2008/7/16 19:43




ツール・ド・フランス2008第10ステージ現地レポート
見せた最強のチーム力 CSCの切るカードは複数ある
ピレネーの難関山岳ステージはスペクタクル溢れる素晴らしいレースになった。戦略的な走りを見せたチームCSCサクソバンクがクネゴとバルベルデを罠にかけ、表彰台圏外に振り落としてしまった。しかも彼らにはまだ切るカードが複数枚残されている。
7月14日はフランス革命記念日"キャトーズ・ジュイエ"だ。例年この記念すべき日を祝って華やかな雰囲気に包まれるツール・ド・フランスだが、この日はどこにもその面影が見当たらない。フランス国旗が飾られていないし、お祝いのメッセージも見かけない。それもそのはずここはフランス国内とはいえすでにバスク地方に入っているため、文化的にはフランスであってフランスでない。スペインともフランスとも違い、独立したがっている地方なのだ。
近年この日にフランス人が勝った例としては2004年のヴィランク、2005年のモンクティエ。しかし今ツール初の山頂ゴールのこのステージで勝利を狙えそうなフランス人は誰一人いない。
ゴールとなる超級山岳オタカムはツールには4度目の登場。最近年の2000年ツールではハビエル・オチョア(スペイン、当時ケルメ)が早めの逃げのまま上りに突入し、差を守りきって独走勝利を挙げた。
しかしその後オチョアに悲劇が訪れる。兄弟ともにケルメの選手だったハビエルとリカルド・オチョア兄弟は、2人揃ってのロード練習中にクルマにはねられ、弟のリカルドが即死。ハビエルも瀕死の重症に。しかしハビエルは一命を取り留め、今ではパラリンピックのサイクリストとして活躍を重ねている。スタート前にはこの日のステージはオチョア兄弟に捧げられることが告げられた。
2000年にオタカムでオチョアに次いで2位になったのはアームストロング。総合優勝を争うライバルたちの集団から怒涛のアタックをかけ、パンターニらを振り切った。ここオタカムでマイヨジョーヌを決めた例は96年のビャルヌ・リース(当時ドイッチェテレコム、現チームCSCサクソバンク監督)にもあるが、リースはその後のEPO使用告白により「すっかり輝きを失ったマイヨジョーヌ」として語られるに至っている。奇しくもこの日、リースの采配がツールを大きく揺さぶることになろうとは。
「ピエポリの勝利のためにアシストしたい」と2度目の意思表明をしていたリッコ。ジロで助けてくれた恩返しをしたいこと、また最強のクライマーとしてピエポリこそオタカムの勝者にふさわしいと考えた。
スタートの朝はサウニエルドゥバル・スコットのサルーンバスをメディアが包囲し、"レオ"ピエポリにコメントを求めた。レオはスタート直前までバスのなかで食事を続けていた。バスから身を乗り出して披露したその身体には無駄な脂肪、筋肉は一切なく、極限状態まで絞り込まれていた。通常のチームジャージでは余ってしまうためエアロ生地のものを切り詰めて着用する。脚の裏には血管の浮き出た筋肉がピクピクと息づいている。36歳の研ぎ澄まされた状態の身体だ。
一方のリッコは笑顔が絶えず、リラックスして隣でその様子を見ていた。リッコはピエポリにとって理想的なプロフィールのオタカムで、彼へのお返しとしてステージ優勝を手助けしたいと考えた。ピエポリはアシストに徹する職人的選手。自らの勝利を追うのはエースにハプニングが起こったときぐらいだ。「常に献身的な彼自身にもツールの栄光を手にしてもらいたい」。
メディアのラッシュを避け、ぎりぎりまでスタートサインに現れなかったエヴァンス。交換した新しいヘルメット。手足に生々しく残る傷。腕に貼ったパッチとジャージの肩にはは早くも体液が滲みだしている。ボディガードに守られ、パワーバーのテントの裏に避難し、スタートまでの時間を待った。幸い骨折など致命的な怪我はなかったようだ。
快晴のポーをスタートしていくプロトン。レースはフラッグが振られると同時に始まった。
