2009/7/14 5:41


にぎやかな音楽に、巨大なハリボテを乗せた山車。レースの前にコースをパレードしてノベルティグッズやらサンブルを振り撒いてくれるキャラバン隊は、いまやツールの顔でもある。実際、キャラバン隊を組織する広告会社イデアクティブの調べでも、「ツールの会場に足を運びたい理由は?」との質問に、45%の人が「キャラバン隊が楽しみだから!」と答えているという。1位の回答はもちろん「レースを見るため」だが、キャラバンは、堂々の2位に選ばれているのだ。
というわけで、準備にも相当力が入っている。イデアクティブの話では、毎年ツールのキャラバンの企画を練り始めるのは9月。つまり、今年の大会が7月に終わり、8月のバカンスをはさんで、9月にはもう次の年の計画にとりかかる、というわけだ。
その努力の甲斐あって、毎年キャラバンは大盛況だが、笑顔で手を振りながらサンプルやグッズを配ってくれるお兄さんやお姉さんは、実はかなりの重労働。ミネラルウォーター、ヴィッテルのキャラバンにお邪魔して、彼らの一日を覗いてみることにした。
朝は、キャラバン隊出発時刻の3時間前にスタート地点に集合。だいたい、10:30頃に出ることが多いから、7:30には到着していることになる。起床は5時ごろ。ホテルが遠いときには、3時起床、なんてこともある。
着いたらまず、車両の清掃とチェック。「元気なファンが多いので(苦笑)」(スタッフ談)いろいろな液体が飛んできたり、車両を叩かれたりと、キャラバンカーは生傷が絶えない。
それが終わったら、グッズの積み込み。ヴィッテルの場合、ノベルティグッズは、車のフロアウィンドウを覆えるくらいの大きなフラッグと、水!毎日、500mlのボトルを6000本積み込んでいるというから、この作業には相当な時間と体力がかかる。全部積み終えたら、コーヒーでほっと一息入れて、いよいよ出発だ。
ヴィッテルキャラバンは今年で2年目。去年はベスト・キャラバン賞に選ばれた。彼らの『チーム・ヴィッテル』は、総勢20台と、キャラバン隊の中でも一番の大所帯。そして、このチーム・ヴィッテル、実はツールに参戦中の“プロ”サイクリングチームなのだ。総監督は、元プロ選手で、1984年のツール・ド・フランスで14日間マイヨジョーヌに袖を通したヴァンサン・バルトー。ライダーは5人。その中には、紅一点、マリア・デル・ヴェロ嬢もいる。彼女は現在、マイヨジョーヌをキープ中。「ツール史上初の女性マイヨジョーヌ保持者!」なのだ。
チーム・ヴィッテルご一行は、先導のポリスカーに始まり、ライダー、監督が乗ったチームカー、メカニックカーと本格仕様。その合間に消防自動車が2台。ここから、沿道の観客に向けて、ホースから水をひと吹き!細かい霧のシャワーが、頭も体も火照ったファンたちをクールダウンしてくれる。(ちなみに、ここから噴射される水はヴィッテル水ではないとのこと。あたりまえか)もちろん、水ボトルを配る大きな車もある。
沿道からみていると、ズラっと並んでただただ進んでいるように見えるキャラバンカーだが、この大所帯をまとめて走らせるのは大変な苦労。水ボトルは重たいから投げられない。集まってくる人たちに手渡ししているうちに後ろの車がつっかえてきたり、マリア嬢のバイクに沿道の男が飛び乗って抱きついてきたり。
各車のドライバーたちは、トランシーバーを駆使してひっきりなしに交信しあっている。「うしろからバイク接近中。全員右レーンに寄って!」「下りに入った。沿道に誰もいないからスピードアップ。みんな加速してついてこい!」「水のトラックが遅れた。先頭はスピードをゆるめて待機!」並んで走っている隊列の合間に、メディアの車や関係車両が無理やり割り込んできて、なかなか思うようにまとまらない。「96で給水。左だ!」「了解。96で入ります」彼らは数字で連絡をとりあうが、これはメーター数。出発地点で全員が0で合わせて、以後はすべて、キロ数を合図に行動してゆく。
ドライバーは、いっときも気を抜けない。とりそこねて転がったボトルを追いかけて、子供がふいに路上に飛び出してきたり、集団で車の前に襲いかかってきたり。突然遅くなったり速くなったり、進行スピードを変えながら進んでいく。ただのドライブとは大違いだ。
途中で消防車は水補給。そして3人のライダーのうち、マリア嬢以外の2人が交代する。カーブのきつい山道を、固定された自転車にまたがって200km走るのは、相当キツい。カッコイイ消防士のお姉さんも、ずっと車の屋上に立ちっぱなしで、元気にホースを振りまわしている。誰もいない下り坂で束の間の休憩をしていても、一人でも沿道に人がいれば、スクっと立ちあがってホース片手に勇ましいポーズをとってくれる。彼らのプロ根性はすごい。
