世界選手権で使用する機材から見えた世界の格差、今でも十分世界で通用する旧世代機材たち!最先端機材だけが勝負のツールではないと確認させられた今大会

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世界選手権というのは面白い場所だ。最新最先端の機材のオンパレードかと思いきや、旧型や旧式もふんだんに「現役機」として見る事ができるのをご存じだろうか?

©UCI

世界中から自転車競技の猛者が集うが、その国により予算の差は大きく、持ち込まれる機材も所属チームで使用しているものから、個人で用意したものまで様々だ。世界選手権に出場してくる多くの選手たちは、所属チーム用に供給された機材を使用することが多い。しかし当然ながら、セミプロやアマチュアでありながら代表の座を射止めるケースもある。そうなれば当然機材には大きな格差が生まれるのだが・・・・結果は必ずしもそうではないというのが競技の面白いところだろう。

今年の大会でも型落ちの機材を使用する選手も多かっただけでなく、コンポーネントもセカンドグレードの使用者も多く、さらにはハイエンドでもひとつ前のシリーズを使用している選手も多いなど、最先端スペックは必ずしも必須ではなかった。

もちろん選手である限り、トップチームに所属し最新の最先端機材を使用できるというのは夢であろう。しかし現実はなかなかむつかしいものだ。ワールドツアークラスに所属できる選手はほんの一握りであり、各国の代表決定戦では、時には下克上で勝ち上がってくる選手も多い。そうなれば当然機材は最先端機材でない可能性も高く、フレームはお下がり、コンポーネントはセカンドやサードグレードの事さえあるのだ。

©UCI

今大会、もっとも古い機材で言えばロシア代表の徐伸選手の中には13年落ちのフレームにリア10速で出場している選手もいた。またそれ以外でも5~6年落ちのフレームはかなり見かけた光景だ。またコンポーネントではトップカテゴリー所属の選手でもアルテグラをスペアに用意している選手をよく見かけた。特に女子レースではアルテグラはかなりの使用率だった。また男女ともに、一つ前のモデルである9000系のデュラエースや、6800系のアルテグラもいまだ健在、中規模程度の代表チームではよく使われていた。

またホイール回りも、カーボンホイールだけではなく、アルミホイールもスペアに用意している選手もよく見かけた。当然アルミホイールを用意している選手は型落ちのフレームを使用している選手に多かったが、それでも各国の代表クラスであり、世界の舞台で戦いにきた強者だ。

そのような機材を使用する選手たちに聞いてみたところ「最新機材高いじゃん、そんなの買えないし、まだ使えるんだからこの機材でも十分だから」という声がそのほとんどだった。「そもそも使える機材なのに買い替えるのって贅沢だし、そんな余裕あったら消耗品のタイヤとかを買うよ。」という声も多かった。

日本では常に最新最先端の機材が競技現場では当たり前の光景になっている。なかなかここまで恵まれた環境は世界中探してもあるものではない。そんな恵まれた環境がそこにあることに感謝するとともに、決して奢ることなく、世界で結果を残せる選手がどんどんと育ってほしいと思う。

加えて日本では草レースやショップでもでも最先端機材でないだけで「そんな型落ち未だに乗ってるの?」などと揶揄する人がいる特殊な場所だが、世界を見渡せば競技の世界でもまだまだ型落ちでも現役なのだ。皆自分の好きな形で旧型機材でも自転車を楽しもうではないか。

H.Moulinette