10km地点までに決まった24人の逃げ集団に入った中で、総合争いの動きの重要な鍵を握るのがカンチェラーラ(チームCSCサクソバンク)、フレイレ(ラボバンク)、そしてポポヴィッチ(サイレンス・ロット)だ。カンチェラーラはその後の平坦区間でチームのアシストをするために送り込まれた。またフレイレは自らのマイヨヴェールに加算するための中間スプリントポイントを取るためと、オタカムまでの平坦区間でメンショフをアシストするために逃げに加わった。ポポヴィッチはオタカムの上りでエヴァンスを助けるための前方待機だ。
フランス人でハッスルしたのはデグレゴリオ(フランセーズデジュ)。"ヴィランクの後継者"としてフランスの期待を集めるグランパーだ。ガドレ(アージェードゥゼル・ラモンディアル)がリタイヤした今はなおさら。昨年は落車して負傷。手当てを受けながら走ったが、リタイヤしてしまった。2年目の今年はステージ勝利を狙っている。同じマルセイユに住むためフミと仲の良いグレゴリオは頂上を先頭通過し、ジャック・ゴデ賞と5000ユーロ(約84万円)を獲得。フランス人へのキャトーズ・ジュイエのアン・プティ・カドー(ささやかなプレゼント)とした。
トゥールマレーを上る総合争いのメイン集団は、フォイクトとグストフ(チームCSCサクソバンク)が超ハイテンポを刻み、クライマーたちを苦しめた。トゥールマレーは最後の5kmこそ8〜10%の急勾配だが、サン・マリー・デ・カンパンからの上り勾配は緩く、ローリング向きだ。フォイクトはエディ・メルクスのイメージで引き続けたという。そのハイスピードに頂上まで2.5kmを残してたまらず切れたクネゴ、バルベルデ、ペレイロら。クネゴはそのとき、「下りで追いつくことができるだろう」と考えていた。
しかしフォイクトはその後、前で待っていたカンチェラーラにバトンタッチ。カンチェが持ち前のスピードを生かしてさらにハイスピードで加速していった。下りきって平坦路に入ってからもそのデュオの勢いは止まらず、時速55km/hで牽き続ける。その様子にラジオも思わず「シャポバ(脱帽)!」と叫んだ。2人の総合優勝候補はますますタイムを失い、ここで2人のパリのポディウムは現実味を失った。それこそがリース監督が計画したCSCの戦略だった。
約束どおりのピエポリのアタック。そしてそれに続いたのはリッコでなくコーボだった。リッコは昨日のアタックの疲労が脚に残り、キレを欠いていたようだ。
コーボは総合5位以内を狙ってツールに乗り込んできたが、第4ステージの個人タイムトライアルで"悪い日"を迎え、大きく総合を落としていた。しかし復調し、リッコに代わってピエポリのお供となった。
2人のサウニエルドゥバルライダーに対抗したのは兄シュレク。積極的に責めるそのハイペースは皮肉にも弟のアンディを振り落とすことになってしまった。弟はまだ若く経験不足。ペースの上げ下げに弱く、また悪い日も迎えていたようだ。
総合争いのライバルたちはその後方でお互いの探りあいをしていた。お互いアタックは決まらず、シュレクがピエポリらに遅れることがなければエヴァンスのマイヨジョーヌはなかった。シュレクと2人のサウニエルドゥバルライダーはゴールまで協調することに合意していた。ステージ優勝を狙うには2人のほうが有利。しかしシュレクはマイヨジョーヌをとることができる。しかし2人のハイペースにシュレクは脱落してしまった。
ラスト3kmでシュレクを振り切ってからもコーボを離すことなくうまくつなぎとめ、ともにゴールを目指したピエポリ。これで3つのグランツールすべてに勝利の足跡を刻んだ。36歳にしてますますその強さに磨きをかける。
ピエポリはその走りを振り返る「完璧な一日じゃなかった。上り坂の早めの段階ではただ10人のうちのひとりに残りたいとしか考えていなかった。けれど調子が戻った。シュレクの合流は想定外だったけど、いいものだった。コーボとのワン・ツーはただ素晴らしい。彼は総合を目指しているし、ツールではプラトード・ベイユで上位になったことがあるから勝利を譲ってくれたんだ。彼はデラフエンテや"リトゥ"ゴメスとともにチーム誕生以来の仲。チームの成功の鍵はいい雰囲気。小さなチームが特別なモチベーションを生み出しているんだ」。
コーボは言う「タイムトライアルで希望を失って以来、トップ10を目指すという元の目標に戻れて嬉しい。僕はクライミング能力を伸ばし、ここでそれを見せることができた。この結果で、僕はトップ5さえ狙えるだろう。リッコはラルプデュエズで勝ちたいと言っている。17ステージは彼の番だ。平坦、アップダウン、タイムトライアルで他の選手が戦いを挑んでくるだろうけど、同じことさ」