沿道の観衆の中で、一番目立つのは、圧倒的にオバチャンだ。オバチャン率がダントツに高く、その次が子供で老夫婦と続く。老人ホームの前では、おじいちゃん、おばあちゃんがイスをずらりと並べて手を振ってくれたり、「アレ〜〜!ヴィッテル〜!!」「ヴィッテル飲んで、今日も健康よ〜〜〜!」と、自らキャッチセールスしてくれるありがたい観客もいる。一度盛り上がってしまった人のエネルギーはすごい。
中には「何かくれ!」「帽子はないのか?」と、傲慢にグッズをねだる者も。とくに山頂付近では、完全にできあがって、水やビールを車の窓めがけて投げつけてきたり、見たくもない裸体をさらしてきたり、妨害は絶えない。ところが、「熱狂ぶりが伝わってきて楽しいから、このくらい賑やかなほうがいい。」と、スタッフたちは上機嫌。つわものである。
ラスト1kmに到着すると、3人のライダーは、実際に自転車に乗って、ゴールまで真剣レース!監督にうしろから「アレ〜アレ〜!」と煽られながら、今日もマリアが1位でゴール!マイヨジョーヌをキープした。そう、ツール・ド・フランスで、毎ステージ、一番最初にゴールをくぐるライダーは、その日のステージ優勝者ではなく、実はチーム・ヴィッテルのライダーだったのだ。裏ツールでは、マリアが総合首位を独走中だ。「はっきり言って、かなりキツいよ。毎日ゴールに着いたときにはクタクタだね。でも、楽しいからやってる。楽しくなくっちゃこんなことできないよ!」ライダーの一人、女好きで沿道にカワイコちゃんをみつけては隊列を乱すマークは全身汗びっしょり。その横で見せてくれたベルナールの手はマメがつぶれてボロボロだ。
ゴールに到着したら、すぐに撤収作業。次のスタート地点に向けて出発する。ホテルに到着するのは21時くらい。夕飯をとったら、すぐに寝る。明日の朝も早い。「ほかのキャラバンの人たちとも、ホテルで会ったり、たまにパーティがあったりするけど、ふだんは全然、交流する時間なんてないよ。毎日ホテルに戻ったらぐったりで、出かける気力なんて残ってないんだ。」夏のアルバイトでドライバーをかってでた、遊び盛りの大学生、ピエトリックは言う。「でも、みんなこの仕事はやりたがると思うよ。すごくラッキーだと思う。」
ライダーたち(本物の)とまったく同じコースを、彼らのすぐ前で走る。ある意味、レースに一番近いところにいるキャラバン隊の彼ら。ところが、実はまったく、レースに触れることができない。ライダーがスタート地点に来るころには出発。レース中は無線ラジオでレースの様子を聞く間もない。終わったらすぐに撤収して移動なのだ。同じ会場にいながら、彼らが住む世界は、完全に別のところにある。
それでもたくさんの人々が楽しみにしている、キャラバン隊。「大変なのは、本番開始前の1、2か月で、大会が始まってしまえば、そこからは一番楽しい瞬間です」時間に追われたストレス満点の毎日でさえ、この余裕。やっている人が楽しんでいるから、見ているほうも楽しいのだろう。来年は、またどんな新しい仕掛けのキャラバンが飛び出してくるのか、楽しみだ。
ユーモア満点、ライダー(両方!)ニュースもあるチーム・ヴィッテル情報はこちら
text&photo:Yuki Ogawa


ツール・ド・フランス2009 現地レポート by Yuki
ツール史上初の女性マイヨ・ジョーヌ誕生!チームヴィッテルの愉快なキャラバン隊
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| 『キャラバン』 |
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| 『キャラバン』 |
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| 『キャラバン』 |
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| 『けっこう大がかり』 |
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| 『キャラバン』 |
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| 『チームヴィッテル』 |
