2007/10/23 20:36

■眠気との戦い 第2回戦
8月24日(金)2時45分。シュラフカバーの中が蒸れたせいで寒くなり目が覚めた。あまりすっきり眠れなかった。4年前より3時間遅れている。すぐに発たないと制限時間に間に合わない。3時15分に出発。
小雨が降っていた。まだ寝足りないので石垣に寄りかかって座り15分ほど仮眠した。足は何とか回るし、多分ふらついてはいないだろうけど、半分居眠り運転状態だ。4年前に入った終夜営業のカフェを通り過ぎた。寄っていきたいけど時間がない。
雨は止んだけど、モルターニュへの長い登りが始まった。いよいよ寝不足がきつくなってきた。夢の中で、私はミスコースしていた。どこからか誰かが「ルートが違うけど、ズルをしてショートカットすれば大丈夫だよ」と囁いていた。もはや夢と現実の区別が分からなくなってきた。
■4年前の再現
朝9時。1085km地点 第13PCのモルターニュ着。まだ夢から醒めてない気分だ。通過チェックに行ったら問題発生。ブルベカードにスタンプを押してもらったが、磁気カードのチェックは受付けてもらえなかった。これはタイムオーバー宣告なのだろうか?
もう無理だから少し寝ていこうと諦めかけていたら河内さんが現れた。目を疑ったけど幻覚ではなさそうだ。彼女は寒さに負けて途中でリタイヤしてしまったとのこと。通過チェックのことを話すと「ブルベカードのチェックが正式な記録になるから絶対に大丈夫。まだあきらめないで」と励まされた。
その言葉を聞いて、4年前に同じこのモルターニュで河内さんに会ったことを思い出した。その時も、膝痛に苦しみボロボロになってたどり着いた私を、イギリスチームのサポートをしていた河内さんが助けてくれたのだ。
不思議な偶然に混乱しそうだったけど、河内さんの励ましに後押しされて、モルターニュを発った。後でポラールのサイクルウォッチの記録をチェックしてみたら、7分しかモルターニュにいなかった。
■おしりが限界だ
走りだすとすぐに睡魔が襲ってきた。自分がきちんとゴールに向かっているか心配になり、何度も後続のサイクリストを待った。だだっ広い平原に入ると、とたんに舗装が荒くガタガタした道が続いた。おしりや股間に鈍い痛みが走る。まるで拷問だ。
タイヤから異音がする。取り外し式の泥除けが振動で下がって、タイヤを擦っている。何度も自転車を降りて調整したけどダメだった。「ゴールしたら、どうせまたここを通るから後で取りに来よう」と、なんの躊躇もせず泥除けを道端に投げ捨てた。
ゴールまではまだ100kmもあり、こんなところに戻ってくるわけはないのに・・・。そんなことも分からないくらい、寝不足のせいで頭が働かなくなっていた。でもこんな状態でも、案内の矢印だけは見逃さなかった。どんなに酔っていても、ちゃんと家に帰ってくる飲んべ親父みたいだ。
■最後の苦しみ、そしてゴール
12時45分。1160km地点 第14PC ドリュー着。ここでは磁気カードとブルベカードの両方をチェックしてもらえた。きちんと食事をしたら眠くなってしまい走れないだろう。まだパワーバーがあるので栄養補給は大丈夫。トイレだけ済ませてすぐに出発。ゴールまであと70km。
矢印通りに進んだけど、同じところ何度もグルグル回らされている気がしてきた。まるで悪夢を実体験しているようだ。やっとまっすぐ伸びる街道に出て、ゴールに近づいている実感がしてきた。
途中にあった丘越えの勾配が意外にキツイ。膝が不安だったので自転車を押していると、鐘を鳴らして応援していたおじさんが、「押してやるから乗れ」と言ってくれた。でもゴールまであと少し。どうせなら最後まで自分の力で走りたい。「自分の足の力だけでゴールしたい」って言うと、おじさんは大きく頷いてくれた。
広い平原を抜け丘を何度も越えると、サンカンタン市街へ向かう最後の登りが現れた。市街地へ入ってからは、重いギアにしてペダルを思い切り回した。もう膝の心配はしなくていいんだ。やがてサンカンタンの中心街を通り抜けてゴールに辿り着いた。
到着時間は8月24日(金) 17時20分。所要時間は90時間25分。制限時間を過ぎてしまったので、完走の認定はもらえないかもしれないけど、自転車に乗って最後まで走れただけで十分満足だ。飯塚氏と須藤氏も無事にゴールしており、硬い握手とともに数日ぶりの再会を喜んだ。
日本人参加者111人のうち、ゴールしたものは66人。恥ずかしながら私は65人目のゴールだった。さあ、まずはホテルに戻りシャワーを浴びてディナーだ。ビールとワインも待っている。それから5日ぶりにふかふかのベッドに思い切り眠ることにしよう。

パリ〜ブレスト〜パリ2007 グラフィックス
photo&text:tb1
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完走の夢? もうお尻が限界だ!