リッコがピエポリとともに行かなかったのは、脚に疲労が残っていたからのようだ。リッコは言う「昨日アタックしたつけがまわってきた。悪いときがあったけどライバルたちにはついていった。エヴァンスはレースのリーダーだ。彼はツールのために調整してきていて、それを示した。でも決まった形はない。僕は他の日を狙う。すべてのステージでリードしなければならなかったジロのようなプレッシャーはないよ。フランスではリラックスできている。結果も素晴らしい。チームはすごいショーを演じたね。これからも脚が許す限りアタックするよ。この後、ラルプデュエズでのステージ優勝か、総合成績か? 僕は迷わずステージ優勝をとるよ。今年は総合には興味がない。もっとステージ優勝を挙げたい。山岳賞ジャージはデラフエンテが有力候補だ。僕の肩にあるけど、それはカテゴリー3級の山でアタックしてポイントを稼ぐような特別な努力の結果じゃない」。
マイヨアポアとマイヨブラン。両方を着るリッコだが、あえてそれを求める気はないようだ。ラルプデュエズでの3勝目を狙うなら、勝利によるポイント大量獲得でマイヨアポアが自動的にリッコのものになる可能性は高い。
結果的には1秒差でマイヨジョーヌを逃したシュレク。弟を振り切る結果になってしまったことも少し後悔だ。
「1秒差でマイヨジョーヌを着れないなんてがっかり。でも同時に嬉しい。チームがパワーを見せ付ける走りをした後にそれをとれたなら、どんなに素晴らしいことだっただろう。でもいい面もある。僕はますます自信がついたよ。アンディは今日悪い一日を迎えていたんだ。そして彼はまだ若いんだ。
早くから逃げに乗り、後半クネゴを引き離すハイスピードの牽引を見せたカンチェラーラは言う。
「僕が前を逃げてフォイクトと合流し、スピードを上げるという作戦は完全に計画されたものだった。ライバルたち、バルベルデやクネゴらに大きな差をつけることに成功した。今日はチームの強さを見せることができた。アンディが脱落したのは残念だが、カルロスもプランどうりの走りだった。ツールはCSCがつくるよ。今日デモンストレーションしたとおり、CSCはツールに勝つことができる。明日は休んでツールの第2部に進みたい」。
「傷ついた者がいる場合、その選手がリーダーなら翌日は静かなレースをするという慣わしがあるが、それに従うつもりはないのか?」と訊かれカンチェラーラはこう応える。
「レースにはすべての可能性があるし、僕らは僕らのレースをするだけ。今日は3人がタイムを取り返すことが目標だった。フランクは落車でツール・ド・スイスを取れなかった例もある。レースはすべての可能性をかけて走るもの」。
敢闘賞こそもらえなかったが、印象的な走りを見せたフォイクトは言う「トゥールマレーではグストフと僕がハイテンポで引いてバルベルデとクネゴを振り落とした。そのとき正直言って"僕はツールに勝てる男かもしれない!"と思ったよ。気分はまるでエディメルクスだった。モチベーションとヤル気がいっぱいで、ただ速く引くことだけを考えていたんだ。頻繁に無線を使っていたのは、僕のペースが速すぎないかチームメイトに確認していたんだ。僕はレースを最後の上りまでに終えるつもりだった。だからエネルギーをとっておく必要はなかったんだ。エンジン全開だよ!
アンディが遅れたのは、彼はこういう走りが得意でないから。今日山で僕らがしたようなの嵐のような走りができるタイプじゃない。彼がリズムをつかむのには数キロ必要だし、マイペースのほうがいい。彼がジロで2位になってから皆がプレッシャーをかけるけど、彼にはそれをすべきでない。だってまだ22歳の若者にそんな期待をかけるのは無理なことだよ。
シュレクがマイヨジョーヌに迫っているが、CSCのリーダーはサストレであることを忘れてはいけない。ライバルを監視するように7位でゴールしたサストレは、依然ポディウム射程圏内だ。