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| 『お調子もののマーク』 |
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| 『チームヴィッテル 消防士役のお姉さん。超カッコイイ』 |
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| 『カルフールのノベルティキャップ』 |
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| 『おなじみPMUの緑の手と洗剤のサンプル』 |
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| 『ノベルティゲットにかけるこの情熱』 |
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| 『冷水シャワーでリフレッシュ』 |
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| 『マリア・デル・ヴェロ』 |
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| 『出走準備!』 |
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| 『サンプル配布中』 |
というわけで、準備にも相当力が入っている。イデアクティブの話では、毎年ツールのキャラバンの企画を練り始めるのは9月。つまり、今年の大会が7月に終わり、8月のバカンスをはさんで、9月にはもう次の年の計画にとりかかる、というわけだ。
その努力の甲斐あって、毎年キャラバンは大盛況だが、笑顔で手を振りながらサンプルやグッズを配ってくれるお兄さんやお姉さんは、実はかなりの重労働。ミネラルウォーター、ヴィッテルのキャラバンにお邪魔して、彼らの一日を覗いてみることにした。
朝は、キャラバン隊出発時刻の3時間前にスタート地点に集合。だいたい、10:30頃に出ることが多いから、7:30には到着していることになる。起床は5時ごろ。ホテルが遠いときには、3時起床、なんてこともある。
着いたらまず、車両の清掃とチェック。「元気なファンが多いので(苦笑)」(スタッフ談)いろいろな液体が飛んできたり、車両を叩かれたりと、キャラバンカーは生傷が絶えない。
それが終わったら、グッズの積み込み。ヴィッテルの場合、ノベルティグッズは、車のフロアウィンドウを覆えるくらいの大きなフラッグと、水!毎日、500mlのボトルを6000本積み込んでいるというから、この作業には相当な時間と体力がかかる。全部積み終えたら、コーヒーでほっと一息入れて、いよいよ出発だ。
ヴィッテルキャラバンは今年で2年目。去年はベスト・キャラバン賞に選ばれた。彼らの『チーム・ヴィッテル』は、総勢20台と、キャラバン隊の中でも一番の大所帯。そして、このチーム・ヴィッテル、実はツールに参戦中の“プロ”サイクリングチームなのだ。総監督は、元プロ選手で、1984年のツール・ド・フランスで14日間マイヨジョーヌに袖を通したヴァンサン・バルトー。ライダーは5人。その中には、紅一点、マリア・デル・ヴェロ嬢もいる。彼女は現在、マイヨジョーヌをキープ中。「ツール史上初の女性マイヨジョーヌ保持者!」なのだ。
チーム・ヴィッテルご一行は、先導のポリスカーに始まり、ライダー、監督が乗ったチームカー、メカニックカーと本格仕様。その合間に消防自動車が2台。ここから、沿道の観客に向けて、ホースから水をひと吹き!細かい霧のシャワーが、頭も体も火照ったファンたちをクールダウンしてくれる。(ちなみに、ここから噴射される水はヴィッテル水ではないとのこと。あたりまえか)もちろん、水ボトルを配る大きな車もある。
沿道からみていると、ズラっと並んでただただ進んでいるように見えるキャラバンカーだが、この大所帯をまとめて走らせるのは大変な苦労。水ボトルは重たいから投げられない。集まってくる人たちに手渡ししているうちに後ろの車がつっかえてきたり、マリア嬢のバイクに沿道の男が飛び乗って抱きついてきたり。
