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2014/10/31 2:57

TUEの危険性

ドーピングに屈しなかった男、バッソンスがTUEの危険性を口にする、「悪用できてしまうルールへの対応が今も昔も変わっていない」、治療用例外的使用の危険性とは


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ドーピングに立ち向かい、人知れず表舞台から消えていった男を覚えているだろうか?クリストフ・バッソンス(ドーピングという闇の力に屈しなかった男、クリストフ・バッソンス〜なぜ正しきが責められ引退にまで追い込まれたのか?) は現役時代頑なにドーピングを拒否、そして反ドーピングを堂々と社会に訴えたのだ。しかし当時自転車界にボスとして君臨していたアームストロングに脅され、そしてレース中に身の危険を感じることが繰り返し、こんな腐った世界に未練はないひっそりと引退していった男だ。

その男が昨今問題となっているTUE、つまり薬物の治療用例外的使用に関して「悪用できてしまうルールであり、対応策と解決策が用意されていない。」とバッサリ切り捨てた。今現在レース中の一部薬品の使用が、生命に危険を及ばす病状を緩和するための処置として許可されている。もちろん事前に申請を出し、認可を受けた上でなければ使用することはできないのだが、これが実に厄介なクセモノなのだ。


『薬の使い方の問題は根深い』
事実生活環境が変わり、昔に比べて汚染がひどくなった現在では、喘息や呼吸器系の病気は確実に増えている。世界的には12〜15%程が喘息の症状を持っているとされている。当然選手たちの中でもそのような症状を持つ選手は昔に比べ増えることとなるわけだが、ここからが問題で、そもそもドーピングに使われる薬品の中に、喘息の治療薬など、呼吸器系の病状を緩和する効果を持つものが多いのだ。今回は喘息系の薬品を例にとって説明するが、まずこれらの薬品は気道を広げ体内への酸素摂取を増やし、呼吸をしやすくする効果があるのだ。これを常人が摂取すれば当然より多く酸素を取り込むことができ、出力が上がり、回復が早くなるのだ。これが一般的に言う”ドーピング”だ。

では症状を持つものが治療として使うのはいいのでは?と思う人も多いだろう。しかし問題なのは症状がどのレベルであるかによっては、本来のポテンシャル以上のものを引き出すことが出来る”魔法の薬”となってしまうのだ。実際喘息持ちであるという申請をしている選手はかなり多く、世界的な平均の12〜15%をはるかに上回っている。そして過去のドーピングでもそうであったように、ドーピングは医師の関与無くしては成立しない事がほとんどであり、思惑があって診断書を発行する医師が確実にいるということだ。

実際に症状がある選手に関してはどのタイミングで使うかは、選手のモラルに任される部分が大きいが、やはり申請数などを見ても、TUEが抜け穴になっていることを否定することはできない。喘息薬に関しては、実際にどの程度のパフォーマンスの向上につながるかなどの厳密な比較データがない(難しい)為、どれほどのパフォーマンス向上効果が実際にあるのかは不明だが、他の治療薬の中にはいわゆるステロイド系などの薬も多く、間違いなくTUEは悪用することが可能なのだ。今年のロマンディーでのクリス・フルームのプレドニゾン(抗炎症薬)の使用が、度を超えていたのではないかと話題になったことがあったのを覚えている方も多いだろう。フルームが悪いわけではなく、どこまでならOK という線引をするチーム側のスタンスも今後問題になっていく可能性があるのだ。


『自転車界への思いは未だに強い』
そしてバッソンスは厳しい声を現状に投げかけている。「フルームに病状があったのは確かだろうし、それを薬で抑えて勝ったのも事実、それには強い精神が伴わなければならなかったはずだ。しかし詳しいことがわからない一般の人にとっては、問題を薬で抑えて勝つという意味では、疲れやヘマトクリット値が低い(貧血)という理由でドーピング(EPO)をするのとさほど変わりないんだよね。もし自転車界がもっとオープンな場であるならば、選手たちが自らこういう症状があるからこういう薬を使ってレースに出ている、と正当性を語れる環境になるはずなんだよ。それが未だにないというのは、本質的に自転車界がまだ変わっていないということなんじゃないかな。」そう語るバッソンスの言葉には、未だに変わらぬ部分がある自転車界への苛立ちが感じられた。

H.Moulinette
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