サストレは言う「今日のフォイクトは月に行っちゃうぐらい強かったよ。僕らは総合トップ6に2人の選手を送り込んだんだ。2人のリーダーがいるのはこれでCSCだけになった。そして僕らにはまだ切るカードがたくさんある。僕自身はOKだ。ライバルのなかではメンショフが強いように見える。正直に言って彼がこの後大きな違いを見せられる選手だと思う。昨日は多分、彼にとって良い日ではなかっただけだと思う。今日彼はCSCの攻撃に耐えた。彼はいいはず」。
CSCにはシュレクとサストレがいるが、リーダーはどちらとも決めてないようだ。カンチェラーラは言う「リーダーはまだオープンだと思う。カルロスが上りでアタックすれば誰もついていけない。多分次はカルロスの番だろう。チームにはまだ2人のリーダーがいる。
兄フランクとともに優勝候補のダークホースに挙げられていたフランク・シュレク。今日の遅れで総合22位に転落。アンディは言う「フォイクトは信じられないぐらい強かった。そして僕はといえば悪い日だった。もう僕自身がツールに勝つことはないね、アルプスが楽しみ。マイヨジョーヌに近いからフランクのために力を捧げるつもり。アルプスでマイヨジョーヌは取れると思う。今日は僕自身は良くなかったけどフランクが良かったからとてもハッピーだよ」。
サストレとエヴァンスらが警戒するのがメンショフだ。このブエルタ覇者は例年ツールでは悪い日を迎えるが、今は安定しているようだ。
メンショフは言う「最後まで集団のなかでお互いがお互いをチェックしていた。勾配は上り始めはきつかったけれど、後半は緩やかだったから最終的にアタックすることもできなかった。シュレクを除いてはね」。
昨日に引き続き山岳での好走を見せ、ステージ4位のコール(ゲロルシュタイナー)。総合も4位に。
コールは言う「優勝候補の選手たちに着いていこうと決め、うまく走れた。彼らに対してステージ4位で総合も4位というのはパーフェクトだよ。最終的な目標はパリでのトップ10だった。今総合4位だけど、最終的にはたぶんトップ10が現実的だと思う。この後のタイムトライアルはOKだ。そんなに悪くない。今までのナーバスなステージで落車などのトラブルなく走れている。今のところうまく走れているね」。
引き締まった身体のコール。マイヨジョーヌ着用者のシューマッハーもこれからはステージ優勝のチャンスを伺いつつ、コールの総合上位のためのアシストをするつもりだ。
3勝目のサウニエルドゥバル・スコットはここまでのチーム総合成績においても断トツでトップとなり、獲得賞金総額は5097000ユーロ(約856万円)。
また今年から途中の山岳における区間タイムが算出され、それがコミュニケとして発表されるようになった。今ステージではトゥールマレーの上り区間の個人タイムが計測され、発表された。主催者が新しく用意したこの試みによれば、トゥールマレーの区間距離17.7km・標高2115m・平均勾配7.5%の上り区間において、個人最速タイムはリッコの48分51秒。平均時速は21.74km/hだった。2位コーボ、3位サストレ、4位ピエポリ、5位メンショフ。
タイムトライアルでないロードステージでこの数字に意味があるかは微妙なところだが、ひとつの指標にはなりそうだ。
スペクタクルに満ちたスリリングなステージになった。最有力の優勝候補エヴァンスがマイヨジョーヌを着ながらも、チームCSCサクソバンクが最強のチームであることもまた証明された。サウニエルドゥバル・スコットもまた山岳でナンバーワンの力を証明した。
優勝候補の3人のうち2人、クネゴとバルベルデはCSCの戦略に敗れ、ポディウムを狙うどころかもはや5位でもない。今後はステージ優勝に目標を切り替えなければならないだろう。
リッコが総合争いの面で脅威になるかどうかは今後の展開次第だが、反対にサイレンス・ロットはチーム力のなさを見せている。チーム力によるサポートが重要な現代ツールにおいてエヴァンスの守りは万全とはいえない。チームCSCサクソバンクがつけ入る隙は大きくありそうだ。重要な山岳ステージのひとつが終わったが、真の勝負はアルプスに持ち越しそうだ。休息日を挟んでツールは第2部へと進む。

ツール・ド・フランス2008第10ステージ グラフィックス

ツール・ド・フランス2008第10ステージ ダイジェストムービー
text:Makoto AYANO
photo:Makoto AYANO、Tim de waele
キャトーズジュイエは何処へ?
