イタリア北部、ヴェネト州の古都トレヴィーゾを舞台に、毎年7月開催される“グランフォンド ピナレロ”。この自転車版マラソンイベントは、イタリア国内でも屈指を誇り、毎年4000人以上のライダーが参加。何と、12回目を迎えた今年の大会には、ツール・ド・フランス5連覇のミゲール・インデュラインが一般ライダーとともに走る姿も見られた。
コースは、距離200km・累計標高差約2400mのグランフォンド、距離126.5km・累計標高差約1200mのメディオフォンド、さらに地元グルメを味わいながらのんびり走るグルメフォンドの3つ。各コースに参加したライダーは、それぞれのペースでゴールをめざす。
この大会の人気はイタリア国内だけに止まらない。ドイツやイギリスなどの他の欧州諸国や、オーストラリア、アメリカなどからも多くのライダーが参加。日本からもオフィシャルツアーで参加した19名が各コースを駆け抜けた。
ピナレロの本拠地であるトレヴィーゾをスタート・ゴールで実施されるこの大会の魅力は何と言っても、数千人のライダーが一斉にスタートし、時に競い合い、時に助け合いながらゴールをめざす雰囲気。自転車を通して多くのライダーの気持ちが一つになり、大きな集団や隊列を組みながら走るときの高揚感は格別だ。
多くのライダーと共にゴールをめざす雰囲気が“グランフォンド ピナレロ”の魅力。自転車を通して、リアルなイタリアを感じる瞬間だ。

多くのライダーと共にゴールをめざす雰囲気が“グランフォンド ピナレロ”の魅力。自転車を通して、リアルなイタリアを感じる瞬間だ。
絶景の“サン・ボルト峠”。岩肌を縫うように進みながら次第に標高を上げていき、眼下にはいま自分が走ってきた九十九折の道を眺めることができる
北イタリアの趣深い街並みの中を抜けてコースは続いていく。観光ガイドには掲載されていないような小さな町だが、リアルなイタリアの雰囲気を体感できる
コースは、スタートしてしばらく平坦路が続くヴェネト平野を進む。その後、ブドウ畑の中を走る丘陵地帯、九十九折りの道が続く山岳地帯と続き、さらに小さな田舎町をつなぎながら走っていく。
スタートからゴールまで、多くの絶景に出会うことのできるコースレイアウト。中でも、平均傾斜11%の上りが続く“サン・ボルト峠”(Passo San Boldo)は絶景中の絶景だ(グランフォンドコースのみ)。切り立った岩壁に迫るように進み、九十九折の道は折り返す際にトンネルを抜け、次第に標高を上げていく。
また、コースの曲がり角ごとに地元のボランティアが立って誘導してくれるので、安心して走ることが可能。さらに、沿道には地元のサイクリストや子どもが立ち止まり、手をたたいて応援してくれる姿も見られる。絶景と人が織り成す景色は、自転車で走らなければ味わうことのできない特別なものだろう。
コース後半には、歴史深い雰囲気の町中を走り抜けるポイントもある。石畳の道両側には趣のある建物が並び、道脇のバール(コーヒーや食事、お酒などを楽しめるイタリアのカフェのような場所)では、地元の人がガゼッタ(ガゼッタ・デル・スポルト/ピンク色の紙面が特徴的なイタリアのスポーツ新聞。ジロ・デ・イタリアも主催する)を見ながら手を振ってくれる、なんて風景に出会うこともある。

コースは再びトレヴィーゾへと戻り、城門をくぐってゴール! イタリアでは数多くのグランフォンドが開催されているが、古都の趣を感じることのできる城壁内側にゴールする大会は少ない。イタリアの自然だけでなく歴史的な雰囲気を味わえる点も、グランフォンド ピナレロの魅力と言えるだろう。
お父さんライダーはグランフォンド・メディオフォンドに参加、お母さんと子どもはグルメフォンドを楽しんでいるファミリーも多い。待ち合わせはゴール地点。それぞれのレベル、楽しみ方に合わせてコースを選べるのもうれしい。とくにグルメフォンドの人気は年を追うごとに上昇し、今年の大会では300人以上が参加した。
また、ゴール横には大型のフードテントも設置され、走り切った後の身体を休めることも可能。パスタなどを食べながらビール・ワインを片手に、その日の感想を仲間同士で語り合うのも楽しい。またスイーツ好きのライダーは、近くの店でジェラートを買って、食べながらゴールしてくる仲間に声援を送っている姿も見られる。
この興奮は、他の大会では味わえない特別なもの。何と言っても、地元の人たちのホスピタリティの高さは、この大会が地元に根付き、共に楽しもうという気持ちの現れだ。グランフォンド ピナレロを走れば、イタリアのすべてが分かる——とは、もちろん言わない。しかし、その温かな雰囲気に包まれれば、イタリアの魅力の深さを味わうことができるだろう。
トレヴィーゾの城壁を抜けて、ピナレロショップ前のゴールへ。城門をくぐり旧市街内へ入ると、両側に観客が詰めかけ、声援を受けながら走ることができる。