があり、商品レベルのものを仕上げることができる。いずれ彼の自転車もとりあげていこうと思っている。
そこまで求めなくとも使用出来るレベルのフレームであれば、アメリカなどでもガレージで自作している強者もいる。そう考えればできないことはないようだ。モノコック、そしてラグで継ぐ形も可能であり色々なバリエーションが可能なところも面白い素材ではある。
チタン
もう一つの高級素材チタン、加工が難しいこともあり以前のようにどのメーカーもハイエンドラインナップに加えるようなことはなくなった。その代わりに専門メーカーが台頭し、完全に住み分けができている。重量面でも以前は最軽量と謳われたチタンも、今ではカーボンに競り負けると共に、クロモリやアルミの新素材にも負ける事さえある。それでもチタンはチタン、唯一無二の存在なのだ。だから人は個性を求めてチタンを欲する。
これを家庭で個人レベルで扱うのはかなり難しい。材料費もさることながら、設備部分で困難である。さすがにチタンのガレージメーカーは海外でも少ない事からもそのことが分かる。ただ最高峰のチタンビルダーは、チタンの板を丸めてパイプを作るところから行うビルダーもおり、ある意味究極のこだわりを持つビルダーが行き着く終着点なのかもしれない。
アルミ
今では当たり前になったアルミフレーム、最初クラインやファンクといった極太フレームで登場したときは正直驚かされたものだ。今ではすっかり安くなったアルミフレームだが、やはりこの素材はマスメーカー向けだ。ハイドロフォーミング(水圧による成形)といった技法を使えばモノコック構造など様々な形を作ることもできるが、これはあくまでも設備があってのこと。
パーツを作るために旋盤作業で削りだすにはいいが、溶接などでフレームそのものを作るには個人では難しい。チューブなどのパーツは手に入るが、マスプロメーカー品が安くなってしまった今、加工性の悪さも相まって自分で作るにはイマイチ魅力が感じられない。
クロモリ
最もオーソドックスな素材であり、昨今また注目を浴びている素材クロモリ、自由度があり、いろいろな加工に向いている。海外では多くのガレージビルダーが自分でフレームを作るのに使う素材であり、個性も色々と出しやすい。必ずしも溶接をする必要がなく、ラグを使う技法もある。ラグとは簡単に言えば継手であり、その形状などで個性を出すこともできるのだ。またパイプの種類も豊富に手に入るため、ジオメトリーから細部に至るまでいろいろな技法が可能だ。
海外ではガレージビルダー向けに通販サイトもあり、様々なパイプやラグを手に入れることができる。日曜大工など趣味としてのフレームビルディングが確立しているということだ。
溶接は難しいが、ロウ付で行うラグフレームであれば日曜大工店で手に入る材料で行なっている強者もおり、ガレージビルドには最も現実的である。
ウッド
一部小規模メーカーが環境にやさしい素材として製作をしているが、素材としては自転車の原型であるドライジーネが木製であることからしても最古の素材といえるだろう。要所要所には金属パーツを配する必要性はあるが、メイントライアングルは木製で制作することが可能だ。
世界にその名を知らしめたSANOMAGICのマホガニーの自転車などは、カーボン並み、もしくはそれ以上とも言えるの走破性と性能を達成している。そういった意味では大いに可能性がまだまだある素材とも言える。
幾つかの小規模メーカーではそれぞれが異なったコンセプトのもと制作しておりその考え方が大きく違いどういった形で木材を使うのがベストかというのは一概には言えない。木目などの関係もあり、木材の特性に関する知識がかなり必要とされる。また重量部分でもおおまかに言えば、軽ければ弱い構図が成り立ち、どの木材を使うか、また何処に使うかなど悩む部分も多い。
材料自体は手に入るのだが、実用性を考えるのであれば綿密な計算と図面をひかなければ容易には作れないだろう。また木目を活かすには(強度的に}曲げの技術も必要とする。
バンブー
エジソンが電球を発明した際に、フィラメントとして使用されたのが竹だ。ありとあらゆるものに使われる竹、軽量で強靭なその素材は自転車フレームにも使われている。今現在幾つかのメーカーが本格的にバンブーフレームを作っているが、実は何十年も前にも使われていたことのある素材なのだ。パイプ状のものは釣竿としても昔から使われ、そのしなりからも分かる通り振動吸収性が特徴である。またカーボンでよく使われるUD(ユニ・ダイレクショナル)、つまり「一定方向のみのカーボン繊維」の原型とも言える。つまりは自転車に向いた素材である。
ただしそのまま使えるわけではなく、十分な強度を確保するには焼入れをして油抜きや調整をし、まっすぐに、そして強度を上げてやる必要がある。そういった意味では和竿などを作る際の技術をここでは活かすことが出来る。
既存のバンブフレームは接続部分を天然繊維やカーボン繊維で巻いてエポキシやレジンで固めたものと、ラグを使ったものがある。この辺りの自由度もガレージビルド向けといえるだろう。
その他
そして最近ダンボールの自転車というものをニュースで見た。発展途上国向けに特殊加工した段ボールで作られた自転車は、激安で出来るらしいが、その加工工程は当然今のところ秘密らしい。でもこれかこれでエコな素材ができたものだ。
さて、家でできるものとして、まずはどんな一台をまずは最初に作ってみよう。
H.Morine