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| 『ものすごく目立つブイグテレコムのキャラバン』 |
近年この日にフランス人が勝った例としては2004年のヴィランク、2005年のモンクティエ。しかし今ツール初の山頂ゴールのこのステージで勝利を狙えそうなフランス人は誰一人いない。
オチョアに捧げるステージ
ゴールとなる超級山岳オタカムはツールには4度目の登場。最近年の2000年ツールではハビエル・オチョア(スペイン、当時ケルメ)が早めの逃げのまま上りに突入し、差を守りきって独走勝利を挙げた。
しかしその後オチョアに悲劇が訪れる。兄弟ともにケルメの選手だったハビエルとリカルド・オチョア兄弟は、2人揃ってのロード練習中にクルマにはねられ、弟のリカルドが即死。ハビエルも瀕死の重症に。しかしハビエルは一命を取り留め、今ではパラリンピックのサイクリストとして活躍を重ねている。スタート前にはこの日のステージはオチョア兄弟に捧げられることが告げられた。
オタカムの覇者がツールを制する
2000年にオタカムでオチョアに次いで2位になったのはアームストロング。総合優勝を争うライバルたちの集団から怒涛のアタックをかけ、パンターニらを振り切った。ここオタカムでマイヨジョーヌを決めた例は96年のビャルヌ・リース(当時ドイッチェテレコム、現チームCSCサクソバンク監督)にもあるが、リースはその後のEPO使用告白により「すっかり輝きを失ったマイヨジョーヌ」として語られるに至っている。奇しくもこの日、リースの采配がツールを大きく揺さぶることになろうとは。
リッコとピエポリの約束
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| 『笑顔でチームバスから登場したリカルド・リッコ(イタリア、サウニエルドゥバル・スコット)』 |
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| 『山岳ステージを前に質問が集中するリカルド・リッコ(イタリア、サウニエルドゥバル・スコット)』 |
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| 『マイヨジョーヌの表彰式で感極まるカデル・エヴァンス(オーストラリア、サイレンス・ロット)』 |
スタートの朝はサウニエルドゥバル・スコットのサルーンバスをメディアが包囲し、"レオ"ピエポリにコメントを求めた。レオはスタート直前までバスのなかで食事を続けていた。バスから身を乗り出して披露したその身体には無駄な脂肪、筋肉は一切なく、極限状態まで絞り込まれていた。通常のチームジャージでは余ってしまうためエアロ生地のものを切り詰めて着用する。脚の裏には血管の浮き出た筋肉がピクピクと息づいている。36歳の研ぎ澄まされた状態の身体だ。
一方のリッコは笑顔が絶えず、リラックスして隣でその様子を見ていた。リッコはピエポリにとって理想的なプロフィールのオタカムで、彼へのお返しとしてステージ優勝を手助けしたいと考えた。ピエポリはアシストに徹する職人的選手。自らの勝利を追うのはエースにハプニングが起こったときぐらいだ。「常に献身的な彼自身にもツールの栄光を手にしてもらいたい」。
傷の生々しいエヴァンス
メディアのラッシュを避け、ぎりぎりまでスタートサインに現れなかったエヴァンス。交換した新しいヘルメット。手足に生々しく残る傷。腕に貼ったパッチとジャージの肩にはは早くも体液が滲みだしている。ボディガードに守られ、パワーバーのテントの裏に避難し、スタートまでの時間を待った。幸い骨折など致命的な怪我はなかったようだ。
送り込まれた刺客カンチェラーラ
快晴のポーをスタートしていくプロトン。レースはフラッグが振られると同時に始まった。
10km地点までに決まった24人の逃げ集団に入った中で、総合争いの動きの重要な鍵を握るのがカンチェラーラ(チームCSCサクソバンク)、フレイレ(ラボバンク)、そしてポポヴィッチ(サイレンス・ロット)だ。カンチェラーラはその後の平坦区間でチームのアシストをするために送り込まれた。またフレイレは自らのマイヨヴェールに加算するための中間スプリントポイントを取るためと、オタカムまでの平坦区間でメンショフをアシストするために逃げに加わった。ポポヴィッチはオタカムの上りでエヴァンスを助けるための前方待機だ。
グレゴリオのカドー
フランス人でハッスルしたのはデグレゴリオ(フランセーズデジュ)。"ヴィランクの後継者"としてフランスの期待を集めるグランパーだ。ガドレ(アージェードゥゼル・ラモンディアル)がリタイヤした今はなおさら。昨年は落車して負傷。手当てを受けながら走ったが、リタイヤしてしまった。2年目の今年はステージ勝利を狙っている。同じマルセイユに住むためフミと仲の良いグレゴリオは頂上を先頭通過し、ジャック・ゴデ賞と5000ユーロ(約84万円)を獲得。フランス人へのキャトーズ・ジュイエのアン・プティ・カドー(ささやかなプレゼント)とした。
CSCのハイテンポ 遅れたクネゴとバルベルデ
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| 『バルベルデを献身的にアシストしたオスカル・ペレイロ(スペイン、ケスデパーニュ)がオタカムを上る』 |