− 第5日目 8/24(金) −
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| 『第14PC ドリュー。トイレだけ済ませてすぐに出発した』 |
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| 『キツイ丘越えで自転車を押してしまった』 |
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| 『ゴール地点のロンポワン』 |
8月24日(金)2時45分。シュラフカバーの中が蒸れたせいで寒くなり目が覚めた。あまりすっきり眠れなかった。4年前より3時間遅れている。すぐに発たないと制限時間に間に合わない。3時15分に出発。
小雨が降っていた。まだ寝足りないので石垣に寄りかかって座り15分ほど仮眠した。足は何とか回るし、多分ふらついてはいないだろうけど、半分居眠り運転状態だ。4年前に入った終夜営業のカフェを通り過ぎた。寄っていきたいけど時間がない。
雨は止んだけど、モルターニュへの長い登りが始まった。いよいよ寝不足がきつくなってきた。夢の中で、私はミスコースしていた。どこからか誰かが「ルートが違うけど、ズルをしてショートカットすれば大丈夫だよ」と囁いていた。もはや夢と現実の区別が分からなくなってきた。
■4年前の再現
朝9時。1085km地点 第13PCのモルターニュ着。まだ夢から醒めてない気分だ。通過チェックに行ったら問題発生。ブルベカードにスタンプを押してもらったが、磁気カードのチェックは受付けてもらえなかった。これはタイムオーバー宣告なのだろうか?
もう無理だから少し寝ていこうと諦めかけていたら河内さんが現れた。目を疑ったけど幻覚ではなさそうだ。彼女は寒さに負けて途中でリタイヤしてしまったとのこと。通過チェックのことを話すと「ブルベカードのチェックが正式な記録になるから絶対に大丈夫。まだあきらめないで」と励まされた。
その言葉を聞いて、4年前に同じこのモルターニュで河内さんに会ったことを思い出した。その時も、膝痛に苦しみボロボロになってたどり着いた私を、イギリスチームのサポートをしていた河内さんが助けてくれたのだ。
不思議な偶然に混乱しそうだったけど、河内さんの励ましに後押しされて、モルターニュを発った。後でポラールのサイクルウォッチの記録をチェックしてみたら、7分しかモルターニュにいなかった。
■おしりが限界だ
走りだすとすぐに睡魔が襲ってきた。自分がきちんとゴールに向かっているか心配になり、何度も後続のサイクリストを待った。だだっ広い平原に入ると、とたんに舗装が荒くガタガタした道が続いた。おしりや股間に鈍い痛みが走る。まるで拷問だ。
タイヤから異音がする。取り外し式の泥除けが振動で下がって、タイヤを擦っている。何度も自転車を降りて調整したけどダメだった。「ゴールしたら、どうせまたここを通るから後で取りに来よう」と、なんの躊躇もせず泥除けを道端に投げ捨てた。
ゴールまではまだ100kmもあり、こんなところに戻ってくるわけはないのに・・・。そんなことも分からないくらい、寝不足のせいで頭が働かなくなっていた。でもこんな状態でも、案内の矢印だけは見逃さなかった。どんなに酔っていても、ちゃんと家に帰ってくる飲んべ親父みたいだ。
■最後の苦しみ、そしてゴール
12時45分。1160km地点 第14PC ドリュー着。ここでは磁気カードとブルベカードの両方をチェックしてもらえた。きちんと食事をしたら眠くなってしまい走れないだろう。まだパワーバーがあるので栄養補給は大丈夫。トイレだけ済ませてすぐに出発。ゴールまであと70km。
矢印通りに進んだけど、同じところ何度もグルグル回らされている気がしてきた。まるで悪夢を実体験しているようだ。やっとまっすぐ伸びる街道に出て、ゴールに近づいている実感がしてきた。
途中にあった丘越えの勾配が意外にキツイ。膝が不安だったので自転車を押していると、鐘を鳴らして応援していたおじさんが、「押してやるから乗れ」と言ってくれた。でもゴールまであと少し。どうせなら最後まで自分の力で走りたい。「自分の足の力だけでゴールしたい」って言うと、おじさんは大きく頷いてくれた。
広い平原を抜け丘を何度も越えると、サンカンタン市街へ向かう最後の登りが現れた。市街地へ入ってからは、重いギアにしてペダルを思い切り回した。もう膝の心配はしなくていいんだ。やがてサンカンタンの中心街を通り抜けてゴールに辿り着いた。
到着時間は8月24日(金) 17時20分。所要時間は90時間25分。制限時間を過ぎてしまったので、完走の認定はもらえないかもしれないけど、自転車に乗って最後まで走れただけで十分満足だ。飯塚氏と須藤氏も無事にゴールしており、硬い握手とともに数日ぶりの再会を喜んだ。
日本人参加者111人のうち、ゴールしたものは66人。恥ずかしながら私は65人目のゴールだった。さあ、まずはホテルに戻りシャワーを浴びてディナーだ。ビールとワインも待っている。それから5日ぶりにふかふかのベッドに思い切り眠ることにしよう。
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