各車のドライバーたちは、トランシーバーを駆使してひっきりなしに交信しあっている。「うしろからバイク接近中。全員右レーンに寄って!」「下りに入った。沿道に誰もいないからスピードアップ。みんな加速してついてこい!」「水のトラックが遅れた。先頭はスピードをゆるめて待機!」並んで走っている隊列の合間に、メディアの車や関係車両が無理やり割り込んできて、なかなか思うようにまとまらない。「96で給水。左だ!」「了解。96で入ります」彼らは数字で連絡をとりあうが、これはメーター数。出発地点で全員が0で合わせて、以後はすべて、キロ数を合図に行動してゆく。
ドライバーは、いっときも気を抜けない。とりそこねて転がったボトルを追いかけて、子供がふいに路上に飛び出してきたり、集団で車の前に襲いかかってきたり。突然遅くなったり速くなったり、進行スピードを変えながら進んでいく。ただのドライブとは大違いだ。
途中で消防車は水補給。そして3人のライダーのうち、マリア嬢以外の2人が交代する。カーブのきつい山道を、固定された自転車にまたがって200km走るのは、相当キツい。カッコイイ消防士のお姉さんも、ずっと車の屋上に立ちっぱなしで、元気にホースを振りまわしている。誰もいない下り坂で束の間の休憩をしていても、一人でも沿道に人がいれば、スクっと立ちあがってホース片手に勇ましいポーズをとってくれる。彼らのプロ根性はすごい。
沿道の観衆の中で、一番目立つのは、圧倒的にオバチャンだ。オバチャン率がダントツに高く、その次が子供で老夫婦と続く。老人ホームの前では、おじいちゃん、おばあちゃんがイスをずらりと並べて手を振ってくれたり、「アレ〜〜!ヴィッテル〜!!」「ヴィッテル飲んで、今日も健康よ〜〜〜!」と、自らキャッチセールスしてくれるありがたい観客もいる。一度盛り上がってしまった人のエネルギーはすごい。
中には「何かくれ!」「帽子はないのか?」と、傲慢にグッズをねだる者も。とくに山頂付近では、完全にできあがって、水やビールを車の窓めがけて投げつけてきたり、見たくもない裸体をさらしてきたり、妨害は絶えない。ところが、「熱狂ぶりが伝わってきて楽しいから、このくらい賑やかなほうがいい。」と、スタッフたちは上機嫌。つわものである。
ラスト1kmに到着すると、3人のライダーは、実際に自転車に乗って、ゴールまで真剣レース!監督にうしろから「アレ〜アレ〜!」と煽られながら、今日もマリアが1位でゴール!マイヨジョーヌをキープした。そう、ツール・ド・フランスで、毎ステージ、一番最初にゴールをくぐるライダーは、その日のステージ優勝者ではなく、実はチーム・ヴィッテルのライダーだったのだ。裏ツールでは、マリアが総合首位を独走中だ。「はっきり言って、かなりキツいよ。毎日ゴールに着いたときにはクタクタだね。でも、楽しいからやってる。楽しくなくっちゃこんなことできないよ!」ライダーの一人、女好きで沿道にカワイコちゃんをみつけては隊列を乱すマークは全身汗びっしょり。その横で見せてくれたベルナールの手はマメがつぶれてボロボロだ。
ゴールに到着したら、すぐに撤収作業。次のスタート地点に向けて出発する。ホテルに到着するのは21時くらい。夕飯をとったら、すぐに寝る。明日の朝も早い。「ほかのキャラバンの人たちとも、ホテルで会ったり、たまにパーティがあったりするけど、ふだんは全然、交流する時間なんてないよ。毎日ホテルに戻ったらぐったりで、出かける気力なんて残ってないんだ。」夏のアルバイトでドライバーをかってでた、遊び盛りの大学生、ピエトリックは言う。「でも、みんなこの仕事はやりたがると思うよ。すごくラッキーだと思う。」
ライダーたち(本物の)とまったく同じコースを、彼らのすぐ前で走る。ある意味、レースに一番近いところにいるキャラバン隊の彼ら。ところが、実はまったく、レースに触れることができない。ライダーがスタート地点に来るころには出発。レース中は無線ラジオでレースの様子を聞く間もない。終わったらすぐに撤収して移動なのだ。同じ会場にいながら、彼らが住む世界は、完全に別のところにある。
それでもたくさんの人々が楽しみにしている、キャラバン隊。「大変なのは、本番開始前の1、2か月で、大会が始まってしまえば、そこからは一番楽しい瞬間です」時間に追われたストレス満点の毎日でさえ、この余裕。やっている人が楽しんでいるから、見ているほうも楽しいのだろう。来年は、またどんな新しい仕掛けのキャラバンが飛び出してくるのか、楽しみだ。
ユーモア満点、ライダー(両方!)ニュースもあるチーム・ヴィッテル情報はこちら
text&photo:Yuki Ogawa

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