しかしフォイクトはその後、前で待っていたカンチェラーラにバトンタッチ。カンチェが持ち前のスピードを生かしてさらにハイスピードで加速していった。下りきって平坦路に入ってからもそのデュオの勢いは止まらず、時速55km/hで牽き続ける。その様子にラジオも思わず「シャポバ(脱帽)!」と叫んだ。2人の総合優勝候補はますますタイムを失い、ここで2人のパリのポディウムは現実味を失った。それこそがリース監督が計画したCSCの戦略だった。
サウニエルワン・ツー。シュレク兄弟明暗
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| 『トップから28秒遅れの3位に入ったフランク・シュレク(ルクセンブルク、チームCSC・サクソバンク)』 |
コーボは総合5位以内を狙ってツールに乗り込んできたが、第4ステージの個人タイムトライアルで"悪い日"を迎え、大きく総合を落としていた。しかし復調し、リッコに代わってピエポリのお供となった。
2人のサウニエルドゥバルライダーに対抗したのは兄シュレク。積極的に責めるそのハイペースは皮肉にも弟のアンディを振り落とすことになってしまった。弟はまだ若く経験不足。ペースの上げ下げに弱く、また悪い日も迎えていたようだ。
総合争いのライバルたちはその後方でお互いの探りあいをしていた。お互いアタックは決まらず、シュレクがピエポリらに遅れることがなければエヴァンスのマイヨジョーヌはなかった。シュレクと2人のサウニエルドゥバルライダーはゴールまで協調することに合意していた。ステージ優勝を狙うには2人のほうが有利。しかしシュレクはマイヨジョーヌをとることができる。しかし2人のハイペースにシュレクは脱落してしまった。
職人ピエポリ
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| 『表彰台で笑顔を見せるレオナルド・ピエポリ(イタリア、サウニエルドゥバル・スコット)』 |
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| 『ファンホセ・コーボ(スペイン、サウニエルドゥバル・スコット)をアシストしながらオタカムを上るレオナルド・ピエポリ(イタリア、サウニエルドゥバル・スコット)』 |
ピエポリはその走りを振り返る「完璧な一日じゃなかった。上り坂の早めの段階ではただ10人のうちのひとりに残りたいとしか考えていなかった。けれど調子が戻った。シュレクの合流は想定外だったけど、いいものだった。コーボとのワン・ツーはただ素晴らしい。彼は総合を目指しているし、ツールではプラトード・ベイユで上位になったことがあるから勝利を譲ってくれたんだ。彼はデラフエンテや"リトゥ"ゴメスとともにチーム誕生以来の仲。チームの成功の鍵はいい雰囲気。小さなチームが特別なモチベーションを生み出しているんだ」。
コーボは言う「タイムトライアルで希望を失って以来、トップ10を目指すという元の目標に戻れて嬉しい。僕はクライミング能力を伸ばし、ここでそれを見せることができた。この結果で、僕はトップ5さえ狙えるだろう。リッコはラルプデュエズで勝ちたいと言っている。17ステージは彼の番だ。平坦、アップダウン、タイムトライアルで他の選手が戦いを挑んでくるだろうけど、同じことさ」
リッコがピエポリとともに行かなかったのは、脚に疲労が残っていたからのようだ。リッコは言う「昨日アタックしたつけがまわってきた。悪いときがあったけどライバルたちにはついていった。エヴァンスはレースのリーダーだ。彼はツールのために調整してきていて、それを示した。でも決まった形はない。僕は他の日を狙う。すべてのステージでリードしなければならなかったジロのようなプレッシャーはないよ。フランスではリラックスできている。結果も素晴らしい。チームはすごいショーを演じたね。これからも脚が許す限りアタックするよ。この後、ラルプデュエズでのステージ優勝か、総合成績か? 僕は迷わずステージ優勝をとるよ。今年は総合には興味がない。もっとステージ優勝を挙げたい。山岳賞ジャージはデラフエンテが有力候補だ。僕の肩にあるけど、それはカテゴリー3級の山でアタックしてポイントを稼ぐような特別な努力の結果じゃない」。
マイヨアポアとマイヨブラン。両方を着るリッコだが、あえてそれを求める気はないようだ。ラルプデュエズでの3勝目を狙うなら、勝利によるポイント大量獲得でマイヨアポアが自動的にリッコのものになる可能性は高い。
最強のチーム力を披露したCSC 切るカードはたくさんある
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| 『この日の鍵を握ったファビアン・カンチェラーラ(スイス、チームCSC・サクソバンク)がオタカムを上る』 |
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| 『レース後にインタビューを受けるカルロス・サストレ(スペイン、チームCSC・サクソバンク)』 |
「1秒差でマイヨジョーヌを着れないなんてがっかり。でも同時に嬉しい。チームがパワーを見せ付ける走りをした後にそれをとれたなら、どんなに素晴らしいことだっただろう。でもいい面もある。僕はますます自信がついたよ。アンディは今日悪い一日を迎えていたんだ。そして彼はまだ若いんだ。
早くから逃げに乗り、後半クネゴを引き離すハイスピードの牽引を見せたカンチェラーラは言う。
