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2017/6/25 12:38

コラム:紳士協定はもう存在しないのか?

コラム:紳士協定はもう存在しないのか?変わりゆくレースシーン、よりシビアに勝負に徹する展開が増えることに自転車OBたちは懸念、現役は「真剣勝負の場に情けが必要なのか?」の声も


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自転車競技には多くの暗黙の了解で成立している紳士協定が存在していた。それは自転車競技が紳士のスポーツであると同時に、フェアな競技であるということを意味することだった。しかし最近ではそれが崩れつつある。「真剣勝負の場に情けが必要なのか?僕らは結果が評価されるスポーツでのプロであり、生活もかかっているんだ。」ある選手のその言葉が今のレースシーンを象徴していた。

そもそも自転車レースでは総合リーダーや有力選手などが不可抗力で遅れた場合、集団はそれを待つ、というわかりやすい紳士協定がある。一昔前までは、それはレース後半にはいっても有効であり勝負どころになる前であれば選手は待つのが当たり前となっていた。しかし今年のジロ・デ・イタリアでの象徴的なシーンとなったあのシーン、第9ステージチームスカイの主力ほぼ全てが落車に巻き込まれたあのシーンでそれは起きた。集団を主導していたモビスターはペースを緩めるどころかペースアップ、そのままチームスカイを優勝戦線から突き落としたのだ。これには批判も集まったが、今の世間一般の受け止め方としては「運も実力のうち」との見方も多かった。またその最大の犠牲者となったゲラント・トーマス(チームスカイ)も取り戻せないタイムに対して「これもレースのうち」と答えており、紳士協定が既に過去のものとなりつつあることを感じさせた。


『選手たちがデュムランを待ちバトルをしなかった ©CTJP』
では紳士協定はまったくなくなってしまったのだろうか?同じくジロ・デ・イタリア第16ステージで、総合リーダーのトム・デュムラン(チームサンウェブ)が最後の勝負どころの山岳で腹痛で雉撃ちを余儀なくされた際には、多少の紳士協定が垣間見えた。ヴィンチェンツォ・ニーバリ(バーレーン・メリダ)が容赦なく仕掛けたがる一方で、ナイロ・キンターナ(モビスター)は最後まで待つ素振りを見せ、またイルヌール・ザッカリン(カチューシャ・アルペシン)がアタックを決めようとした瞬間には、チームが無線でそれを止めるあシーンも有った。昔のような露骨な紳士協定ではないが、やはりそこにはフェアプレイの精神は感じられた。

実際に現場のチームや監督はどう考えているのだろう?今回のジロの一件を踏まえて様々な選手やチーム関係者に話を聞いたところ、反応はまちまちだった。ただチーム関係者の多くが「選手たちだって自らのポジションをを守るために一生懸命だし、生活がかかっているのだから、真剣勝負に徹するのは仕方がない、批判すべきではない。」と語っており、「紳士協定を守るべきだった、批判に値する。」という声のほうが少数派だった。

また選手は前出のように「真剣勝負の場に情けが必要なのか?」との声への賛同も多く、やはり全体としてレースシーンが変わってきていることを実感させた。

しかしOBたちからは懸念する声が多く聞かれた。「ロードレースは紳士のスポーツ、フェアに戦わなければならない。不可抗力でライバルが脱落、それに乗じて仕掛けるような姿勢はあってはならない。」と言い切る声がいくつも聞かれた。


『昔は”自力”が全てだった』
果たして紳士協定がなくなることはスポーツマンシップの欠落なのだろうか?そもそもルールにない暗黙の了解は必要なのだろうか?それこそ自転車が誕生して間もないころのツール・ド・フランスなどでは、パーツが壊れれば選手たちは自ら鍛冶屋に飛び込み、徹夜で直して再スタートをするなど、自力で解決していくこと、トラブルもレースのうち、だったのだ。それが時代とともに環境に恵まれ、いつからかフェアプレイの精神などという言葉が出るようになってきたのだ。もし本当にフェアプレイの精神だと語るのであれば、日本の競輪のように機材の規格も全て統一すべきなのでは無いだろうか?

今は機材が昔とは大きく変わり、機材交換などが簡単に短時間で行えるようになった。そして同じく機材の変化とともにレースでの平均速度も上がり、またトラブルの原因や理由も変わってきた。またそれらレースを観戦する我々の感覚も当然時代とともに変わってきている。選手たちは一度コースに上がれば真剣勝負で挑むプロ、妥協なく勝負に徹するプロなのだ。果たして何をもってして「フェア」、「スポーツマンシップ」と言うのだろう。時代が変わった今、それら言葉の意味も時代とともに変化しているのではないだろうか。

その時代に合った「フェア」や「スポーツマンシップ」、その時代にあった価値観と言うものが必ずそこには存在する。ロードレース界も時代にあった進化を遂げる生き物、現場で戦う選手たちがその答えを一番知っている。

H.Moulinette
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