「僕が前を逃げてフォイクトと合流し、スピードを上げるという作戦は完全に計画されたものだった。ライバルたち、バルベルデやクネゴらに大きな差をつけることに成功した。今日はチームの強さを見せることができた。アンディが脱落したのは残念だが、カルロスもプランどうりの走りだった。ツールはCSCがつくるよ。今日デモンストレーションしたとおり、CSCはツールに勝つことができる。明日は休んでツールの第2部に進みたい」。
「傷ついた者がいる場合、その選手がリーダーなら翌日は静かなレースをするという慣わしがあるが、それに従うつもりはないのか?」と訊かれカンチェラーラはこう応える。
「レースにはすべての可能性があるし、僕らは僕らのレースをするだけ。今日は3人がタイムを取り返すことが目標だった。フランクは落車でツール・ド・スイスを取れなかった例もある。レースはすべての可能性をかけて走るもの」。
敢闘賞こそもらえなかったが、印象的な走りを見せたフォイクトは言う「トゥールマレーではグストフと僕がハイテンポで引いてバルベルデとクネゴを振り落とした。そのとき正直言って"僕はツールに勝てる男かもしれない!"と思ったよ。気分はまるでエディメルクスだった。モチベーションとヤル気がいっぱいで、ただ速く引くことだけを考えていたんだ。頻繁に無線を使っていたのは、僕のペースが速すぎないかチームメイトに確認していたんだ。僕はレースを最後の上りまでに終えるつもりだった。だからエネルギーをとっておく必要はなかったんだ。エンジン全開だよ!
アンディが遅れたのは、彼はこういう走りが得意でないから。今日山で僕らがしたようなの嵐のような走りができるタイプじゃない。彼がリズムをつかむのには数キロ必要だし、マイペースのほうがいい。彼がジロで2位になってから皆がプレッシャーをかけるけど、彼にはそれをすべきでない。だってまだ22歳の若者にそんな期待をかけるのは無理なことだよ。
シュレクがマイヨジョーヌに迫っているが、CSCのリーダーはサストレであることを忘れてはいけない。ライバルを監視するように7位でゴールしたサストレは、依然ポディウム射程圏内だ。
サストレは言う「今日のフォイクトは月に行っちゃうぐらい強かったよ。僕らは総合トップ6に2人の選手を送り込んだんだ。2人のリーダーがいるのはこれでCSCだけになった。そして僕らにはまだ切るカードがたくさんある。僕自身はOKだ。ライバルのなかではメンショフが強いように見える。正直に言って彼がこの後大きな違いを見せられる選手だと思う。昨日は多分、彼にとって良い日ではなかっただけだと思う。今日彼はCSCの攻撃に耐えた。彼はいいはず」。
CSCにはシュレクとサストレがいるが、リーダーはどちらとも決めてないようだ。カンチェラーラは言う「リーダーはまだオープンだと思う。カルロスが上りでアタックすれば誰もついていけない。多分次はカルロスの番だろう。チームにはまだ2人のリーダーがいる。
アンディ「もう僕がツールに勝つことはない」
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| 『レース後にインタビューを受けるアンディ・シュレク(ルクセンブルク、チームCSC・サクソバンク)』 |
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| 『スタート前にインタビューを受けるデニス・メンショフ(ロシア、ラボバンク)』 |
メンショフ「振り切ることができなかった」
サストレとエヴァンスらが警戒するのがメンショフだ。このブエルタ覇者は例年ツールでは悪い日を迎えるが、今は安定しているようだ。
メンショフは言う「最後まで集団のなかでお互いがお互いをチェックしていた。勾配は上り始めはきつかったけれど、後半は緩やかだったから最終的にアタックすることもできなかった。シュレクを除いてはね」。
コール「最終的にはトップ10が目標」
昨日に引き続き山岳での好走を見せ、ステージ4位のコール(ゲロルシュタイナー)。総合も4位に。
コールは言う「優勝候補の選手たちに着いていこうと決め、うまく走れた。彼らに対してステージ4位で総合も4位というのはパーフェクトだよ。最終的な目標はパリでのトップ10だった。今総合4位だけど、最終的にはたぶんトップ10が現実的だと思う。この後のタイムトライアルはOKだ。そんなに悪くない。今までのナーバスなステージで落車などのトラブルなく走れている。今のところうまく走れているね」。
引き締まった身体のコール。マイヨジョーヌ着用者のシューマッハーもこれからはステージ優勝のチャンスを伺いつつ、コールの総合上位のためのアシストをするつもりだ。
No.1チームサウニエルドゥバル トゥールマレー最速はリッコ
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| 『山岳ステージで注目のサウニエルドゥバル・スコット』 |
また今年から途中の山岳における区間タイムが算出され、それがコミュニケとして発表されるようになった。今ステージではトゥールマレーの上り区間の個人タイムが計測され、発表された。主催者が新しく用意したこの試みによれば、トゥールマレーの区間距離17.7km・標高2115m・平均勾配7.5%の上り区間において、個人最速タイムはリッコの48分51秒。平均時速は21.74km/hだった。2位コーボ、3位サストレ、4位ピエポリ、5位メンショフ。
タイムトライアルでないロードステージでこの数字に意味があるかは微妙なところだが、ひとつの指標にはなりそうだ。
エヴァンスVSチームCSC クネゴ、バルベルデは総合を諦める?
スペクタクルに満ちたスリリングなステージになった。最有力の優勝候補エヴァンスがマイヨジョーヌを着ながらも、チームCSCサクソバンクが最強のチームであることもまた証明された。サウニエルドゥバル・スコットもまた山岳でナンバーワンの力を証明した。
優勝候補の3人のうち2人、クネゴとバルベルデはCSCの戦略に敗れ、ポディウムを狙うどころかもはや5位でもない。今後はステージ優勝に目標を切り替えなければならないだろう。
リッコが総合争いの面で脅威になるかどうかは今後の展開次第だが、反対にサイレンス・ロットはチーム力のなさを見せている。チーム力によるサポートが重要な現代ツールにおいてエヴァンスの守りは万全とはいえない。チームCSCサクソバンクがつけ入る隙は大きくありそうだ。重要な山岳ステージのひとつが終わったが、真の勝負はアルプスに持ち越しそうだ。休息日を挟んでツールは第2部へと進む。
ツール・ド・フランス2008第10ステージ グラフィックス
ツール・ド・フランス2008第10ステージ ダイジェストムービー
text:Makoto AYANO
photo:Makoto AYANO、Tim de waele

ピエポリ「ツールの勝利は子どもの頃からの夢だった」
(2008/7/15)
名匠ピエポリ山岳制覇、エヴァンス涙のマイヨジョーヌ
(2008/7/15)
個人ステージ成績
(2008/7/15)
個人総合成績 マイヨジョーヌ
(2008/7/15)
個人総合ポイント賞 マイヨヴェール
(2008/7/15)
個人総合山岳賞 マイヨブランアポワルージュ
(2008/7/15)
個人総合新人賞 マイヨブラン
(2008/7/15)
チーム総合成績
(2008/7/15)
ピエポリがコーボとワンツー!エヴァンスがイエロー!
(2008/7/15)
3 コメンテーター: kobiash コメント日: 2008/07/16 22:21:47
サウニエルが個人個人の能力で闘いを挑み、センスで連携する野武士集団なら、CSCは正に統率された軍隊。軍隊トレーニングの影響か分かりませんが、そんな迫力も感じます。ステージ優勝もマイヨジョーヌも逃しましたが、フランクが総合でジャンプアップし、ライバルも減らせたわけですから、概ね成功のステージだったのではないでしょうか。
レースをかき回すサウニエルに、それを押さえ込むCSC…個人対個人だけではなく、チーム同士の戦いが、またロードレース。
4 コメンテーター: soramimit コメント日: 2008/07/17 11:46:47
フォイクトはジロでもスゴイ走りをしたし、本当に驚かされる。エヴァンスはアルプスでマイヨジョーヌを手放すかもしれない。
タイム差がつかないように気をつけていれば、TTで逆転の可能性がある。
とにかくキープを目指すだろうけどね。
エヴァンスも、ひとつはステージ優勝、獲らないとね。
Fシュレク、サストレ、アンディも加わって、CSCはアルプスでの布陣も強力。
サウニエルドゥバルはステージ狙いだろうから、
CSCがマイヨジョーヌを狙ってレースを動かすだろう。
さぁ、後半戦だ!
5 コメンテーター: kohei_1991 コメント日: 2008/07/19 11:54:45
CSC、コロンビアは今年のツールは特に元気ですね〜〜〜〜〜〜!!特にコロンビアは旧Tモバイルチームの強さもあってチーム総合力にはすばらしいものがあると思います。ヤンウルリッヒが引退していなければより今年のツールで注目されていたでしょうね〜〜〜〜〜








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